第二回
壁沿いの正月
街の中心に位置する高校は、グラウンドや体育館もある敷地の周りが、高さ約2メートルの壁で囲まれている。壁の最上部には有刺鉄線が三重四重に張り巡らされており、監視カメラも設置されている。壁沿いにはタイル敷の歩道が延び、その幅は高校生数人がゆったり並んで歩ける程度。朝には、高校生の送迎を終えて一休みするバイクドライバーや、犬の散歩をする人の姿が目立つ。
2月、高校が旧暦正月の長期休暇に入って間もないある朝、壁沿いにリヤカーが1台置かれ、その荷台では男性がビニールシートにくるまって眠っていた。翌朝もリヤカーはその場から動かず、日を追うごとに前後にみるみる廃品が積み重なっていった。金属製部品、プラスチック空容器、段ボール。集められた物、並べ方に、規則性は見当たらない。荷台の人は留守がちであった。
高校の授業が再開した日の朝、前日には5メートル以上まで伸びていた廃品と、リヤカーの姿が消えた。歩道には男性の毛布代わりであっただろうビニールシートだけが残っていた。リヤカーが止まっていた場所の向かいには、毎朝、大勢の人が参拝する寺院があった。
映画の周辺:半券
映画館の半券は系列によって形式が異なる。『ミナリ』を鑑賞した Cinestar は幅8センチのレシート用紙。『プロミシング・ヤング・ウーマン』を鑑賞した Galaxy Cinema では幅11センチ、高さ5センチの厚手の紙が、スクリーン入場時に半分にもぎられた。