第六回

月餅

中秋の名月までひと月の頃から、街中で月餅の販売が始まる。ショッピングモールには特設コーナーが設けられ、数十という店が並ぶ。コンビニやスーパー、カフェ、パン屋といったチェーン店でも店頭の一番目立つところに出現する。

月餅は日本でも見慣れた形状だが、当地の特徴は餡と包装にある。伝統的かつ主流の餡は、肉類の入った塩っぱい味。鶏肉、ソーセージ、ベーコン、パテ等に、ナッツ類や香草、芋類などを組み合わせ、各社が工夫を凝らす。餡の中心に卵黄が丸ごと入っているものもあり、半分に切ると満月のように顔を出す。もちろん、黒胡麻やチョコレート、抹茶などの甘味も色々ある。

包装は日本の「萩の月」のようだ。月餅ひとつひとつがビニール袋に入り、更に個箱に収められている。ビニール袋の前に銀紙で包まれている銘柄もある。贈答用の場合、複数の小箱が頑丈且つ彩りあざやかな贈答用箱におさめられ、専用の厚手の紙袋も用意されている。

日頃、公私でお世話になっている先に送る習慣があり、営業担当は月餅持参の挨拶回りが多くなる。満月当日が近付くにつれ、オフィスには美しい紙袋が整列し、午後にはおやつとして6〜8等分された月餅の乗った紙皿がデスクの間を巡るという。そして、ゴミ捨て場にも化粧箱と紙袋が堆積してゆく。

中秋の名月当夜には、子どもたちに紙製ランタンが贈られ、満月と共に街を照らす。

映画の周辺:NOPE

ホラー映画が大人気の当地。ジョーダン・ピール監督新作『NOPE/ノープ』の現地タイトルは直訳『KHONG』。ポスターのロゴデザインがひと工夫されていた。

文章と写真

moonbow cinema主宰
維倉みづき