ピアノ&シネマ2024
サイレント映画ピアニスト・柳下美恵さんのGW恒例企画「ピアノ&シネマ2024」に伺いました。私が観たのはEプログラム。キッズプログラムとして、短編を組み合わせたり、映像に手拍子でみんなで音をつけたり、途中でそもそも映画とは?の楽しい説明があったり、上映後には8mmフィルム映写機で実際に映写したり、ジャック&ベティの映写室見学があったり、の盛りだくさんなお楽しみプログラム。鑑賞メモです。
■奇怪な泥棒(1909年/フランス/4分/フェルディナン・ゼッカ監督)
室内にあるモノが人がいないのに無重力で動くミステリーを楽しむ4分。黒い服を着て撮影し、黒の部分が消えることで透明人間がモノを動かしているように見える…という当時の撮影テクニックの解説があった。
■茶釜音頭(1934年/日本/10分/政岡憲三監督)
狸が化けてお寺に忍び込んだけれど捕まった…このままだと狸汁にされちゃう!きゃあどうしよ!なアニメーション。蓄音機から音符が出てきて和尚さんも小僧も踊る。狸たちも東京音頭を踊る。どうしようかな?を「あのてこのて箱」開けて考える。とにかく可愛い。めちゃ可愛い。狸も可愛いし、踊る音符も雲も、何もかもが可愛い。なんて可愛いのー!!政岡憲三は日本のアニメーションの父と呼ばれる人で、ああ、ここから手塚治虫やジブリへアニメーションの歴史が紡がれていったんだなぁ…と感無量。とにかく狸が…狸が可愛い!
■モダン怪談100,000,000円(1929年/日本/15分/斎藤寅次郎監督)
駆け落ち同然で山に心中にきたカップルが、その山に埋蔵金が埋まっている噂を知って…という物語。山でキャンプみたいなことをしてるけど、男がいかにも頼りない風情でキャンプもおままごとみたいに見える。カップルに悲壮感がなく、どこかカラッとしているのがモダンだな、と思いました。
■キテレツ発明家(1923年/日本/11分/ヒュー・フェイ監督)
タイトル通りキテレツ発明家のドタバタ劇。部屋の中にたくさん紐が吊るしてあって、ベッドから引っ張るだけで調理された朝食が食べられ、身支度も順番に紐を引っ張ると整えられる。いや、その紐を仕込む暇があるなら、普通に身支度したほうが早いね?と思ってしまうけれど、そう思わないのが発明家脳なのだろう。当時の車が鉄でできていた事実を利用した巨大磁石で車にくっついて移動するのは賢いアイディア。でもあんな強力な磁石、周囲の様々なモノの正確な稼働に影響を与えてしまいそう。主演ハリー・スナップ・ポラードはチャップリンを薄めたような顔の俳優で、表情は動かず、スンッとした表情でおかしなことをしでかすのが面白いタイプの喜劇俳優だな、と思った。
ピアノ&シネマ2024は5/10(金)まで連日開催中です。
https://www.jackandbetty.net/cinema/detail/3455/
手書きアルファベット
山の上ホテル、前身「佐藤新興生活館」の設計図が展示されていた。
1930年代の設計図、手書きアルファベットはアールデコ調で、サイレント映画の中間字幕の飾り文字みたい。
さっぱりと書いても意味は通じるところ、あえてこう書く心意気。
京都の料亭で食事した際、飾り障子の話題で女将さんが言った
「最近の職人さんは余計なことしはらへん。余計なことするのが職人やのに」って言葉を思い出した。
https://www.yamanoue-hotel.co.jp/concept/
Weekly28/ルビッチ予習復習/Weekly28ロゴ
ゴールデンウィーク!
ここのところ強烈な寒暖差・気圧差に身体をやられ気味で、今朝ようやく復調してきたところ。新緑の季節、楽しむ!
