The Beguiled

 

久々の早稲田松竹で。ソフィア・コッポラ『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』を。ソフィア・コッポラって不思議な存在で、私含め周りにソフィア・コッポラの映画を好きな人は皆無だけれど、そうは言ってもみんなそれなりに観ているし、観た上で文句を言っている。私もなんだかんだ、これまでの映画は全部観ている。映画の出来は好きじゃなくても、淡くガーリーで軽く残酷なあの世界観は好き、画面を観ているだけで良い、という人もいるのでしょうが、私は特にガーリーなもの好きでもないので、自分がソフィア・コッポラを観る動機がどこにもないのに、観ている事実が不思議。

 

ソフィア・コッポラ自身の落ち着いたファッションは好きで、『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』がカンヌで上映された時、女優陣はふわふわのドレスを着ていたけれど、監督がビシッとシャネルスーツを着ていたのは、近年稀に見るシャネルスーツの似合い方だった。

 

ここまで文字数を使って『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』について何も書いていないのが、私にとってのソフィア・コッポラっぽさを表しているけれど、不思議なことにソフィア・コッポラのこれまでの映画の中で最も良かった。

 

早稲田松竹のサイトより(こちら

 

1864年のバージニア州。南北戦争から隔離された女子寄宿学園に暮らす美しき7人の女性たちは、森の中で負傷した北軍兵士のマクバニーを見つけ、手当てをしてかくまうことに。突如、男子禁制の園に野生的な男性が加わったことで戸惑う女たち。ところがハンサムなマクバニーの紳士的かつ社交的な人間性が次第に明らかになるにつれ、誰もが浮き足立ち、心をときめかせるようになる。そしてそのささやかなときめきは、次第に互いを牽制しあう危険な嫉妬と野心に変化。純真な聖女たちの抑圧されていた欲望があらわになったとき、秩序を保ってきた女の園は思わぬ事態に見舞われる…。

 

南北戦争について詳しく知っていればもっと面白いのだろうと思うけれど、保守的な南部の女たちの館に、ワイルドでハンサムで女性を尊重する北部の男が迷い込み、これまで出会ったことのない紳士的な振る舞いをする男に、一様に女たちがざわめく…という物語。

 

女たちの普段着はスタンドカラーのブラウスにたっぷりしたギャザースカート(昨今のトレンドに近い)、その下にたくさん衣類を重ねコルセットで締め上げる。時折ある少しフォーマルなディナーの席ではマカロンカラーのドレスを身に纏い、ソフィア・コッポラらしさはあるけれど、閉鎖的な館の薄暗さで華やかさは押し殺され、いつものふわっとした儚さが封じられているのが、物語に集中できて良かったのかもしれない。

 

物語の骨格がしっかりして、ニコール・キッドマンはじめ演技の確かな俳優が揃っているから、ソフィア・コッポラが監督じゃなくても映画の質は保証されたのでは、と思うと、やっぱりソフィア・コッポラを褒めてはいない。ソフィア・コッポラらしさはあるけれど…。私は少し、物語は違うけれど、パク・チャヌク『イノセント・ガーデン』を観た時の感覚を思い出すものがあった。ガーリーさと残酷さが同居する物語だったからか、あの映画にもニコール・キッドマンが出ていたからだろうか。それからbeguileという単語は、騙す、欺くの他に、喜ばせる、楽しませる、魅了するという意味もある面白い単語で、その多様な意味のどれもがこの物語の要素として入っており、簡潔かつ複雑なタイトルが良い。なぜソフィア・コッポラがこの映画を撮ったのだろう、という点は興味深いかもしれないが、インタビューを検索するほどソフィア・コッポラに興味があるわけではないのだった…。それでも新作を撮れば観る。げに不思議な存在であることよ。いつか、手放しでソフィア・コッポラ最高!と叫ぶ日が私にも来るのだろうか。

 

http://beguiled.jp/

 

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