2重螺旋の恋人
有楽町で『2重螺旋の恋人』を観た。
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フランソワ・オゾン、器用な監督で何でも撮れそうだけれど、だからこそ私にとって当たり外れが大きい。『しあわせの雨傘』なんて本当につまらなくてオゾンが撮る必要あるのかな?とすら思った。『8人の女たち』より『まぼろし』より初期の『焼け石に水』が一番好きだったかもしれない私には、『2重螺旋の恋人』は久々の当たりだった。
主演マリーヌ・ヴァクトは『17歳』のヒロインだった女優で、なんだか植物のように触れれば散りそうな脆さだった『17歳』から数年、華奢な身体はそのままに、みっしり肉も骨も詰まった動物に化けていた。フランス女優らしく惜しみなく脱ぎ、次は脱がない映画に出ないと、そろそろマリーヌ・ヴァクトが登場して脱ぐだけで、また脱いでるよ(笑)って失笑を買うかもしれない。マリーヌ・ヴァクトの見た目やラフな装いが好きで、時々画像検索して見惚れているけれど、自分の美しさに無頓着な美しい人っていいなぁ。シルクなどのとろみある素材のクタッとしたシャツやブラウスが世界で一番似合う。
双子をキーワードに出生の謎が解き明かされてゆくミステリー。染色体の関係で三毛猫はだいたい雌、雄の三毛猫は極めて珍しいという事実をこの映画で知った。中盤まで真顔で観ていたけれど、実はコメディなのでは?と思い始めてから初期オゾンを彷彿とさせるグロテスクなシーンが散りばめられていることに気づき、俄然楽しくなる。
終盤、強烈な存在感を放つ老婦人に驚き、誰かと思えばジャクリーン・ビセットだったのでさらに驚いた。トリュフォー『アメリカの夜』ヒロインのあの美しい人。老いが重くのしかかったジャクリーン・ビセットを、オゾンが美しく撮ろうとしていないせいか、ジャクリーン・ビセットの登場するシーンだけデヴィッド・リンチ映画のような趣があった。