下の投稿でお知らせした横浜ジャック&ベティのイベントに向け、エルンスト・ルビッチ予習復習のため、Amazon Prime Videoで数本鑑賞。ゴロゴロ寝転びながらルビッチを観られるなんて便利な時代になったものですね!と令和の映画好きの特権を享受しながらも、やっぱりルビッチは映画館のスクリーンで観てこそ、独特のルビッチ・オーラを堪能できるものだなぁ、とも思いました。
けれど未知の監督だけれど、ちょっと観てみたいという方には気軽にトライできる配信サービスは有り難いもの。私が観た数本について、メモを残してみます。それぞれ、タイトルをクリックするとAmazonリンクに飛びます。
互いのものを盗み合う泥棒仲間のガストンとリリーは、パリで化粧品会社を経営する女社長マリエットに取り入って彼女の財産を盗むが、ガストンに恋心を抱くマリエットは彼らの正体を知ったうえで逃がすのだった。
もし人生最後の映画を選べるなら『極楽特急』でお願いします、と長らく思ってます。オープニングに流れる主題歌はメロディも歌詞も素敵だから葬儀で流してほしいです(遺言)。うっとりする衣装、粋で軽快なコメディ、幸せなエンディング。ルビッチ俳優の中で最推しであるハーバート・マーシャルが主演であることもポイント高い。ハーバート・マーシャル、お顔だけ見ると彼より男前はたくさんいるだろうけれど、立ち居振舞いの美しさにおいて、これほどルビッチの世界に似合う人がいるでしょうか。『極楽特急』は2人の女性に挟まれ困り顔、下がり眉ハーバートをたっぷり堪能できる。
英国の外交官の妻マリアは、多忙の夫の目を盗んでパリに遊びに行き、魅力的な英国紳士アンソニーと知り合う。ところが、彼が夫の知り合いだったことから気まずい三角関係が始まるのだった。「生活の設計」に続く、ひとりの女と2人の男の奇妙な恋愛模様が見所。
マレーネ・ディートリッヒが唯一出演したルビッチ映画。先に『極楽特急』を見直してみてガストン(ハーバート・マーシャル)は素敵だけれど、女社長マリエット(ケイ・フランシス)の人物造形が隙だらけな点が気になり、泥棒が付け入るための隙と思えば違和感ないものの、旦那が遺した会社を継いだものの経営のことは何もわかりませーん!の態度のアホっぽさが若干引っかかり、その後『天使』を観るとディートリッヒ演じるマリアの格好いいこと!大人!惚れる!と人生最後の映画は『天使』かも?と翻意しそうになったものの、どこまでも大人の艶を感じさせる演出が最後まで続き、こんなの人生最後に観てしまうと、いつか『天使』のような大人になりたかったのに、憧れただけで自分の人生が終わってしまう…と打ち拉がれそうだから、やっぱり『極楽特急』に限るな、と心を戻した。
限りなく生活感のないディートリッヒ、他の監督の映画では孤高の女として描かれがちなところ、『天使』では、たくさんの可愛らしい表情を楽しむことができる。物語としてはディートリッヒを巡る男ふたり(夫/夫の古い友人)との三角関係だけれど、夫を演じるハーバート・マーシャルの優美さといったら『極楽特急』以上なものだから、ふたりのどっちを選ぶって?夫に決まってるでしょ!愚問ですね!以上!という気持ちになることだけが難点。
列車の中で知り合った画家のジョージと劇作家のトム、広告代理店に勤務する美人ジルダは、お互いに性的感情は抱かぬという紳士協定に従って同居生活に入るのだが…。コミカルな三角関係がルビッチ得意の洗練されたユーモアと共に展開する。
男性ふたり、女性ひとりの三角関係の設定が後にヌーベル・ヴァーグにも影響を与えたと言われている映画で、例えばゴダール『女は女である』やトリュフォー『突然炎のごとく』が該当するのかな。揺れる関係の力学という点では確かにそうかもしれないけれど、『生活の設計』のジルダという女は、アンナ・カリーナやジャンヌ・モローが演じた彼女たちより、ずっと以前に誕生していた、ずっと先進的な女ではなかろうか。「紳士協定」のキラーワードを都合よく使いこなし、自分で決めた掟をあっさり破る感情に素直な女。芸術の母でありたいと男を煽り、結果として確かに芸術の母になる女。何も要求しないのに、すべてを手に入れる女。それでいてコケティッシュで憎めない女。絶世の美女!運命の女!というムードのないミリアム・ホプキンスが演じるからこそ、ジルダという女の軽やかさが際立っている。
