今年の恋

 

シネマヴェーラ渋谷、浪花千栄子特集より。「今年の恋」1962年松竹。木下恵介監督。

 

ヴェーラのサイトより。

 

落ちこぼれ高校生の一郎と光。一郎の姉と光の兄は友達が悪いと反感を募らせるが…。吉田輝雄と岡田茉莉子が結ばれるまでのドタバタを軽妙洒脱なタッチで描く。担任の三木のり平、婆やの東山千栄子など名優たちのコメディ演技も見ものなら、岡田の呑気な両親を演じる三遊亭円遊と浪花千栄子夫婦のコンビも素晴らしい。木下惠介の名人芸に酔いしれる傑作ラブコメ!

 

ヴェーラのロビーに貼ってあったポスターは、ヒロイン岡田茉莉子の相手役・吉田輝雄。この映画がデビュー作だったようで「深い魅力を秘めた瞳近代美溢れるスタイル」。!が斜めになってるところに時代を感じます。スタイルを褒めるのに近代美という言葉を用いる60年代初頭。

 

反目しあう2人がやがて結ばれるロマコメの定石。吉田輝雄の弟役は若き田村正和が演じており、あんなに若い頃から田村正和として完成していたのだね。たわいのないロマコメながらテンポが良く、木下恵介ってこんな映画も撮るのかぁ!と、ロマコメ好きの私の中で木下株が上昇。木下忠司の音楽が映画のリズムを先導したり整えたり煽ったりしながら全篇を貫き、鑑賞中の高揚をおおいに手伝ってくれるので、木下株またも上昇!

 

肝心の浪花千栄子は、岡田茉莉子の母親役。東京の小料理屋一家なので、浪花千栄子もいつもの関西弁を封印していたのが少し残念だったけれど、三遊亭円遊と夫婦役で、夫婦の掛け合いが落語のリズム。三遊亭円遊!学がないことをネタにしながらも小料理屋の大将で料理も上手だし、いちいち可愛げがあって、近年観た映画の中で、あんなお父さんいいなランキング上位に食い込む魅力。

 

後半部分はロードムービーの要素があり、喧嘩しながらドライブする先は熱海。口角上げながら後部座席から助手席に移る岡田茉莉子のいそいそ感!途中で富士山が見えて。ラストは大晦日の京都。お正月に向けて日本髪を結い着飾った岡田茉莉子が、新年の準備、万端です!というルックスで可愛い。京都、先に到着した弟たちからの絵葉書が京都の景色を説明していたので、熱海まではロケに行っても、京都は絵葉書だけで終わらせるつもりだな、この節約上手!と思っていたらラストはちゃんとロケだった。

 

お正月映画として公開されたそうで、晴れ着姿の岡田茉莉子をニコニコ眺めて年を始められるなんて、1962年のお正月、とても贅沢だったのですね。

 

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