真夏の夜のジャズ
先日、早稲田松竹のジャズ映画特集で観た『真夏の夜のジャズ』。
Cinema Radio 28の川本悠自さん回で「ジャズベーシストが選ぶジャズにまつわる映画」として紹介いただいたうちの1本。ちゃんと全編通して観たことがなかったので、映画館でかかるタイミングで観ようと思っていた。
上映前、「川本さんが言ってた若い時から禿げてたジャズ・レジェンドって誰だったっけ?」って、早稲田松竹のロビーでCinema Radio 28を再度聴き、ジム・ホールね…ジム・ホール…見つけられるかな?って思ってたら冒頭に出てきた。その通りのルックスで笑った。
27:57ぐらいから『真夏の夜のジャズ』の話をしています
アメリカ合衆国の東北部に位置するロードアイランド州ニューポート市で開催された、1954年から現在も続く、伝統ある恒例の夏フェス「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」。本作は1958年7月3日から6日まで、真夏に開催された第5回フェスと、同時期に開催されたアメリカズカップの模様を撮った〝熱い“ドキュメンタリー。
ルイ・アームストロング(サッチモ)、セロニアス・モンク、アニタ・オデイ、チャック・ベリーなど、伝説のミュージシャンたちが魅せる圧倒的迫力のパフォーマンスと、それを楽しむおしゃれな観客たちの姿をカメラに収めたのは当時新進気鋭の写真家として有名だったバート・スターン。まるで場面のひとつひとつが完成された1枚の写真のような、不思議な魅力に溢れた“熱い”作品となっている。その後の日本のジャズシーンの方向性を決定づけたとも言われ、おしゃれな港町で、真夏の夜に繰り広げられたミュージシャンと観客の夢のようなコラボが見るものの心を躍らせる!
私の鑑賞メモ。
・ジャズ・レジェンドが続々登場するステージの映像はもちろんのこと、同じかそれ以上の分量で観客が写されるのが「1958年のアメリカ」の記録として面白い。ステージ上との比率と反転するように観客はほぼ白人で、アジア系はほとんどいなかった。ゼロだったかもしれない。半世紀以上経過した現在、多様化って確実に進んでいるのだな、と実感。
・同じ街で同時期に開催されたアメリカズカップの映像が時々差し込まれるせいか、ヨットとジャズの全米決戦、これぞアメリカの誇り、アメリカがアメリカたる所以!というムード漂う構成になっている。
・観客のファッションはラルフ・ローレンやJ.Crewのカタログから抜け出した人々が動いているような、まさにプレッピー!という感じ。年齢層の高めの紳士淑女はもう少しクラシカルな装いで、帽子に誂えのワンピースと50年代のハリウッド映画みたい。
・ジャズミュージシャンたちの装いも正装を少し「夏の港町」仕様に着崩した雰囲気で、アニタ・オデイはクラシカルなワンピースにストロー素材の帽子、ハイヒールもプラスティックのヒールで、小物で軽さを加えていて素敵だった。
・パフォーマンスはどれも素晴らしく、特にルイ・アームストロングが登場した時の観客の盛り上がりが凄かった。MCと漫談みたいなトークで会場を沸かせた後、MCが「This city is yours!」だったけな、街は君のものだ!って演奏のスタートに繋げるくだりが痺れるかっこよさで、その後は生のルイ・アームストロングと彼に酔いしれる観客が交互に写り、確かに街はルイ・アームストロングのもの!って気持ちにさせられる一連の流れ。小さい時、父がルイ・アームストロングのレコードをずっとかけていた記憶があるので、童謡を聴いているみたいな懐かしい気持ちになった。
BGVとしても、ちゃんと観ても楽しめるジャズ映画、機会あれば皆様も是非!