鶴岡 SUIDEN TERRASSE

秋の旅行、山形県鶴岡市。行こうと思った理由は、偶然目にした建築の写真。
自然の中にぽつんと建つSF映画のような建物って好みだけれど、
*例えば、映画『エクス・マキナ』の舞台となったノルウェーのホテルのような…
http://www.juvet.com/the-juvet-hotel/the-hotel
こんな場所は非日常だからこそ映画のロケ地になるわけで、憧れているだけで機会はないんだろうな、と思っていたところ、偶然目にしたその建築は、私の求めるイメージに近いのではないか、と。鶴岡市がどこにあるのか知らず、調べてみると庄内空港からほど近く、ANAのマイルも消化を迫られていることだし、と、ひとまず予約。
遠くに山が見える。田んぼの中をひたすら歩く。チェックインして部屋に入ると、

こんな景色。右のドームはスパ&ジム。左のドームはこれからオープンする予定の子供用施設らしい。建築家・坂茂さんによる設計。
http://www.shigerubanarchitects.com/works/2018_suiden/index.html

館内のところどころにあるアートは何だろう?と思っていたら、坂茂さんは災害支援活動(紙管を活用した避難所の仕切りの提供など)でも名を馳せる方で、こちらは熊本の震災で被害に遭った家屋の瓦や瓦礫を再利用したアートとのこと。
部屋に持ち込んで自由に読める壁一面の本棚もレストランもスパもあり、一歩も外に出ずに療養するのにぴったり、と思ったけれど、鶴岡の街はクタクタになるまで歩かずにいられないほど魅力的だったのでした。
朝焼けはブルーオレンジ。

SHONAI HOTEL SUIDEN TERASSEという施設。真冬に滞在すると雪にすっぽり覆われ、非日常感が増すかもしれない。そんな季節こそお篭りに向いているかな。
https://suiden-terrasse.yamagata-design.com/
映画館訪問を含む鶴岡街歩きは、映画にまつわる場所を巡るリレー連載「Cinema on the planet」でまとめようと思います。去年の秋、ドキュメンタリー映画祭で山形市に行ったことから山形との縁がひとりでに生まれた気がしてるので、そちらも記録しておくべきかしら。
鶴岡

今月中に消化する必要のある夏休みを取得することにして、週末+αで旅に出た。
療養を兼ねたかったので、外に一歩も出ずとものんびり楽しめそうな宿を選んだはずだったのに、街について調べるうちに魅力的な映画館があることがわかり、古い教会や博物館、食事も素晴らしそうなことを知り、街に出るとあちらもこちらも気になって、気がつけば毎日12kmほど歩き回っていた。温泉にも入り、すっかり元気。
庄内空港からほど近い山形県鶴岡市、お隣の酒田市とあわせた庄内エリアは『おくりびと』や『たそがれ清兵衛』、最近では『殿、利息でござる』など、ロケ地として頻繁に登場する映画の街だった。映画村もあるらしい。

旅行中、一度行けたらいいな、と考えていた「鶴岡まちなかキネマ」では2日連続で映画を観た。
宿(昨月オープンした建築方面で話題の宿/詳しくは追って)に泊まることだけが目的だったのに、1ヶ月前には何も知らなかった街のことをあっという間に気に入るなんて、旅の理想では?徐々に旅日記を書いていきます。
病院

