第一回

きっかけ探し

並木道の端の交差点にバイクを止め、真っ赤なヘルメットを被ったまま、金網の鳥籠を胸元に持ち直立不動で前をつめている人がいた。視線の先には有刺鉄線が格子状に張り巡らされた木枠が重ねて置いてあり、その後ろに電柱よりも高い木がそびえ立っている。青空の早朝、鳥のさえずりが木の上の方から響いている。


赤いヘルメットの人は何度か鳥籠を覗き込んでは持ち変え、ふと歩き出し、有刺鉄線枠の上にそっと置いた。そしてバイクに戻って腰掛け、じっと鳥籠を見つめた。信号の色が何度か変わった頃、その人がスマートフォンをさわると、美しい鳥の鳴き声が聞こえ始めた。


更に何度か信号が変わっても、鳥籠の中からさえずりが聞こえることは一度もなかった。

映画の周辺:チラシ

映画館にはチラシ棚が常設してある。ほぼ全てのチラシが両面カラー、幅15.5cm×高さ22cm、厚さは日本の映画チラシの倍はありそう。『ワンダーウーマン 1984』は両面蛍光色。

文章と写真

moonbow cinema主宰
維倉みづき

<連載開始にあたってのご挨拶>
当連載は、移動式映画館 moonbow cinema
主宰者が日本を離れている間、
異国の景色と映画の周辺を、
上映会と海外映画祭現地レポート代わりに
お届け致します。