ジルダがあまりにモダーンな女で、「紳士協定」の重要要素である「ノー・セックス!」のセリフが何度か登場するので、未婚の女が発する言葉として1932年にはあまりに過激ではないか?と思ったけれど、ハリウッドのヘイズ・コードができたのは1934年だから、この映画はギリギリセーフだったのかな。
他にも数本観たけれど、長くなりそうなので、ひとまずこのあたりで。ルビッチらしさを堪能できる3本として、ルビッチ未見の皆さまにもおすすめです。
ジャック&ベティでの上映、詳細はこちら
https://www.jackandbetty.net/cinema/detail/3150/
diaryを毎日更新することは現在なかなか難しいけれど、せめて週に一度は記録がてら書こう!の意気込みのもと、昨年からWeelky28と称しながらも、なかなかの気まぐれな頻度の更新っぷりだけれど、デザイナー・あずささんにお願いしていたWeekly28のロゴが完成し、めちゃくちゃ可愛いので、このロゴを使いたくて更新頻度が増えそうです。映画館にいるペンギンズ…!!
今年に入ってから観たものの書いていない映画についても、振り返って記録していこうと思っています。
5月は、『TAR/ター』が楽しみ…!
Design for living
いかに動画配信サービスが充実しようと、配信されない映画は山ほどあるもので、定期的に観たくなるルビッチやオリヴェイラ、ジョニー・トーなどはポスト投函式レンタルサービスでDVDを借りる。仕事が慌ただしくよれよれになって帰宅した日、『極楽特急』とあわせて『生活の設計』も借りていたことを思い出し、再生するの図。
ルビッチ映画って、シネマヴェーラで特集上映されるとずいぶん前から予定して万難を排して駆けつけ、DVDで借りて観る時もルビッチ様!!!と、好きなあまりこちらも冷静ではない、テンションの上がった状態で観ることが多いけれど、この日はなにしろ疲れで頭が働かず、全身からっぽの状態で浴びるルビッチは、普段以上に染みた。
ふたりの男とひとりの女。女の名前はジルダ。ジルダ、ふたりの男のどちらも選べず、私たちはセックス抜き、これは紳士協定よ!と自ら提案するものの、あっさりそれを覆し、だって私、紳士じゃないもの〜と、いい女ふうによろめいてみせる。さじ加減ひとつで、だらしない非常識な女となるところ、どうにもこうにもキュートでコケティッシュ、ジルダだもんしょうがない、にまにま目が追いかけてしまう可愛い女が奇跡のバランスで成立している。
ルビッチの魔法とミリアム・ホプキンスの魅力の賜物で、自由で新しい女は、自由で新しい男の目から生まれるんやなぁ…と気持ちよくなったところで、エンディングまで体力が続かず、寝落ちした。
Trouble in paradise
寒いところに行った疲れがどっと出て、連休ほとんど外に出なかった。借りていた『極楽特急』のDVDを観る。久々のマイダーリン!ガストン・モネスク様!あいかわらずエレガント。ハーバート・マーシャルの身のこなしの美しさよ。
『極楽特急』を観るたび、オープニングの曲、メロディも歌詞も完璧でうっとりする。目下、自分の葬儀で流してほしいから遺言に書いておかなくちゃソング第1位である。
ジャン・ヴィゴ短編・中編
イメージフォーラムにて。ジャン・ヴィゴ特集も終盤。短編・中編3本セット上映へ。
『ニースについて』(1930年/21分)
http://www.ivc-tokyo.co.jp/vigo/#page11
ヴィゴの監督第1作となる短編作品。南仏ニースの街並み、バカンスに興じる富裕層の生態と庶民とを交差させ、エネルギッシュに活写する映像スケッチ。