フレデリック・ワイズマン特集にて。アテネフランセ、平日の夜というのに、半分以上客席は埋まっており、ワイズマンは人気だな。
http://www.athenee.net/culturalcenter/program/wi/wiseman_part1_2018.html
『病院』(1969年/84分)を鑑賞。
ニューヨーク市、ハーレムにある大きな都市病院、メトロポリタン病院の活動を緊急棟と外来患者診療所に焦点を当てて記録した作品。都市病院に運びこまれる様々な患者とその処置をする職員とのやりとりを通して都市が抱える多くの問題を浮き上がらせる。
今年の半分は予期せぬ病院通いが続いたため、私にとって身近な被写体として『病院』を観ることにした。自分に施された先端医療、改築したばかりのピカピカの病棟に圧倒されたばかりだったから、1969年の病院の医師や患者たちのワイルドな表情、まさに前時代的な設備や治療法、現在とのギャップに、50年かけて医療が格段に進歩してくれたことに感謝した。手術のシーンもあるけれど、モノクロだからか生々しさをさほど感じない。カラーだったら目を背けるはずで、血の赤って鮮烈な色なのだな。
「公園で渡された謎の薬を飲んだ」というアートスクールに通う若者が、薬と大量の水を摂取し、盛大に嘔吐する。あんな嘔吐はフィクションでは撮れない。フィクションが嫉妬するあまりにも映画的な嘔吐だった。しきりに死への恐怖を口にする若者→いなす医師→嘔吐する若者の無限ループ。死をそんなに恐れるならば「公園で渡された謎の薬」なんて飲んではいけない。そして、ただでさえ辛いのに、50年後の観客に人生最悪かもしれない一夜をいつまでも再生され目撃される若者が不憫。意識朦朧としたところをつぶさに撮られるなんて私なら拒否するし、もし勝手に撮られて公開されたら訴訟沙汰にするだろう。
ワイズマンの映画は被写体を遠くから俯瞰するショットで終わるものが時折あるけれど、『病院』も然りだった。あらゆるドラマが詰まった病院の前を、そんなことなど露知らず往来する車たち。私が入院した病院は近所で、しょっちゅうその前を通っていたけれど、病院に出入りする人はみんなドラマを抱えている、患者だけでなく、医師も、付き添いの人々もみんな、って、病院に入って出るまで想像していなかった。ラストシーン、素知らぬ顔で走り去る車のように。
【本日更新】moonbow journey 009 『2016年トロント映画祭』

本日更新しました。
移動式映画館moonbow cinemaの軌跡を追う連載moonbow journey 第9回は、みづきさんの2016年トロント映画祭訪問記。
気になった1本の映画を追いかけ、みづきさんが辿り着いたトロント。東京国際映画祭と同じ略称(TIFF)なので、東京の情報を得るためにタグを追うと、私も必ずトロントの情報に引っかかり、規模の大きさや華やかさに圧倒されていました。
映画祭を訪れる理由は人それぞれだけれど、トロントでのみづきさんの体感を読むと、みづきさんが映画祭に期待する何かは、私と似ているのかな、と思いました。黙々と映画を追いかけることは、どこかしら孤独が伴う…と感じていた中、初めて参加した映画祭で、飛び交う質問や満場の拍手に包まれ、孤独感は少し薄れ、それまで以上に映画を好きになったのです。
秋は映画祭の季節。どの国、どの街の皆様も映画祭に行ってみたいな、と思っていただければ幸いです。それではどうぞ、お楽しみください!
moonbow cinemaはこちら
Pickpocket 2018

9月を療養にあて、10月から心身ともに復活するつもりだった。
10月1日、銀座で靴を2足修理に出すと、修理から戻るまでの間、秋に履く靴がないことに気づき、いくつかショートブーツを履き比べ会計してもらう段で、クレジットカードが使えない、簡単に限度額を超えるようなカードではないから問い合わせたほうが良いかもしれません、とお店の方に言われた。別のカードで支払いを済ませ、帰宅してあれこれ調べ、窓口に繋がる翌朝に問い合わせてみた。
誰かが私のカードでホテル予約サイトを通じ、タイのホテルを20万円分ほど予約したらしい。カードの利用履歴は常にチェックされ、普段の購買傾向から外れるような利用があった場合、不正を疑い、使用停止扱いにするらしい。後から振り返って不満だったのは、停止する前に一報してくれても良かったのに、という点だったけれど、確かに身に覚えのない支払いだから停めてくれて助かったことに変わりはない。
不正利用分の支払い義務は私にはなく安堵したものの、使い慣れたカード番号が使用停止になり、新たな番号でカードが発行されること、そのためあらゆる自動引き落としの手続きでカード番号を自ら切り替える必要があること、航空会社のカードだったため、マイレージの顧客番号も無効になり新たな番号が与えられること、面倒なのは古い番号で搭乗予約していたので、新たな番号に移してもらうため電話連絡が必要なこと…など…などなど…(息切れ)。
起きてしまったことは黙々と受け入れ、黙々と実行項目をこなすタイプだけれど、手術を経て、繁忙期を乗り越え、ようやく普段の生活に戻れると期待した矢先の出来事だったから、さすがの私も心が削られ、復調に時間を要した。
日々の消費のうち95%をクレジットカードおよびカードに紐付けた電子マネーで決済する生活だから、メインで使っているカードが被害に遭った今回は、却ってすぐに気づくことができて良かった、と考えるべきかもしれない。友人に話してみると、休眠状態のカードで被害に遭ったことがあるらしく、不要なカードは即刻解約すべし、との教訓を得たそうだ。ランダムに狙ってるんだなぁ。
私が好きな映画の中には、ジョニー・トー『スリ』や、ブレッソン『スリ』など、踊るような流れるような手つきでスリを働くものが多いけれど、映画で観る分には興味深くても、自分が巻き込まれると迷惑極まりない!ほんと!犯罪は!映画で観るだけでじゅうぶん!
面倒な切り替え手続きがほぼ完了した今、ふと、私のカードが不当に使われたタイのホテルの予約は有効なのか、予約してみたけれど何らかの形で返金を得るための手段だったのか、何を考えているかはさっぱりわからないけれど、犯人はどんな人なのか、ぼんやり妄想する。おそらく犯人は追跡できず、宙に浮いた支払いはカード会社が保険から賄うケースが多いらしい。
こんな目に遭ったのだから、妄想の自由ぐらい保障されるべき。願わくば、私のカードを狙った人物は、『極楽特急』のガストン・モネスクみたいな粋な男だったと。オー!ダーリン!ガストンだったらしょうがない。あの男は何もかも軽やかに盗んでゆくのよ。ハートまでもね!
……どうか、どうかこの先は平穏かつ健康に暮らしてゆけますように……ヨレヨレ……。
moonbow cinema 『オリンピア』二部作

