【本日更新】Cinema on the planet 007 Taipei Cinema Trip 後篇 台北電影散歩
本日更新しました。
映画にまつわる場所をめぐるリレー連載「Cinema on the planet」第7回は、私の台北旅行記。後篇は台北電影散歩。
旅の目的「台北電影節(映画祭)のメイン会場・中山堂で映画を観る」を早々に果たした後は、思いつきで街をうろうろ。映画祭のこと以外は何も調べてこなかったのが逆に功を奏したのか、興味関心にどこまでも忠実な行動の記録になりました。振り返ってみて、すべからく旅はこうでありたいな、と。写真豊富ですので、多くはスライド式で掲載しています。どの写真も、ぜひご覧になってくださいね。
夜市に台湾料理、ガイドブックに載りそうな観光名所も何ひとつ出てこない、ある映画好きの台北散歩、お楽しみいただければ幸いです。
http://www.cinemastudio28.tokyo
前篇「台北電影節(台北映画祭)」はこちら
http://cinemastudio28.tokyo/cinemaontheplanet_007_part1
台湾、人気の観光地なので頻繁に行く方も多いかと思います。登場する場所は28mapにマークしていますので、お役に立てば嬉しいです。
Cinema Studio 28 Tokyo Map (google my map)
Storytelling
島から東京にワープ!タンバリン・ギャラリーで開催中の展示「Storytelling」、仕事の後に行ってきた。28に連載「One movie , one book」で参加くださってる小栗誠史さんが参加されています。
4/29(日)まで
http://tambourin-gallery.com/tg/2018/04/storytelling.html
ギャラリーでの展示に小栗さんがどう参加されるのかな?と思っていたら、選書&展示される絵やオブジェにまつわる文章を書き、文章はプリントされたものが置かれていて自由に持って帰ることができる、というユニークさ。その場で読んでもいいし、とりあえず持ち帰って絵やオブジェの記憶を反芻しながら後から読んでみるのも良さそう。エッセイもあればショートストーリーもあった。
私が好きだったのは、木でできた船のオブジェに添えられた一篇。半分ほどは関西弁の語りで書かれており、関西要素のなさそうな小栗さんが?!の意外性と、関西弁が一字一句、過不足なく正確であることにも驚き。どなたか、関西弁ネイティブの方が監修されたのかしら。時折、中国語を話す時、発話においては「音」として意識するだけだけれど、この会話、文字にすれば全部漢字なんだよな…という事実を面白く思うけれど、関西弁って文字にすると、ひらがな比率が高い言葉のように思えて面白い。誰が書いても宮本輝っぽくも田辺聖子っぽくもなる点も興味深い。
言葉を立体で捉えられて、小栗さんのまだ見ぬ引き出しも垣間見え、短いながら豊かな時間を過ごした。トークに伺えなかったのが残念。遠くの島にいたので…。
ギャラリーに向かうべく、夕方の外苑西通りを久しぶりに歩いた。ずいぶん景色が変わっていた。
オリンピック用っぽい建造物。これはメインのスタジアムじゃないと思うのだけれど、詳しくないので自信はない。
道すがら、花がもうもうと咲き乱れていた。カラフルな季節。
Cinema memo : 寝て覚め
週末、濱口竜介・酒井耕監督のドキュメンタリーを観たので、そういえば新作、いつ公開なんでしょうね…など話していたら、公開日が決まったとニュース。9月1日!なんとなく劇場はテアトル新宿では?と予測していたら、やっぱりテアトルだった。
製作のニュースを知ってから、楽しみで原作も読んだ。去年の夏、台北行きの行き帰りにずっと読んでいたので、なんとなく台北の空気と『寝ても覚めても』の物語が混じり合っている。
同じ顔を持つふたりの男性を愛してしまう女性の物語で、確か10年以上の長きにわたっての心象が描かれる。女性の眼や心がカメラのレンズのようで、必ずしも恋愛にだけピントがあっているわけではなく、職場の窓から見えた景色にいきなりピントがあったりするのが面白い。精密機械のように目の前を通り過ぎる被写体を捉え続け、恋だからといって浮かれるすぎるわけでもなく、別れがあっても哀しみすぎることもなく、レンズの前の登場人物が時の流れにつれ入れ替わってゆくのを、淡々と描写していた。
国内外で引っ越しの多かった私は、引っ越し前夜、部屋のまわりの取るに足らない景色を写真に撮り、かつての住所に別れを告げる儀式をひっそりと執り行った。北京だったり、パリだったり、世田谷区だったり、新宿区だったりしたけれど、撮りたい景色は天安門でもエッフェル塔でもキャロットタワーでも都庁でもなく、何百回とその前を行き来したコンビニだったり、部屋に辿り着くまでに最後に曲がる小さな交差点だったり。
その場所で過ごした日々を、後から思い出すならば、私の北京、私の世田谷区の記憶はそんな景色で構成されており、そんな景色は自分で撮らなければ、取るに足らなすぎて、さすがのgoogleも撮っていない。
小説『寝ても覚めても』は、ひとりの女性のそんな視界、そんな景色が積み重なった物語だったからこそ惹かれた。小説と映画は別物かもしれないけれど、濱口監督があの物語を映画化してくれるなんて、なんて頼もしい、と思っています。
骨とドローン
