皆殺しの天使

 

イメージフォーラム、ブニュエル特集の上映は再び延長され2/2まで。生活リズムを整えるべく、夜遅く出かけるのをなるべく禁じておるけれど、他に日にちがもうないので先ほどさっと行ってさっと帰ってきた。

 

http://www.ivc-tokyo.co.jp/bunuelangel/

 

「皆殺しの天使」はブニュエル・メキシコ時代、1962年の映画。公式のあらすじより。

 

オペラ観劇後に晩餐会が催された邸宅。20人のブルジョアが宴を楽しんでいる。夜が更け、やがて明け方になっても、誰も帰ろうとしない。次の夜が来ても、誰もが帰らない。皆、帰る方法を忘れたか、その気力も失われたかのように客間を出ることができないのだ。召使も去り、食料も水も底をつく。何日間にもわたる幽閉状態が続き、人々の道徳や倫理が崩壊していく。突如現われる羊や、歩き回る熊の姿。事態は異常な展開を見せていく…。

 

わー、これは頑張って観に出かけて良かった。私の映画引き出しにある珍品コレクション・ボックスに珍妙な宝石がひとつ追加された。そもそも彼らがなぜ帰れないのか、説明されたっけ?ってポカーンと眺めていたら、まさかのオチにさらにポカーン。吉本新喜劇なら舞台上の全員が一斉にコケるであろう。ブルジョワたちの取り乱し方のひとつひとつが何らかのメタファーのように見えてつい深読みしてしまうけれど、深刻さも湿り気もなく、カラッとしたブラック・コメディだった。「皆殺しの天使」、物騒なタイトルに思わず腰が引けるけれども、完全にコメディである。これがフランスが舞台で、ジャンヌ・モローやらドヌーヴやらが登場していればもっと違う味わいになるのだろうな。取り乱した女がバッグからおもむろに鶏の足を取り出し黒魔術的儀式を始めたり、屋敷の中に羊や熊がいたりと、メキシコならでは?の謎めいたワイルドさもあり、手が勝手に動く映像など、おお、シュルレアリスム!とブニュエルらしさも味わえ、もうなんだか、観るポイントが多いお得な映画だわぁ。

 

ルビッチ映画の紳士淑女に同じく、この映画のブルジョワジーたちも、使用人がいなければ食事もできない種類の人々なので、冒頭で使用人たちがこぞって屋敷を去ったくだりでもうパニックは始まっていたのだろうな。パリッとした装いの人々が混乱し、着衣がヨレヨレに乱れていく過程を観察する映画が好みで、クローネンバーグ「コズモポリス」やら韓国映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」などパリッ→ヨレヨレ映画コレクションの系譜にもまた1本追加された。

 

ブニュエル、変な妄想ばかりしてる人なんだろうな。畏れ多いことですが、とてもシンパシーを感じます。