第四回

祈り

道路がバイクで埋め尽くされる朝の通勤ラッシュ。教会前でバイクを止め、左側に下り、ヘルメットを外し、両足を揃えて直立し、両手はお腹の前に添え、祈りを捧げる人たちがいる。目を閉じている人もいれば、真っ直ぐ教会、あるいは間に横たわる庭園に佇む聖母マリア像を見つめている人もいる。

朝7時前後のピークには10人ほどが並ぶ。各人が着用しているバイク乗車時の定番服、日焼け防止用パーカーが、クレヨンのように鮮やかだ。殆どの人は1人で来ているが、2台一緒に到着して隣同士に止める人たち、あるいは、当地では大人のバイク2人乗りが認められているので、夫婦や母娘らしき2人組が1台から下りる姿もある。祈りは、短い人でも10分は続く。

街の観光名所にもなっているこの教会は、2017年から修復工事中。外壁は足場に覆われ、門は金属製のスライド式扉で塞がれており、基本的に中に入ることは出来ない。ただ日曜日に讃美歌が漏れ聞こえてくることがあるので、関係者はミサの時だけ中に入ることを許されているのかもしれない。

教会前面に備え付けられた工事用昇降機が地面を離れ、2本の鐘塔に挟まれた屋根に職人を持ち上げる。空には時折、白色と濃灰色の鳩たちが旋回している。

映画の周辺:フランス語映画

毎週土曜日16時から、アンスティチュ・フランセと提携しているInstitut d’Echanges Culturels avec la France (IDECAF) にある演劇ホールでフランス語の映画作品が上映される。日本未公開作品も含まれ、特に子ども向け作品に多い。入場料は約250円、学生は約200円。いつも空いている。

文章と写真

moonbow cinema主宰
維倉みづき