Senses
5月4日、みどりの日。近所の動物園こと上野動物園、無料開園日だったので、移動の途中にさっと寄ってまいりました。
不忍通り沿いの入場口から、さっと入り、まっすぐペンギン池へ。ケープペンギンズ、のんびりぱたぱたしておった。新緑とペンギンのコンビネーション、この季節ならでは。
間もなく開幕するカンヌ映画祭、矢田部さんのブログ(こちら)で予習。濱口竜介監督、カンヌ開幕に先駆け、『ハッピーアワー』が5/2からフランス公開されているもよう。『Senses』のタイトルで5部構成、3回に分けて上映されるのだとか。
http://www.filmdeculte.com/cinema/actualite/Happy-Hour-21777.html
パリの友人に、長い映画だけれど時間の都合がつくなら是非!とおすすめしたら、メトロにたくさんポスターが貼ってあって、何度も目に入るうちに、ん?これ、日本映画?って気づく感じのデザインだったから気になっていた、と返事がきた。
パリの映画館Max Linderでは、3部作を一気に観る機会も設けられたようで、チケットの他に「BENTO(弁当)」や「DORAYAKIS(どら焼き…なぜ複数形…?」も売られるらしい。
書けていなかった日記をまとめて書きました(台北の投稿の下)。『ベイビー・ドライバー』『パターソン』『コンフィデンスマンJP』の映画マニア編が面白かったことなどなど。
PATERSON
ずいぶん前にギンレイホールで。『ベイビー・ドライバー』の併映は『PATERSON』だった。2本観た後、どんな気分になればいんだろう、という2本立てだったし、私は絶対『PATERSON』→『ベイビー・ドライバー』の順で観たほうが良さそう、という予想は当たった。どちらもいい映画だけれど、順番逆で観るのは辛そう。
ニュージャージー州パターソンに暮らすバス運転手のパターソン。毎朝、妻にキスをして始まり、いつも通り仕事に向かい、心に浮かぶ詩をノートに書きとめる。帰宅後は妻と夕食を取り、愛犬と夜の散歩に出かける… 一見代わり映えのない日常をジム・ジャームッシュ監督がユーモラスに映し出した7日間の物語! ジム・ジャームッシュ監督4年ぶりの最新作。
パターソン、妻、犬の場面が大半を占める中、パターソンの妻にばかり気をとられた。世の中の人々をパターソンタイプ、妻タイプに強引に二分するなら、確実に自分は妻タイプに該当するから。パターソンタイプの人々に、あの妻のように、そのノート、世の中に出しちゃいなさいよ?もっとおおらかに自己表現して生きるべきよ?って、ぐいぐい言っちゃってるはず。自覚していても、画面でどーんと見せられると、内省的な気分になるもの。この世にはパターソンのような、自分だけのノートに静かに書き留めるような言葉の愛し方があるのだということを、改めて思い知ったのである。
私はこうやって人目に触れるところに言葉を書くことは続けられるけれど、どこにも出さない自分だけの感情を静かに誰にも見えない場所に書き留めておくことにはさっぱり向かず、何度かトライしては挫折している。きっと詩も書けない。小津監督の日記のような、誰に会った何を食べたという事実を淡々と記録する種類の日記にも憧れがあって、トライしたけれど無理だった。世界とおおっぴらに自分を共有したい欲望もないけれど、とにかく「自分だけの」ということに向かない。パターソンの妻もそうなんじゃないかなぁ。突拍子もないことばかりどんどん実行に移しているように見えるあの妻も、彼女の中では筋道の通った思考と行動の因果関係があり、その一部始終が丸ごと人目に触れることに衒いがない。わかる、わかるわぁ。
興味深いのはタイプの違うふたりでも、一緒に暮らしていけるということで、愛ゆえに、ということなのでしょうが、パターソンが時折、唇の端に苦虫を噛み潰した表情をたたえることが気になりましたね。末永く幸せであってほしい。
BABY DRIVER
観た映画をちゃんと記録する2018年。ずいぶん前だけれど、ギンレイホールで観た『ベイビー・ドライバー』。
映画について前知識はなかったけれど、エドガー・ライトという監督名、知ってる気がするなぁ…と記憶をたどってみると『スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団』の監督だった!なんだかものすごいタイトルだけれど、あの映画面白かった!と俄然楽しみに。
http://www.bd-dvd.sonypictures.jp/babydriver/
天才的ドライビング・センスが買われ、強盗団の“逃がし屋”として働くベイビー。音楽を聴くことで、その才能が覚醒し、クレイジーなドライバーとして活躍してきたが、ウエイトレスのデボラと恋に落ちると… 幅広い年代から選ばれた楽曲と映像が完全にシンクロする爽快カー・アクション!