時間が経ってしまいましたが、9月末、moonbow cinemaで『オリンピア』を鑑賞したことを記録しておきます。moonbow cinema 3周年、10回目の記念すべき上映。おめでとうございます!
『民族の祭典』『美の祭典』の2部作から成る1936年ベルリンで開催されたオリンピックを女性監督レニ・リーフェンシュタールが記録した『オリンピア』、神楽坂の古い一軒家で上映されました。
詳細はこちら
https://moonbowcinema010.peatix.com/view
住宅地らしい細い道を歩き、本当にここで合ってるのかしら…moonbow cinemaのロゴも入り口にあるし…と、おそるおそる入り、案内していただいたのは床の間もある畳敷きの和室!座布団ではなく椅子があったけれど、なんとも実家っぽいというか、ノスタルジアが否応なしに呼び起こされる空間。
この夏、あまり出かけられなかったかわりに、部屋のスクリーンでW杯や甲子園中継を観る時間が長かったせいか、スポーツ(観戦)の夏から、スポーツ(観戦)の秋にスムーズに移行したような錯覚。見知らぬ観客の方に混じり、日本のメダル争いをハラハラ見つめ、勝利した瞬間には、やったね!!と叫びたくなるような(叫ばなかったけれどもね)微かな連帯感を感じるユニークな映画体験でした。

