スマート
いま一番好きな声の人ことヤーレンズ出井さんは文章も上手く、連載を読んでいる。
今月のはじめ女性芸人コンビ・ハイツ友の会が突如解散して悲しいと書いたけれど、出井さんの連載最新回で解散について触れられていた。「顔ファン」とは芸人の顔のファンのことで、「芸じゃなく顔が好きなのかよ」と時に冷ややかに見られがち。ハイツ友の会の解散時、女性ファンに感謝すると同時に「本当に”お笑い“が好きな男性」に限定して感謝を残したことで、顔ファン問題が狭い界隈で話題になった。出井さんの見解、お笑いに詳しくなくても読んでほしい。
大風呂敷を広げて考える、これからのお笑い界
https://wluck-park.com/special/21085
「男女ってのはいつだってそんなに対称じゃないし、男の真裏が女じゃない。日本とブラジルじゃないんだから。」は出井さんの美声で再生され、「みんなで二度とあんなことを誰にも書かせないようにしような。」は私が当事者なら泣いただろう。風呂敷で始まり風呂敷に終わる落語のような様式美。なんてスマートな視点と文章なのだろう。米津さんのインタビューといい、令和の男性はいいなぁ!と思うけれど、いつの時代もスマートな人はいるとも思う。エルンスト・ルビッチなんて100年前の映画でも令和に通じるスマートさを持っていたのだから。私は出井さんに『虎に翼』の感想を聞いてみたい。
写真は東京国立近代美術館で観た、芹沢銈介が装丁した獅子文六『可否道』。
近所
近代美術館で観た高梨豊の写真。1975年の本郷。「パンダパン」「うさぎや」「キリンレモン」と動物づくし。近所の昔の写真。上野が近いので、なにかとパンダを推しがちなの、昔からみたい。
朝ドラ『虎に翼』、脚本家は吉田恵里香さんで、NHKドラマ『恋せぬふたり』が面白くて毎週観ていた。
https://www.nhk.jp/p/ts/VWNP71QQPV/
高橋一生・岸井ゆきの主演でアロマンティック・アセクシャルの男女を描く物語だった。近所の昔の写真を観ていて思い出したのが『恋せぬふたり』で高橋一生が住んでいる古民家は近所(谷中)で、たびたびドラマや映画に登場する。
この場所。昭和初期に宮大工がつくった家。
http://studio-prestige.co.jp/nedu.html
で、ある時この家が売りに出され…驚いたことに…値段が6億3400万円!!広さ、都心の土地の高さ、建物代もあるのだろうけれど、いい感じの古民家…6億!常々思う、東京は地面を持ってる人こそ王者であると。
まだレンタルスタジオとして運営されている?様子からみると、売買を諦めたのか、売れていないのか。
余韻
桜が散ったと思えば一気に夏みたい!窓を明けて書いてます。夜風そよそよ。今年は桜の名所には近づかず、移動しながら道端の桜をたくさん観たの本当に良かった。桜コレクション2024。神保町、小学館の前の桜。
湯島天満宮の麓にある、小さな公園の桜。願わくば来年は、桜のついでに甘味処で食べたりしたい。
チェックしていた美術展を見逃したけれど、何か会期が終わる頃って、次に始まる時期でもある(ポジティブ)。
4月末から始まる都美の「デ・キリコ展」は逃さず観たいです。
首
書き忘れていた映画の感想。北野武『首』は、昨秋の公開時に観て、早稲田松竹で2回めを観た。大島渚『御法度』との併映はキャストが被っているし(ビートたけし、浅野忠信)、衆道を描く点でも共通点があり面白かった。
私にとって北野武作品の魅力は編集で、これまでの映画のほとんどを監督本人が手がけていること。僅かな間延びも許さない、絶妙な間の詰め方は、さすが芸人、話芸が一流な人だけある。『首』の1回目を観たときは、ずいぶんもったりした映画だな…この間延びした感じは「老い」がもたらす変化なのか…と寂しい気持ちになった。
けれど数日経つと、じわじわもう一度観たい気持ちが芽生えてきた。加瀬亮演じる信長、最高だった。もちろん信長の実物に会った人は現世で誰もいないけれど伝え聞く常軌を逸したエピソード…蘭奢待を無邪気に欲しがるとか、比叡山を山ごと焼き討ちにするとか…から妄想した私の中の信長イメージに最も解像度高く近づいたのは『首』の信長だと思う。『麒麟がくる』の染谷将太も良かったけれど、光秀目線だからか若干エモい存在として描かれていた。信長ってそんなエモい人じゃなく、もっとドライで話が通じない感じの変な人なのでは?と思っていた。