ジャン・ヴィゴのニース紀行。海辺の椅子に優雅に腰掛ける富裕層と踊りまくる庶民。若い女性が着せ替え人形のごとく次々披露する30年代らしい装いにうっとりしていたら、最後にヌードになったので意表をつかれる。今週、月曜シネサロンで観た記録映画での街の切り取り方と比較すると、記録映画とフィクションの目的の違いがあるにせよ、ジャン・ヴィゴの視点は「作家性」とはこういうもの、の見本のように思われた。
『競泳選手ジャン・タリス』(1931年/10分)
http://www.ivc-tokyo.co.jp/vigo/#page10
監督第2作。1931年、400メートル自由形で世界新記録を樹立した水泳チャンピオン、ジャン・タリスの強さの秘訣を分析するスポーツ・ドキュメンタリー。
ジャン・タリスの水泳教室。目が歓ぶ10分間。水中の微笑みと、ずっと水着姿だったのに最後にクラシカルな装いに着替え去ってゆくジャック・タリスにギャップ萌え。ジャン・ヴィゴは動くものの魅力を捉えるのがとにかく上手。「活動」写真の申し子。
『新学期 操行ゼロ』(1933年/49分)
http://www.ivc-tokyo.co.jp/vigo/#page9
監督第3作。ヴィゴが描く小さな革命。猛烈なアナーキズムと自由で詩情に満ちた映像表現。そのスキャンダラスな内容から12年近く公開禁止となった。
革命の夜、寄宿部屋で旗を掲げ、声明を読み上げ、塊となって動く少年たちの姿がそのまま油絵になりそうで、フランス革命から現在のmouvement ‘Gilets jaunes’(黄色いベスト運動)まで脈々と流れるレジスタンスの血!と、妙に圧倒された。古いフランス映画には時々この学校で学びたいと思わせる学校が登場するけれど、現時点での学びたい学校Best3は
・ジャック・タチ『ぼくの伯父さんの授業』の学校
・トリュフォー『思春期』の学校
・ジャン・ヴィゴ『新学期 操行ゼロ』の学校
であることを、ここに発表しておきます。勉強する気ゼロ!
映画ポスター モダン都市風景の誕生
散歩がてら観た展示。湯島界隈、アーツ千代田3331にて。映画資料収集家・御園京平氏のコレクションが旧蔵していた「みそのコレクション」より、1910年〜30年代の映画ポスターを展示する「映画ポスター モダン都市風景の誕生」の展示へ。
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/chiyoda2018/#section1-1
現在のように映画情報に気軽にアクセスできるわけではなかっただろう当時の映画ポスターは、そのものが貴重なメディアであって、俳優や監督の豪華さ、製作費の贅沢さをこれでもかとすみずみまでアピールする情報量の多さで、展示数は多くはないながら、1枚じっくり眺めるだけで未見の映画への期待値がむくむく高まる。会場に流れていた現存しない古い映画館の荘厳な宮殿のような内装。清水宏『家庭日記』でこの時代の映画館が映る場面があって、内装に見惚れたことを思い出した。
映画ポスターはカラフルだけれど、映画自体はモノクロだから、ポスターに使われる様々な色は、資料に基づいて描かれたのか、デザイナーや画家の想像した色なのか、ということを、あまり事実に迫らずにぼんやり妄想するのが好き。モノクロ映画の愉しみのひとつは、塗り絵しながら鑑賞できることで、あの素敵なドレスは何色なんだろう…口紅の色は…と、自分好みに着色。例えばルビッチ『生きるべきか死ぬべきか』でキャロル・ロンバードが着る裾にファーがあしらわれた印象的なドレスは、私の中ではシルバーグレーかアイスブルーと決めつけて観ているけれど、当時の映画ポスター画像を見ると、赤〜オレンジで描かれていることが多く、思てたんとちゃう!と心がざわつく。というのも、ただ私が寒色好きで、好きな映画は好きな色に溢れていてほしいという勝手な願望によるものだけれど。
そんな情報量の多いポスター群の中で、ひときわモダーンだったのは清水宏『彼と彼女と少年達』のシンプルでグラフィカルなポスター。新人・上原謙と書かれているのにも驚く。1935年の映画だから初々しい上原謙なのだろうけれど、誰にでも新人と呼ばれる時代があったのだな。
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