霊園の桜から連想した『ツィゴイネルワイゼン』は骨好き垂涎の映画で、骨に執着する原田芳雄に共感しきり、観るたびに同士気分高まる。人間の、肉体に対する欲望はざっくり、筋肉好き/脂肪好き/骨好きに分類できるのでは?と思っている。骨好きの私は、恰幅が良くて素敵とか、筋肉が素敵とか思ったことがない。
最近読んだ、『ドレス』(藤野香織著/河出書房新社)冒頭の一篇『テキサス、オクラホマ』はタイトルから想像もつかない展開の物語で、賢いドローンが羽を休めるためのドーム形の施設が舞台。ドームの中は砂漠になっていて、本物ではなく人工の骨格標本がたくさんあり、骨の隙間に鳥が枝にとまるようにドローンがやってきて労働の疲れを癒す施設らしい。脳内で映像化しながら読み(小説を読むとき、私はだいたい脳内で映像化しながら読む。途中で実在の俳優をキャスティングすることもある)、結末の残酷さも含めうっとりしながら読み終えた。映画化希望。
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309026244/
著者インタビュー、めちゃくちゃ面白かった。
http://bunshun.jp/articles/-/5359
谷川俊太郎展
金曜夜に観た、谷川俊太郎展について。展示、え、これだけ?と最初は少ないと思ったけれど、気がつけば時間を忘れて没入しており、ひとりの人間の過去・現在・内側・外側を、さりげなく網羅的に見せながら、生まれた言葉、言葉を生むことそのものが展示されていたとしか説明しようのない感覚が生まれた。初めて味わう種類の感慨だった。
図録は中身を確認して結局買わず、あの展示空間が期間限定のものだということが寂しい。家から5分ほどの場所に、気が向けばいつでも遊びにいける公園のように、あの展示空間が存在してほしい。好きに寝転んだり、コーヒーを飲んだりしたい。
https://www.operacity.jp/ag/exh205/j/gallery.php
谷川さん以外の言葉が並ぶこの壁、この一節は聖書のものだろうと思いながら読んでいたら実際そうだった。最下部にある「著作者より引用の許諾を得ていないことを、お詫びします。」という一文に笑った。そうか、許諾なしに引用しても、お詫びすれば良いのか…(もちろん違うだろうけど…)。きちんと段取りを踏むとして、聖書の引用って、どこに許可を求めればいいんだろう。
展示された手紙はどれも素敵で(三島や、武満徹の直筆!)、谷川さんのお父さんからの手紙がとりわけ良かった。ご両親が出会った頃から送りあっていたという手紙が本になっているらしいので(『母の恋文』)、早速読むつもり。
映画的には、市川崑と撮った古い写真が展示されていた。年表を観ると、市川崑・和田夏十と出会った年、と明記されてもいた。『東京オリンピック』だけの関係かと思っていたけれど、他の映画(『股旅』など)にも携わっていたと知る。2020年のオリンピックも、何らかの形で関わってくれるといいなぁ。
10年以上前、谷川俊太郎さんと少しだけお話する機会があり、その頃の私の関心は、言葉は頭と体の中間の曖昧な位置にあるもので、体のものでもある以上、スポーツ選手が日々鍛錬するように、ピアニストが1日休むと3日損失するといわれるように、使いこなしたいと願うならば、言葉も日々鍛錬しなければならないのではないか、という点にあったので、「谷川さんは毎日、詩を書くのですか?」という質問をしてみました。お答えは「僕はパソコンで書くので、毎日パソコンの前に座り、言葉を書いたり消したりします」とのことだった。パソコンというのが少し意外だったのと、やっぱり毎日か!と思ったことを覚えている。確か夏で、展示されていたような、洗いざらしのTシャツ姿だった。
会場に歴代のワープロ、パソコンが展示されていた。書院、iBook、VAIO。私がお話した頃は、右下のVAIOの前に日々座っていらした頃かと思う。
そして、こんなメモも貼ってあって。今週、私は包丁でさっくり指を切ってしまい(指と白菜を混同)、右手人差し指という使用頻度の高い指なので生活に支障がややあるのだけれど、PCのキーボードは支障なくタイプできるけれど、万年筆で手帳に予定を書き加えることが痛くてできない。意識していなかったけれど、手書きって想像以上に指に力がいるのだな、と思い知った。そう考えると、PCで生み出される言葉と、手書きで生み出される言葉は、そもそもの体力のかけ方がずいぶん違うのだなぁ。こんな時代に敢えて手書きにこだわる人は、「力を使って書いた」ということが、言葉を生み出すにあたって大切な人なのでは。
谷川さんとお話した日は、女友達と一緒で。「谷川さん、きっとすごくモテる人だと思う」と私がつぶやくと、友達が「ね。手とか、触りたいって感じの人だったね」と言い、きゃあきゃあ言いながら帰り道を歩いた。
谷川さんに会いに行ったような気分になる展示だった。ギャラリーを出ると、寂しさで心が覆われた。オペラシティで、明日まで。
https://www.operacity.jp/ag/exh205/
赤い河
仕事をさっと切り上げ、オペラシティへ。谷川俊太郎展。
言葉って、こんなふうに立体的に見せることができるのか。あの空間がこの週末で終わってしまうなんて寂しい。谷川さんが影響を受けたあれこれの中に、映画ではハワード・ホークス『赤い河』(1948年)が挙げられていた。
