映写室
ピアノ&シネマ2024上映後、会場である横浜シネマジャック&ベティの映写室見学に参加しました。スクリーンのある2階?からさらに謎めいた階段を上がった3階にある。
入ってみると意外と広い!「ジャック」「ベティ」と2つのスクリーンに1つの上映室から投影できるよう、機材が2セット、反対方向を向いて設置してある。靴を脱いで入る必要があり、撮影は可能だがスクリーンに投影している映画が写らないよう配慮を、ということでした。
この右の機械がデジタル上映用、左のはフィルム上映用映写機。デジタルのほうは1日分の上映データを朝にセットしておけば良いらしく「朝にセットし忘れなければ1日触らずに上映できる」そうです。フィルム上映のカタカタカタカタ音も聴けて嬉しかった。だいぶ昔、通っていた京都のアングラ映画館が、映写機が客席の後ろにむき出しに置いてあったので(今考えるとすごい)、あの音にノスタルジーを感じる。
フィルム上映用のリール。バックヤードのかっこよさ。ジャック&ベティの3階、映写室に至るまでの狭い通路の両脇の壁が、懐かしいポスターやチラシが貼ってあったり、サイン色紙やDVD、映画本などが無造作に積まれていて、ひとつひとつ時間をかけて見てみたい魅惑の場所です。
直近の上映スケジュールが貼ってあった。映写技師の連絡用のノートが置いてあったりも。
映写室の壁のチラシのチョイスは、スタッフの皆さんの好きな映画なのかな、と思った。
ジャック&ベティでは時々映写室見学をやっているようなので、そのタイミングに合わせて映画スケジュールを決めるのも楽しいと思います。見学ツアーありがとうございました!
ピアノ&シネマ2024
サイレント映画ピアニスト・柳下美恵さんのGW恒例企画「ピアノ&シネマ2024」に伺いました。私が観たのはEプログラム。キッズプログラムとして、短編を組み合わせたり、映像に手拍子でみんなで音をつけたり、途中でそもそも映画とは?の楽しい説明があったり、上映後には8mmフィルム映写機で実際に映写したり、ジャック&ベティの映写室見学があったり、の盛りだくさんなお楽しみプログラム。鑑賞メモです。
■奇怪な泥棒(1909年/フランス/4分/フェルディナン・ゼッカ監督)
室内にあるモノが人がいないのに無重力で動くミステリーを楽しむ4分。黒い服を着て撮影し、黒の部分が消えることで透明人間がモノを動かしているように見える…という当時の撮影テクニックの解説があった。
■茶釜音頭(1934年/日本/10分/政岡憲三監督)
狸が化けてお寺に忍び込んだけれど捕まった…このままだと狸汁にされちゃう!きゃあどうしよ!なアニメーション。蓄音機から音符が出てきて和尚さんも小僧も踊る。狸たちも東京音頭を踊る。どうしようかな?を「あのてこのて箱」開けて考える。とにかく可愛い。めちゃ可愛い。狸も可愛いし、踊る音符も雲も、何もかもが可愛い。なんて可愛いのー!!政岡憲三は日本のアニメーションの父と呼ばれる人で、ああ、ここから手塚治虫やジブリへアニメーションの歴史が紡がれていったんだなぁ…と感無量。とにかく狸が…狸が可愛い!
■モダン怪談100,000,000円(1929年/日本/15分/斎藤寅次郎監督)
駆け落ち同然で山に心中にきたカップルが、その山に埋蔵金が埋まっている噂を知って…という物語。山でキャンプみたいなことをしてるけど、男がいかにも頼りない風情でキャンプもおままごとみたいに見える。カップルに悲壮感がなく、どこかカラッとしているのがモダンだな、と思いました。
■キテレツ発明家(1923年/日本/11分/ヒュー・フェイ監督)
タイトル通りキテレツ発明家のドタバタ劇。部屋の中にたくさん紐が吊るしてあって、ベッドから引っ張るだけで調理された朝食が食べられ、身支度も順番に紐を引っ張ると整えられる。いや、その紐を仕込む暇があるなら、普通に身支度したほうが早いね?と思ってしまうけれど、そう思わないのが発明家脳なのだろう。当時の車が鉄でできていた事実を利用した巨大磁石で車にくっついて移動するのは賢いアイディア。でもあんな強力な磁石、周囲の様々なモノの正確な稼働に影響を与えてしまいそう。主演ハリー・スナップ・ポラードはチャップリンを薄めたような顔の俳優で、表情は動かず、スンッとした表情でおかしなことをしでかすのが面白いタイプの喜劇俳優だな、と思った。
ピアノ&シネマ2024は5/10(金)まで連日開催中です。
https://www.jackandbetty.net/cinema/detail/3455/
Weekly28/ピアノ&シネマ2023御礼/金澤文鳥
5月2日、横浜ジャック&ベティにて柳下美恵さんのピアノ&シネマ2023、上映後のトークゲストとして参加させていただきました。
終了後、(私と同じく)一番好きな監督はエルンスト・ルビッチ!という方に声をかけていただいたり(同志よ!)、温かい感想もいただき、貴重な機会をくださった柳下美恵さん、素敵な観客の皆さま、ジャック&ベティスタッフの皆さま、本当にありがとうございました!