そうなの、そうなの。音とカメラワークと演技、緻密に全部シンクロしてるって事実に、最初は面食らってちょっと気恥ずかしくなったんだけれど、慣れるとリズムが気持ちよくて踊りながら観たくなった。映画館で、できれば爆音で観るべき1本。
音楽のことばかり語りたくなるけれども、とても褒められた仕事なんてもんじゃないいかがわしい仕事に就くベイビーが、ちょこちょこ登場する「この子はいろんな事情で今こんな仕事してるけどナ、ほんまはめっちゃ心根の優しい子なんやで」エピソードがラストで畳み掛けられる見事さこそ、鑑賞後の多幸感の素だったと思う。もはや保護者の気分で鑑賞。
銀座
GW初日。今年はGW前に旅行に行ったので、GWは東京で。数寄屋橋交差点の早朝。空は青々としておった。
なんだか身体が疲れてる…?と不審に思ったけれど、考えてみれば屋久島で25kmトレッキングの後、あらゆる交通手段で長距離移動した数日後なのだった。しかしまぁ喉元過ぎればなんちゃらとか言いますけれども、ほんまに過ぎたことは忘れていくんですねぇ…。
東京ミッドタウン日比谷にはまだ足を踏み入れていない。通りにあった地図にも、表示されていなかった。これから更新されるのかな。帰りに寄ってみようかな?と出来心が芽生えたものの、ごうごうとした人の波が明らかにミッドタウンに向かっていて、混んだ場所嫌いとしては当分無理では…と、すごすごメトロに乗った。
銀座、メゾンエルメス4月の上映はエルンスト・ルビッチ『生きるべきか死ぬべきか』。
http://www.maisonhermes.jp/ginza/le-studio/archives/703706/
おそらく二桁回数は観ていると思うけれど、今回は過去最高に集中して観た。昨今の永田町方面のゴタゴタにさすがにニュースを追う気力すら奪われているけれど、国会中継って音を消して眺めてみれば、クラシカルな内装の室内に仕立ての良いスーツの大人が集まって、ちょっと映画みたいっていつも思う。現実は耳を疑う茶番が繰り広げられているけれど、音量を上げると、実は『生きるべきか死ぬべきか』のような粋な物語が演じられているのです!という世界線を妄想…って、現実逃避も甚だしいですね。
ベルリン生まれのルビッチはナチスによってドイツ市民権を剥奪されている、と思えば、笑いに巧みに内包された哀しみがじんわり弾け、セリフのひとつひとつも染みてくる。嫌味も反抗もエレガントに、しかし確実に急所は狙って、こんなふうに振る舞える自分にいつかなれるだろうか、と観るたびに考える。
しかし、ルビッチ映画があればもう世界は充足し、他の映画は要らないのでは?と観るたびに思ってしまうのは、よろしくない傾向。
シェイプ・オブ・ウォーター
観た映画は遅くなっても全部記録しようと決めた2018年、『シェイプ・オブ・ウォーター』は公開日(3/1)夜に観た。
この3月はなかなか壮絶で、記憶がもはや薄いけれど、月のはじめにこの映画を観たことは、よき思い出として私の心をあたため続けた(…この雑な英文和訳のような文章よ…)。3月1日の東京、強い雨が降って止んだ後の日比谷の街は冬の埃がさっと払われたようにみずみずしく、春の予兆に満ちていた。
シャンテの前方の席で、私は今、とても素敵なものを観ている!と思いながら眺めた。ずっと読みたかった絵本をようやく手にしてめくったような。めくる速度も早すぎず遅すぎずちょうど。そんなことは滅多にあるものではない。
主人公の女性が暮らすアパートは昨今観た映画の中の建物のうち、とりわけ住んでみたいと思った。ほとんどお客さんが入っていないガラガラの名画座の上の部屋!大家さんは映画館の館主でもあって、チケットブースに家賃を払いに行くと、無料券をあげるからどうか映画を観に来てくれ!って懇願される。
そんな部屋に暮らす女性は、女優のように見目麗しいわけではないけれど、仕草や身体のラインに艶やかさがあって、ただ単純に彼女の人生にその相手がまだ登場していないだけで、恋に落ちる準備はいつだってできている、という女性のように見受けられた。相手が人でも、幽霊でも、映画の中の俳優でも、怪物でも、モンスターでも。そして目の前に現れた”彼”は、造形的に美しく、もう相手として十分ではないか、この人だよ、と納得できる引力があった。恋をした女性が、みるみるうちに艶やかさが増していく、微細な変化も見逃せない。
おそらく最新技術がふんだんに投入され、気の遠くなるような時間をかけて作られたのだろうけれど、描かれるのが、アパートの階下で上映されるような、映画の創世記からとっくに存在していたクラシカルな愛の物語、という点がとりわけ好みだった。こんな、ずいぶん手の込んだ遠回りを辿りながら、あらすじだけ抜き書けばたった一行で終わりそうなシンプルな映画が生まれることが贅沢だと思った。私の好きな種類の遠回り感、存分に味わった。
http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/
名画座にまわった時に、また観ると思う。
Storytelling
島から東京にワープ!タンバリン・ギャラリーで開催中の展示「Storytelling」、仕事の後に行ってきた。28に連載「One movie , one book」で参加くださってる小栗誠史さんが参加されています。
