【本日更新】Cinema on the planet 002 / Part2
本日更新しました。Los Angeles支部りえこさんによるCinema on the planet 002 エジプシャン・シアターのご紹介、Part1・歴史篇に続き、Part2は実用篇。
歴史ある映画館は、ガイドブックにも載っている観光地だけれど、現役の映画館なら、館内の様子、どんな映画がかかってるのか、そこに通うことが日常の一部になっている観客が詳しく知っているはず。
時折目にする映画館紹介の記事には、行き帰りにオススメということか、喫茶店やバーが紹介されているけれど、映画好きの日常はおそろしく時間に追われており、そんな優雅な時間を過ごしているだろう人は周囲にいません。どのルートが移動がスムーズなのか、チケットは予約か、その場で買えるのか、座席のベストポジションはどこか、小腹が空いた時に何か調達できるものはあるか(なるべく音を立てずに食べられるものが望ましい…)など、知りたい情報はそんなところ。
いつかエジプシャン・シアターで映画を観られる日が来たなら、きっと時間に追われてるはずだから、ジューススタンドで何か買うはず…と、読みながら妄想するうちに、自分もLos Angelesに暮らす観客の1人になった気分に。
エジプシャン・シアターならではの見事な装飾も、どうぞお楽しみください。
5 Best movies 2016 / Part2
5 Best movies 2016、2本目は濱口竜介監督「親密さ」、2012年の映画。
前後篇からなる255分と長尺のこの映画、夏にオールナイトで観ようと試みたものの夜に弱い私は案の定、後半すっかり眠ってしまい、いつか昼間に観る機会があればと願っていた。案外早く機会が巡り、秋に南浦和であったロングフィルムシアターという、長尺映画ばかり選んでかける奇特な映画祭で再会した。昼間だったから、今度は眠らずに全篇を観た。観終わってみると、真夜中とはいえ、こんな映画が目の前でかけられていたのに、よく眠れたものだね!と自分に呆れた。
「ともに演出家であり、恋人同士でもある令子と良平は互いに傷つけ合いながら舞台劇『親密さ』初演を迎える。」
前篇は「親密さ」を上演するまで。脚本を書いたり稽古をしたり。一方、海の向こうでは戦争が始まり、キャストのひとりも戦地に行く決意をする。開演が迫る中、遅々と進まない稽古、果たして幕は上がるのか…と不安に襲われながらインターミッション。後篇は2時間ほどの舞台「親密さ」をそのまますっぽり内蔵しており、あれほど前篇でハラハラしたのが嘘のように「親密さ」は完成し観客の前で演じられている。やがて「親密さ」は幕を下ろし、時が過ぎ、恋人同士だったふたりは駅で再会する…という、不思議な構造を持つ映画。年末に濱口監督特集で他の映画を観て知ったことに、「親密さ」よりずいぶん前の「何喰わぬ顔」は、映画の中に映画をすっぽり内蔵しており、「親密さ」の芽吹きを感じられた。こんなのいつ発明したんだろ?と思っていたら、最初から発明していたのか。
後篇、舞台「親密さ」で読み上げられた手紙に書かれた言葉が記憶から消えない。ここしばらく耳にした中で、もっとも切実な愛の言葉だったように思う。口にして伝えるのではなく、手紙という手段を経由することで、言葉は切実さを増していた。手で書き、受取人以外の人目に触れぬよう封をする儀式を経ない限り、生まれない種類の言葉たち。
「親密さ」を観るのが先だったか、あの夜が先だったか順番は忘れたけれど、しばらく前、少し遠くで深夜に仕事が終わり、真夜中のタクシーに乗った。眠れずに窓から外を見ていると、渋谷駅近くに差し掛かったあたりで、歩道を歩く一組の男女が目に入った。
ずいぶん前、頑張れば渋谷から歩いて帰れなくもない距離に住んでいた頃、時折、夜中にこの辺りを歩いて家に向かった。終電を逃したからという理由の時も、なんとなく電車に乗りたくなくてという理由の時もあった。ひとりの時も、隣に誰かがいる時もあった。窓から見える、あの男女のように。
真夜中の東京の、街灯のオレンジに照らされて歩く男女は、映画の場面のようにフィクショナルで、演出されたように美しかった。タクシーの中で私は、過ぎ去った自分の若さとたった今、擦れ違った気がしていた。時空を隔てた幽体離脱のように、自分が自分を少し離れた場所から眺めている。永遠に失くさないと信じていても、あっさり隣にいる人の連絡先も失ってしまうし、名前すら忘れてしまったりもする。タクシーは夜道を進み、やがて彼らは見えなくなった。
