The Lobster
オスカー・ノミネーション、お!と思ったのは、主演男優賞のアンドリュー・ガーフィールドは「沈黙」ではなく別の映画でノミネートされたことと、脚本賞に「ロブスター」がノミネートされたこと。
「ロブスター」、オリジナル脚本だったのか…あの奇想天外な物語は。秋に観たものの、何も書いていなかったのでメモ。ヨルゴス・ランティモス監督によるディストピアSF恋愛映画。東京での公開、あっという間に終わった気がするけれど、大好物だった。
http://www.finefilms.co.jp/lobster/
公式サイトにあるとおり、独身者は施設に集められ45日以内にパートナーを見つけられなければ、自ら選んだ動物に姿を変えられ森に放たれる。コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥ、ベン・ウィショーと主役級の俳優たちが揃って生真面目に奇妙な登場人物に扮しているのも見どころ。
動物かぁ…私はペンギンだな。水面や鏡に自分の姿がうつるたび、今日も可愛い♡って、うっとりできるもの。と悠長に妄想していたら冒頭から「ペンギンはダメ。協調性がないから」とピシャッと言われギャッ!舐めた態度で失礼いたしました…。
ツッコミどころ満載の展開で、笑ってしまう場面も多かったけれど、冷静に考えると奇抜な衣装を纏いながらも、掴めそうで掴めない愛たるものの深淵が問いとして次々に提示されることに唸った。
好きな女性と同じ行動(鼻血を流す)を無理矢理とってみて相手の気を惹こうとする。同じ価値観だね、と主張して恋が生まれる(本人は大真面目だけど周囲にはバレバレ)、犬(=兄)が惨殺される場面はカップルになったはいいけれど、所詮つきあいも短い選んだ他人と、肉親どちらが大事なのかの問いが突きつけられているように思えたし、最後は愛のためなら自分をどこまで差し出せるか。あなたの痛みは私の痛み…と、谷崎のような展開に。あまり観たことのない映画だったから、保守的と言われるアカデミー会員がこれを選ぶとは意外だった。
冒頭、コリン・ファレルは車に乗せられて施設に送られて行く。朧げな記憶を辿ると、コリン・ファレルは妻と合意のもと、お互い納得の上、別れに至ったと自分に言い聞かせ、周囲にもそう主張しているだけで、実際は捨て犬のように捨てられたんじゃないかと思った。要らなくなったから、あの施設に移送されたのでは。ドナドナ…。