線の細い加瀬亮の、すこし甲高いうわずった声の信長、そうそうそうそう!この感じ!ぴったり!と大興奮しながら2度めも堪能した。北野武は海外でも人気だけれど、海外の日本映画ファンは、信長とか秀吉とか家康とかいう男たちの物語、やたら映画化されるなぁ…日本人は彼らが好きだねぇ…って思ってるのかな。
インタビュー
先日また行った根津の老舗街中華のオトメ。街中華のイメージと乖離した内装が好きで、特にこの照明と、天井に映る光と影が良い。ずいぶん前に一度だけ行ったプラハの駅がこんな雰囲気だった記憶がある。
『虎に翼』の主題歌「「さよーならまたいつか!」をつくった米津玄師のインタビュー、読み応えがあった。
https://natalie.mu/music/pp/yonezukenshi26
特にこの箇所。「神聖視するのも卑下するのも根っこは一緒な気がする」のバランス感覚よ。
女性の地位向上については、自分が男性であるがゆえにより慎重に見つめなければならないというか、自分の身ぶり手ぶりがそこになんらかの不利益をもたらすようなものでありたくはないと思うんですね。なので、どういう形であればそれが可能になるのかを考えたときに浮かんできた「がんばる君へエールを」という方法だと、逆に女性を神聖視するような形になるんじゃないかと思った。自分の性質上、対象をある種のミューズのように扱う形になりそうな気がしたんですよね。でもそれは、結局“裏返し”でしかない。神聖視するのも卑下するのも根っこは一緒な気がする。なので、少なくとも自分にとって客観的になるのはおよそ不可能で。あくまで私事として、主観的に曲を作らざるを得ないと思ったんですよね。違う属性のものと自分を同一視するのも、それはそれで暴力的だとは思うんですけど、どちらかを選ぶと言われたら主観的なほうを選ぶしかない。そこは腹をくくってやるしかないなと思ってこういう曲になりました。
自分の好きな映画の傾向として、女性の一代記を描いたものが好きで、いつかそれをちゃんとシリーズで、連載で書きたいと漠然と思っているけれど、米津さんの言う「自分の身ぶり手ぶりがそこになんらかの不利益をもたらすようなものでありたくはない」という気持ちは同性であっても同感で、できれば他の人と意見交換しながら形にしてみたいな、と最近、あくまで頭の中だけで練っています。
遠い昔のかっこよくてしなやかな先輩たち
「椿と仔山羊」、1916年の辻永(つじ ひさし)の絵。山羊かわいい山羊。100年以上前の山羊。
https://www.momat.go.jp/collection/o00017
朝ドラ『虎に翼』、第2週も素晴らしかった。私が法律に興味を持った理由と、学んでいて面白かった記憶がギュッと詰まった週だった。「女子が法律を学ぶ」ことの最初期に、こんな苦悩があったなんて知らなかった。ありがとう、遠い昔のかっこよくてしなやかな先輩たち。
小林薫演じる教授が素敵だな、と思いながら、裁判員制度が施行される時、恩師の一人である方が書かれていたことを思い出した。
最近、裁判員のために刑法を解説する本などが出版されています。
私も執筆を依頼されましたが、お断りしました。
裁判員に選ばれたからといって、法律を勉強する必要はありません。
必要なのは、この国の行方に自分も参加するのだという志と、
一市民として、自分で考え、自分自身で判断するということです。
ですから裁判員に選ばれましたら、どうか楽な気持ちで参加していただきたいのです。
これって「リーガルマインド」という言葉のもっとも平易な説明では?
それでは、よい週末を!
解説
先日行った国立近代美術館の常設で、通常の作品+キャプションに加えて、ガイドつきというか、新たな視点を加えることで鑑賞がより楽しめますよ、という主旨の展示があった。例えば藤田嗣治のこの絵、自画像の中で持っている筆について、左に筆の現物と、筆の解説が加えてある。
こういう展示、有難いと思う時と、絵ぐらい静かに観たいと思う時があって、今回は後者だったけれど、普段から私が美術を見慣れていることと、この絵をパッと観て筆に着目する人ってどれぐらいいるのかな?と疑問が湧いたからで、美術との距離感と何を観るかは人それぞれだろう。
けれど、何か気になるものを見つけて、後でじっくり調べよう…と思って実際調べることってあんまりないから、情報過多時代に検索結果がすぐ横にあるのは便利で親切なのかもしれない。
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