映画館の暗闇で「親密さ」を観る気分は、真夜中のタクシーの窓からかつての自分と擦れ違ったあの夜に酷似している。この映画について濱口監督が書いた言葉を目にした時、確かにそんな部分で見たかもしれない、と思った。
「『親密さ』は、若い人たちに見て欲しいとよく言うのですが、正確には自分の『若い部分』によって見てもらえたら、と願っています。」
5 Best movies 2016 / Part1
春節も立春も過ぎ去り、2017年もすっかりスタートして久しいですが、Best moviesを書き、きちんと2016年にサヨナラの手を振りたいものです。
2016年、後半はサイトのオープン準備に勤しんでおり、特にweb構築を自分ですると決めてからの11月以降の記憶がない。メモを見ると11月、12月に20本ほど観てるっぽいけど、あのスケジュールの中どうやって時間を捻出したのか記憶が朧げすぎて狐につままれた気分。そんな理由もあって、ここ数年で最も鑑賞本数は少なかったけれど、覚えている範囲では1本1本の濃度は濃かった。
Best moviesを選ぶ基準は人それぞれあるだろうけれど、新作・旧作の区分はせず、2016年に初めて観た映画という定義で選びました。そう決めないと年1度は観るルビッチが永遠にBestを占拠し続ける事案が発生することと、新作・旧作を分ける理由づけが希薄で、日本公開がたまたま2016年で本国ではずっと前に製作されていることもあったり、永らく観たかった映画とリバイバルでようやく出会ったり、ということも、よくあることだからです。
Best moviesは5本選びました。順位はなく、つけられるはずもありません。
まず1本目、「ディストラクション・ベイビーズ」真利子哲也監督。
公式サイトより。
愛媛県松山市西部の小さな港町・三津浜。海沿いの造船所のプレハブ小屋に、ふたりきりで暮らす芦原泰良と弟の将太。日々、喧嘩に明け暮れていた泰良は、ある日を境に三津浜から姿を消す──。それからしばらく経ち、松山の中心街。強そうな相手を見つけては喧嘩を仕掛け、逆に打ちのめされても食い下がる泰良の姿があった。
街の中で野獣のように生きる泰良に興味を持った高校生・北原裕也。彼は「あんた、すげえな!オレとおもしろいことしようや」と泰良に声をかける。こうしてふたりの危険な遊びが始まった。やがて車を強奪したふたりは、そこに乗りあわせていたキャバクラで働く少女・那奈をむりやり後部座席に押し込み、松山市外へ向かう。その頃、将太は、自分をおいて消えた兄を捜すため、松山市内へとやってきていた。泰良と裕也が起こした事件はインターネットで瞬く間に拡散し、警察も動き出している。果たして兄弟は再会できるのか、そして車を走らせた若者たちの凶行のゆくえは──
ロードショーで見逃がし、早稲田松竹で捕まえてみると、「ヒメアノ〜ル」との2本立て。間違いなく2016年最もハイカロリーな2本立て、2本の映画の中で一体何人が暴力を受けたのだろう、という暴力映画たち。
「ヒメアノ〜ル」が最後、彼が人を殺す動機が明かされるのに対し、「ディストラクション・ベイビーズ」は最後まで泰良が暴力を振るう理由は明かされない。動機なき純粋なる暴力。何の説明もなく冒頭から日常の一コマのようにナチュラルに暴力が映され、周囲を巻き込み加速する。
もちろん暴力行為を支持も称揚もしないけれど、モラルは観ている間は完全に傍に追いやり(追いやることができなければ、最後まで観るのは辛いのでは)、ひたすら描かれるただただ純粋な暴力は、サバンナを駆ける野生動物たちの無駄のない動きや、オリンピック選手の筋肉をうっとり眺める時のような、不思議な陶酔をもたらすものがあった。
泰良(柳楽優弥)、動物として大平原に産み落とされていたなら違和感もなかっただろうに、人の形で松山に産み落とされてしまって、あなたも大変ね、と思わせる不穏な説得力。その野蛮かつ優雅な佇まいに、小悪党ども(菅田将暉、小松菜奈)が惹きつけられ内なる暴力を開発されていくさまも、弟(村上虹郎)に同じ血が流れていることを示唆する終わりも、消えたはずの泰良がまた地面から生えてくるような土着の匂わせかたも、すべて祭りの光と残り香に混じってこちらに届き、向井秀徳の音楽が流れる中、エンドロールを眺めながら嚙みしめる興奮は2016年随一のものだった。
フィクション
高田の街を歩いていて、ん?と思って立ち止まると、うま口の酒 スキー?スキーという名のお酒があるのかな、と後で調べてみると解読できなかった下の記号みたいなのは「正宗」で、「スキー正宗」というお酒があるらしい。高田、スキー発祥の地なのだとか。