観ながら考えたことメモ。
・オリンピックを記録した映画では、市川崑『東京オリンピック』や、クリス・マルケルが撮ったヘルシンキ・オリンピックについての映画を追ったドキュメンタリー『オリンピア52についての新しい視点』(メゾンエルメスで鑑賞/詳細はこちら※)と独特の作風の映画ばかり観ていたせいか、レニ・リーフェンシュタールの撮るこのベルリン・オリンピックは政治と切り離し映画そのものをじっと見つめてみると、スポーツと躍動する人間の身体にフォーカスしたシンプルなドキュメンタリーだな、と思った。
・興奮する客席を捉えたショットも多く、日本人選手を応援する日本人も多く映る。この時代にベルリンでオリンピックを観戦する日本人とは、ずいぶんな特権階級なのではなかろうか。選手の家族?ヨーロッパ駐在の外交官?
・観客のファッションも着崩さないきっちりした正調の洋服で、どのタイミングから観客たちはカジュアル化したのだろう。オリンピック観客席の服飾史というテーマでオリンピックドキュメンタリーを観てみるのも面白そう。
・現在では当たり前となった、競技をリアルタイムでカメラで捉え、スタジアム内のビジョンに映し出す技術は当然1936年には存在せず、広いスタジアムで観客は双眼鏡を握りしめながら観戦する。そして競技の決着がつかず日が暮れると、ナイター設備も万全ではないスタジアムは文字どおり薄闇に包まれ、選手はかろうじて競技はできている様子だったけれど、観客にはどれぐらい見えていたのだろう。
・1936年のオリンピック、女性の種目数は現在より少なかったのだろうか。映画の時間配分としてはずいぶん男性偏重で、女性は添え物、競技場の華のような扱い。それは実況にもあらわれていて、実況担当の男性の声がどれだけ興奮しても、男性選手は最後まで名前と国名がきちんと呼ばれるのに対し、女性は徐々に「次はハンガリー娘」「優勝はドイツ娘!」と娘っこ扱いされ、2020年にあれをやったら大炎上しちゃうな、と思いながら観た。
・刻々と完成形に近づきつつある2020年東京オリンピックのスタジアムの建設現場をよく眺めるけれど、マラソンや短距離走だけがオリンピックではなく、馬術もセーリングもオリンピックなのだ。ああいった競技、東京のどこで開催されるのだろう。
・オリンピックを観戦するヒトラーの姿が頻繁に捉えられている。女子リレー、ずっとトップだったのに最後にバトンを落としてしまったドイツの選手の姿と、憤って多動になるヒトラーの姿が交互に映っていたけれど、あの選手、あの後、無事だっただろうか。
・30年代の映画、ベルリン出身となるとルビッチを想起するけれど、レニ・リーフェンシュタールはルビッチの10歳年下。アメリカに渡ってナチスを強烈に皮肉ったルビッチと、ベルリンで映画を撮り続けたレニ・リーフェンシュタール。どちらの運命も数奇で、それぞれの人生はまったく別物だ。当たり前だけれど。
休憩中、みづきさんが回覧してくださった『オリンピア ナチスの森で』(沢木耕太郎著/集英社文庫)は、このベルリンオリンピックに参加した日本のアスリートたちを追ったノンフィクションで、レニ・リーフェンシュタールへのインタビューも収録されているとのこと。映画を鑑賞した後に読むと最適だそうです。読んでみよう。
東京は秋

しばらく日記を書かないうちに、東京はすっかり秋。
2年半使ったiPhoneSEが限界を迎えつつあったので、iPhoneXSを手に入れてみたら、目を見張るカメラの進化。自分の目が2年半更新されていなかったような気になった(目ごしごし)。ちゃんとしたカメラを使いたい気持ちはあるけれど、手も鞄も小さい私には、必要十分ではなかろうか。カメラにも個性があるとして、iPhoneXSで撮る東京は、私が肉眼で見ている普段の東京を過不足なく記録してくれるように思う。カメラが味を出して、確かに綺麗だけれどこれは私の見ているものではない、という写真を生成することってままあるものね。

そんな気分で日比谷を歩くと、東京はもう映画祭モード。今月下旬から開催される東京国際映画祭、この週末にチケット確保。脆弱なチケットシステムに映画好きが苛立ち溜息をつくことすら、もはや秋の恒例行事感が漂うけれど、どうしてチケットぴあやセブンチケットなど外部に委託しないのかな?と考えてみて、「国際」映画祭だからこそ、海外からのアクセス、チケット購入に耐えられるシステムにしておく必要があるのかな、という考えに至った。チケットサイトがすべて二ヶ国語表記で、入力する情報も海外在住者でも購入できる内容。台北映画祭は「国際」映画祭ではないからか、台湾のローカルなチケットサイト経由での購入で、台湾で有効な携帯番号が必要…というところまで中国語を解読した後に事務局に問い合わせもしたけれど、残念ながら日本からチケット購入する術はない、と返事が来た。
例年であれば映画祭サイトや矢田部さんのブログを読み込んで、じっくり観る映画を選ぶところ、今年はあっさりと気分で選んでみた。阪本順治監督『半世界』を狙ってみたけれど、稲垣吾郎さんの国民的知名度の壁に阻まれ撃沈。タイで公開されて気になっていた『BNK48: Girls Don’t Cry』は無事確保。
https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CCA01
BNK48のことはさっぱり知らないけれど、この監督のファンなのです。もしかして48グループのファンの熱い壁に阻まれチケット取れないかな?と不安だったものの、あっさり買えた。
そして11月の東京フィルメックスはホン・サンスが2本!と教えていただいた。ラインナップ発表されたことも見過ごしていた。
私と同じく療養していたこのサイトも、そろりそろりと再開します。体調を心配してくださったり、更新されないサイトにアクセスしてくださっていた皆さま、ありがとうございました。映画の秋を楽しみましょう!
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