詳しい感想は明日。展示は日曜まで。おすすめです。
http://www.operacity.jp/ag/exh205/
谷川さんの家にあるらしいあれこれが並ぶ棚にいたペンギン。目ざとく発見。
脳内キャスティング
寒の戻り。今年一番の寒さでは?春分の日なのに。
冬物のコートはすでにクリーニング済みなので、部屋着に春物のコートをひっかけただけの薄着で、坂の上の図書館へ。読み終わった本を返し、新しい本を借りる。その足であわよくば根津神社へ、と思っていたけれど、一刻も早く帰らねば風邪をひく!と身の危険を感じて帰宅。寒い寒い。
読了したのは川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』。2年ほど前に一度読み、今回は再読。冬の終わり、この夜が長く美しい季節のうちに、あの小説を読まなければ、と思い出した。主人公はクリスマスイヴ生まれの冬子さん。私は冬生まれながら夏好きだけれど、夜は断然、冬がいい。日付が変わってすぐ、0時台の生まれだからかしら。冬の真夜中生まれなのです。冬子さん、親近感。
とはいえ、家に篭って仕事をし、友達づきあいも恋愛経験も少ない冬子さんと、私の共通点は多くはない。登場人物でいえば、華やかでずけずけと率直に物を言う聖という女性のほうが性格は近い。けれど、どの女性にも私の欠片は満遍なくあって、身につまされたり応援したりしながら、静かで不器用な淡い恋の物語を読み進めた。
初読の時も考えたけれど、映画化するならどんなキャスティングが良いのかしらね。どれだけ考えても冬子さんは思い当たらず。聖は吉高由里子のイメージ。難しいのは冬子さんのお相手・三束さんのキャスティングで、50代後半、地味、どちらかというと冴えない俳優…イメージで言うと温水洋一がちらつくのだけれど、小説の中の描写からすれば遠くないけれど、物語のイメージには合わない気がして振り出しに戻る。同じこと考えた人いるかしら?と調べてみると、リリー・フランキーと書いている人がいた。リリーさんだと「いわくつき」っぽさが出すぎるのでは、と振り出しに戻り、今日のところの結論は、「オーラを消した光石研」に落ち着いた。いろんな俳優が浮かんでは消えたけれど、多くの人に「ダメだ、色っぽすぎる」と思ったので、俳優さんって色気があってほんますごいネー、と頭の涼しい子のような感慨を抱くと同時に、光石研の汎用性の高さよ。売れっ子なはずやで。
好きな物語が映画化されることには、いろんな気持ちを抱くけれど、『すべて真夜中の恋人たち』が映画化されたなら、どんな監督でも、光石研じゃなくても、きっと観に行くことでしょう。
寒くて外に出られなかったけれど、頭の中はなかなか忙しかった春分の日。
【about】
Mariko
Owner of Cinema Studio 28 Tokyo
・old blog
・memorandom
【search】
【archives】
【recent 28 posts】
- 1900s (3)
- 1910s (5)
- 1920s (10)
- 1930s (26)
- 1940s (18)
- 1950s (23)
- 1960s (58)
- 1970s (14)
- 1980s (40)
- 1990s (46)
- 2000s (37)
- 2010s (240)
- 2020s (28)
- Art (30)
- Beijing (6)
- Best Movies (5)
- Book (47)
- Cinema (2)
- Cinema award (16)
- Cinema book (58)
- Cinema event (99)
- Cinema goods (15)
- Cinema history (2)
- Cinema memo (127)
- Cinema Radio 28 (8)
- Cinema Studio 28 Tokyo (90)
- Cinema tote (1)
- Cinema Tote Project (1)
- Cinema trip (43)
- cinemaortokjyo (2)
- cinemaortokyo (100)
- Drama (3)
- Fashion (40)
- Food (65)
- France (15)
- Golden Penguiin Award (10)
- Hakodate (6)
- Hokkaido (3)
- HongKong (3)
- iPhone diary (1)
- journa (1)
- Journal (248)
- Kamakura (1)
- Kobe (1)
- Kyoto (18)
- Macau (2)
- memorandom (4)
- Movie theater (211)
- Music (43)
- Nara (15)
- Netflix (3)
- Osaka (2)
- Paris (13)
- Penguin (15)
- Sapporo (3)
- Taiwan (47)
- TIFF (24)
- Tokyo (358)
- Tokyo Filmex (14)
- Weekly28 (10)
- Yakushima (3)
- Yamagata (11)
- YIDFF (6)
- Yokohama (5)
- Youtube (1)