http://www.musashino-shuzo.com/pages/products/ski.html
しかし飲酒習慣がすっかりなくなった私は新潟で一滴もアルコールを摂取することなく、週末の遠出が原因でというわけでもなさそうだけれど、免疫力が低下し口内炎がいくつもできて体力が落ちている。帰宅しすぐベッドに入り、寝転びながらあちこちメールを送り、これを書いたら読書して眠る予定。
「原節子の真実」、夢中で読んでおり、あまりに滑らかな筆致に忘れそうになるけれど、ノンフィクション作家が書いたとはいえ、膨大な量の文献にあたったとはいえ、他人が書いている以上、これはフィクションなのだな、と思う。これまで目にした、小津との仲をほのめかし伝説化するような気持ち悪さはないけれど、「原節子の真実」に書かれていることが、真実か否かを答え合わせできるのは、原節子本人だけであって、やっぱり永遠に謎なのだ。
と、ふと我にかえるたびに言い聞かせながらも、原節子のストイックな自立心の強さを見抜いていそうな、黒澤明が好ましく見えてくる。戦前戦後で時局に合わせてガラリと作風を変えたという何人かの監督には、器用な立ち回りだなと感心しながらも、鼻白む気持ちが芽生えてくる。けれど、これはフィクションなのだ、と言い聞かせつつ。
増産
雪の重みに耐えられるように対策が施されるの、植物だけじゃなく、重々しく倒れそうもないブロンズの彫刻にも対策は施されていたし、公園のウサギも凛々し姿だった。勇ましい。欲しがりません勝つまでは!って吹き出しが似合う…。
ウサギのそばにあった謎の物体は雪に負けていた。やっぱり対策を怠ったからかな。何か動物のお尻と思われるのだけど、雪に埋もれた人参にも見える。雪下人参。普通の人参に比べて糖度が高そうな。雪下で育まれる甘み。
など、寒い時期に寒いところに行くの楽しいな。暑いところには暑い時期に行くのが好き。と悠長なことを言っていられるのは、新潟の冬が本気を見せていない一瞬の隙を突いただけだと思うのだけれど。
北陸新幹線の往復、「原節子の真実」を読み耽る。女優・原節子の歴史は戦前・戦時下・戦後の日本映画史でもあって、丁寧な取材ぶりが読み取れる、知らないことばかり書いてある。
戦時中、国民は一丸となって増産に励むようにという軍部の主張が込められた「増産映画」というジャンルがあり、軍部からの割り当てで「東宝は鉄、松竹は造船、大映は飛行機」だったのだとか…!
現在、半分まで読み進み、戦争が終わったあたり。
Wilder’s speech
北陸新幹線のおかげか、新潟は案外近く、あっという間に行って帰ってきたけれど、short trip楽しかったな。マイレージがたっぷり貯まってることもあって、今年は計画立ててあちこち行きたいものです。
耐雪仕様のコンバース、数年前に買ったものの、東京では年に1度出番があるかないか。本領発揮とばかりに新潟に履いてきたものの歩道は雪がなく、公園のたっぷり雪の積もったところに、わー!と踏み込んでみたら思いのほか深く足を取られそうになったの図。
ビリー・ワイルダーのオスカー・スピーチ。こんな動画があるとは知らなかった。1987年。
2017年の乱世に響くスピーチ。和訳はこちら。
ビリー・ワイルダーが動いてるの、初めて見たかもしれない。ワイルダー映画のモノローグとテンポや間のとりかたが同じ。そしてワイルダー映画に登場しそうなエピソード。あの脚本の言葉たちも、映画の呼吸も、スピーチも、この同じ身体から生まれたんだなぁ。
宇喜世
今日は映画は観ないけれど、高田を発つお昼過ぎまで街を散策。渋い城下町。老舗らしい門構えの料亭宇喜世で、蟹釜飯を食べたり。
後で知ったことに、宇喜世、新藤兼人の映画のロケ地で、他にも高田のあちこちが登場したらしい。主演は乙羽信子、「縮図」という1953年の映画。タイトル自体、初めて耳にした。
数年前に高田世界館でフィルムで上映されたとのこと(こちら)。いかにも物語の舞台になりそうな街で、散策を楽しんだので映画もいつか観る機会があればいいな。そして一昨年行った小津ゆかりの宿・茅ヶ崎館でも、私が泊まった部屋、新藤兼人と乙羽信子が泊まったと宿の人に教えていただいた。私の行くところ行くところ、あの2人が先回りしている…。
宇喜世、達磨が永らくのイメージキャラクターらしい。
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