上映前、ジャック&ベティの3階(バックヤード、映写室がある)に入らせていただいたのですが、貴重な映画資料が無造作にざくざく置かれていて、歴史ある映画館のかっこよさ満載で、何日でも居られそうな場所でした。
鑑賞したDプログラムを振り返り。
『磁石警察』(1902年)
19世紀にパリで人気を博したサーカス団・ビュイック座の組体操のような動きを撮ったコメディ。映画の誕生(1895年)から数年後のこんな超短編が120年経った現在も、遠い国で大事に上映されていることが素敵。
『キートンの即席百人芸』(1921年)
当時最先端の撮影技術を駆使しバスター・キートンが何役も演じ分け、多彩なキートンがスクリーンに同時存在する。1921年にこれを撮るなんて、気が遠くなるような緻密で複雑な撮影だっただろうと想像すると、メイキングを観たくなる。
バスター・キートンの顔ファン(顔が好き)なので、女性、老人、猿!といろんなキートン・コスプレを楽しめるし、目鼻立ちがくっきりした顔だからこそ何に扮してもキートンらしさが残るのが面白い。女性役を演じるメイクを施したキートン、坂本龍一にそっくりでは…?考えてみれば同じ系統の顔立ちかも。
『花嫁人形』(1919年)
ルビッチ!常に新しい発見がある映画で、トークのためしばらくオッシちゃんのことを考えていたせいか、上映中はオッシちゃん以外のことを考えていた。
・ルビッチは俳優出身で、映画監督になってからも演出は言葉で伝えるのではなく自分で見本を演じてみせたと読んだので、あのキュートな馬の演技もルビッチが演じてみせたのかな。馬たち、ちょっとした脚の曲げ方が表情豊か。
・女嫌いの男性が遺産相続のため結婚の必要に迫られ考えたアイディアが「人形と結婚する」こと。1919年、「女嫌い」はどう表現されるの?とインサートの字幕を読むとmisogynist とあり、こんなケースで使う単語なのか。今ならmisogynist と一括りにせず、表現のバリエーションがありそうだけれど。
・『花嫁人形』はギリシャ神話『ピグマリオン』にヒントを得た創作で、脚本はルビッチ。元ネタがあるにせよ、男女が結婚することが当然の前提として展開する物語が多い時代の映画において、女性が苦手で結婚を強要されてしんどい登場人物なんて斬新で、ルビッチ、つくづくモダーンな人と思う。
・ルビッチ映画についてのレビューに、ゴージャスな映画だが不倫ものは観ていてしんどくなると書かれているものが時々あり、遠い昔につくられたフィクションだとしても観る側の感覚は日々変化しているから、そんな感想を抱くのも自由と思う。そして結婚する/しない、異性と/同性と、三次元とは限らない/二次元かも?などパートナーシップの多様化や、誰かのパートナーシップ形成への他者の介入を良しとしない傾向が進む中、いずれ『花嫁人形』も、女性嫌いな男性に金銭を条件に結婚を強要するなんて個が尊重されていない、観ていてしんどいって感想を抱く人が増えてくるのかもしれない。
・そうなると何かと「そろそろだね」「もうそろそろだよ」と若い女性が婚姻を手配されがちな小津映画なんて大半が観ていてしんどいカテゴリーに入る未来がくるのかな。
・数年前だけれど愛の対象や形は様々で、誰も愛してなくても良い現代なら『花嫁人形』の彼も生きやすいのでは?と思いながら読んだ記事がこちら。
批判もあったが「勇気付けられた」 初音ミクさんとの“本気の挙式”を終えて
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1811/21/news031.html
トーク中に紹介させていただいた、私がルビッチにハマるきっかけになった、ジャン・コクトーが内装を手掛けたパリの映画館 Studio28 の写真を発掘しました。2007年撮影のため、現在は少し変わっているかもしれません。
モンマルトル、メトロ Blancheが最寄り。ジャン・ジュネの映画『アメリ』で有名になった界隈にある。