4/29(日)まで
http://tambourin-gallery.com/tg/2018/04/storytelling.html
ギャラリーでの展示に小栗さんがどう参加されるのかな?と思っていたら、選書&展示される絵やオブジェにまつわる文章を書き、文章はプリントされたものが置かれていて自由に持って帰ることができる、というユニークさ。その場で読んでもいいし、とりあえず持ち帰って絵やオブジェの記憶を反芻しながら後から読んでみるのも良さそう。エッセイもあればショートストーリーもあった。
私が好きだったのは、木でできた船のオブジェに添えられた一篇。半分ほどは関西弁の語りで書かれており、関西要素のなさそうな小栗さんが?!の意外性と、関西弁が一字一句、過不足なく正確であることにも驚き。どなたか、関西弁ネイティブの方が監修されたのかしら。時折、中国語を話す時、発話においては「音」として意識するだけだけれど、この会話、文字にすれば全部漢字なんだよな…という事実を面白く思うけれど、関西弁って文字にすると、ひらがな比率が高い言葉のように思えて面白い。誰が書いても宮本輝っぽくも田辺聖子っぽくもなる点も興味深い。
言葉を立体で捉えられて、小栗さんのまだ見ぬ引き出しも垣間見え、短いながら豊かな時間を過ごした。トークに伺えなかったのが残念。遠くの島にいたので…。
ギャラリーに向かうべく、夕方の外苑西通りを久しぶりに歩いた。ずいぶん景色が変わっていた。
オリンピック用っぽい建造物。これはメインのスタジアムじゃないと思うのだけれど、詳しくないので自信はない。
道すがら、花がもうもうと咲き乱れていた。カラフルな季節。
Cinema memo : GW
年が明けてから慌ただしく、記憶が薄い。ずっと山手線内側にいた。映画、もはや何を見逃したのかさえ情報をキャッチアップできていないけれど、ゴールデンウィーク、ちょっとのんびりできるのを楽しみにしてる。
メゾンエルメスでの映画上映、短篇セレクションこそ他で観られない映画ばかり。年間テーマに合わせて選ばれた短い映画たち。5月、さっそく予約しました。
http://www.maisonhermes.jp/ginza/le-studio/archives/716057/
「箱の中に閉じ込められていた人形が巨大な世界へと旅立つ、ブルース・リーに捧げられた痛快カンフー・アニメーション」らしき『燃えよ、プチドラゴン』…気になる!
【about】
Mariko
Owner of Cinema Studio 28 Tokyo
・old blog
・memorandom
【search】
【archives】
【recent 28 posts】
- 1900s (3)
- 1910s (5)
- 1920s (10)
- 1930s (26)
- 1940s (18)
- 1950s (23)
- 1960s (58)
- 1970s (14)
- 1980s (40)
- 1990s (46)
- 2000s (37)
- 2010s (240)
- 2020s (28)
- Art (30)
- Beijing (6)
- Best Movies (5)
- Book (47)
- Cinema (2)
- Cinema award (15)
- Cinema book (58)
- Cinema event (99)
- Cinema goods (15)
- Cinema history (2)
- Cinema memo (127)
- Cinema Radio 28 (8)
- Cinema Studio 28 Tokyo (88)
- Cinema tote (1)
- Cinema Tote Project (1)
- Cinema trip (43)
- cinemaortokjyo (2)
- cinemaortokyo (100)
- Drama (3)
- Fashion (40)
- Food (65)
- France (15)
- Golden Penguiin Award (9)
- Hakodate (6)
- Hokkaido (3)
- HongKong (3)
- iPhone diary (1)
- journa (1)
- Journal (247)
- Kamakura (1)
- Kobe (1)
- Kyoto (18)
- Macau (2)
- memorandom (4)
- Movie theater (209)
- Music (43)
- Nara (15)
- Netflix (3)
- Osaka (2)
- Paris (13)
- Penguin (15)
- Sapporo (3)
- Taiwan (46)
- TIFF (24)
- Tokyo (357)
- Tokyo Filmex (14)
- Weekly28 (10)
- Yakushima (3)
- Yamagata (11)
- YIDFF (6)
- Yokohama (5)
- Youtube (1)