曽根崎心中など
1月2日。初詣は東京に戻ってから近所の神社にちゃんと行くけれど、大阪に行ったついでに露天神社(お初天神)へ初めて行ってみた。近松『曽根崎心中』ゆかりの場所。
混んでおり列に並んでいる間に、wikiで『曽根崎心中』のあらすじをざっと読んだ。恋仲の男女がおり、男が別の女と結婚させられようとしたところ→男は断固拒否→破談にし受け取った結納金も返すべく継母から取り返す→しかし金に困った友が登場、男は金を貸す→友に裏切られる→立ち行かなくなった男は恋仲の女を誘い、ここ露天神社で心中。あらすじを頭に入れたところでぐるりと見渡すと…あちこちに「恋人の聖地」「縁結び」の言葉が溢れる境内に違和感しか覚えない。一途な純愛かもしれないけれど、いや、男、だいぶ不運だし、最後はふたりとも死ぬし。どこに憧れたり崇めたりする要素があるの。死んで花実が咲くものか!というお話すぎて、恋愛成就祈願とか縁結びの御守りとかご利益あるわけないやろ、と白けたついでに何でも商売に結びつけんとする大阪の商魂たくましさに面白い気分になった。
誰か映画化してるかな、と調べてみれば梶芽衣子、宇崎竜童主演にはピンとこなかったけれど、監督が増村保造と知ってちょっと観たくなった。1978年の映画。
その後、難波に移動し、久しぶりに花月のお正月興行へ。記憶の中のなんばグランド花月はもっと煤けた場所だったのに、ずいぶんつるんとピカピカして、と思ったら、2017年に全面改装したらしい。
吉本興業の歴史を伝える展示もあった。吉本せいさんの名刺。
こちらは慰問袋に詰められ戦地に届けられた漫才台本。『エンタツ國策漫才熱演集』。國策漫才、ってどんな内容ですか。大阪を中心にかつて多数あった演芸場の地図もあり、その数に圧倒される。東京に最初にできたのが神保町の寄席を買収してつくった「神田花月」だったらしく、神保町シアターに行くたびに、こんなところに吉本の劇場が?と不思議に思っていたけれど(建物の半分が吉本の劇場、半分が映画館)、そもそも縁のある場所だったんだなぁ。あの場所が「神田花月」の跡地かどうかは知らないけれど。
年の瀬が近づくとM-1のスケジュールを調べ、午後の敗者復活戦から決勝までずっとテレビの前から動かず観る自分の熱心っぷりに、関西でテレビをつけるとごく自然にいつも芸人さんが喋っており、漫才や新喜劇も頻繁に目に触れる(今でもそうなのかな?)ものだけれど、東京はそうじゃない…という現実を、私はずいぶん心寂しく思ってるのだな、と毎度M-1の季節になるとしみじみ思う。お正月興行はいつも豪華で、この日はこんなタイムスケジュール。ミキ!和牛!(いろんな意味で話題の)とろサーモン!と色めきたっていたけれど、終わってみるとフットボールアワーが一番面白かった、と意見が満場一致。
観客の年齢層がほんとうに老若男女均等に混じり合っていたので、あんなにいろんな観客を満遍なく笑わせるのは至難の業だし、誰かが笑えば誰かが傷つくようなネタや自虐で笑いをとるのも微妙となると、現代のお笑いってデリケートで難しい。今年は映画の隙間にお笑いのライブにも行きたいものです。それから新喜劇は完全に世代交代が進んでおり戸惑ったけれど、朧げながらそれぞれのキャラが掴めてくると、あいかわらずこの世でもっとも平和な笑いの世界がそこにあった。