BAR&JARDIN Accès Libreとあり映画を観なくても、併設のバーと庭には自由に入れる。
エントランス。モノクロ時代のフランス映画で、このエントランスがちらっと映るシーンがあったけれど、思い出せない…。ロメールだったか、ユスターシュだったか。
その日の上映作品紹介。当時、ジェーン・バーキン監督『Boxes』が封切りだった。
エントランス内側にあるジャン・コクトーのサイン。
チケットを買い、上映待ちのロビーの風景。1928年オープンの歴史ある映画館だから、ロビーの壁が写真や資料で映画博物館のよう。
スクリーンは1つだけで、内装はドリーミー!壁と天井が紫、緞帳と椅子が赤、キノコのシャンデリア!私が観た『ウィンダミア夫人の扇』も20年代につくられたもの同士、場の雰囲気に合っていたけれど、非現実的な内装だから『花嫁人形』もすごく似合いそう。
庭は白い天幕のような布がかかっていて、フランスの映画スターがたくさん!
テーブルも俳優の写真のコラージュ。メニューはフィルム缶に貼ってある。当時は映画館とバーをスタッフが兼任していて、声をかけると飲み物を持ってきてくれた。
https://www.cinema-studio28.fr/
【最近のこと】
ジャック&ベティ、川畑あずささんデザインの黄色いポスターがあちこちに貼られていて、パッと目を惹く鮮やかさで素敵でした。
川畑あずささんはCinema Studio 28 Tokyo のデザイン担当。このサイトのすべてのデザインを手掛けていただいています。
あずささんにいただいた金沢土産の金澤文鳥(文鳥パッケージの羊羹)、めちゃくちゃ可愛い。鳥類の親近感でうちのペンギンズも色めきたっている。instagramで#金澤文鳥 で検索すると、金澤文鳥とリアルな文鳥を一緒に撮っている写真がたくさんあって眼福でした。
【お知らせ】柳下美恵のピアノ&シネマ2023
お知らせです!
4/29〜5/12の2週間に渡り、横浜シネマジャック&ベティで開催される『柳下美恵のピアノ&シネマ 2023』、4プログラム9作品の中のDプログラム(バスター・キートン『キートンの即席百人芸』、エルンスト・ルビッチ『花嫁人形』)の5/2(火)上映後のトークに登壇させていただきます。
映画について人前で話すことに慣れていないけれど、なにしろ!最愛の!エルンスト・ルビッチ!のためなら!という気持ちです。
どんな人生を生きる人でも、自分がのびのびといられて、自分も気づかなかった魅力を引き出してくれる相手との出会いは貴重なもの。監督エルンスト・ルビッチ&主演オッシ・オズヴァルダの組み合わせは、わぁ!ふたりが出会えて良かった!とウキウキする多幸感に溢れています。とりわけ『花嫁人形』は100年後の観客すらニッコニコにさせる会心の一撃。冒頭からあまりのオシャレさとキュートさに打ちのめされることでしょう。
素敵なチラシは28のデザイナー・川畑あずささんによるもの。Dプログラム、ルビッチの名前の下に自分の名前があるのを見て、きゃあああああ推しの名前の下に私が….なんと尊い…と高揚しました。
そんなわけでGW、横浜で!詳細はこちらです。
https://www.jackandbetty.net/cinema/detail/3150/
【本日更新】moonbow journey 010 パイレーツ・ロック
本日更新しました。
移動式映画館moonbow cinemaの軌跡を追う連載moonbow journey 第10回。物語の殆どが船上で繰り広げられる映画『パイレーツ・ロック』に似合う上映会場を東京から千葉、神奈川まで海の近くのレンタルスペースを探したみづきさんの記録です。
どこでも、手のひらのスマートフォンでも気軽に映画を観られる現在だけれど、こんな場所でこんな映画を観られたなら、一生宝物にしたい思い出になるでしょう。
晴れやかな海辺の写真とともに、どうぞお楽しみください。
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