Noël Coward
ルビッチ「生活の設計」について調べるため、「ルビッチ・タッチ」を読むと、「期待されるにじゅうぶんな企画でありながら、どこかでつまずきを見せた作品」「今回はいつもの妙技の再現はならなかった」「俳優たちもそれぞれに魅力はありながらも、ラント夫妻とカワードのトリオとくらべれば、見劣りするのは是非もなかった」とあり、ノエル・カワードの戯曲の映画化で、舞台の方は大好評を博していた、と書かれているのだけれど、あの映画の出来をもって、舞台版の魅力には及ばないなんて、舞台の方はさぞかし面白みの最上級に位置していたのだろうか。
名前はしょっちゅう耳にしながら、ノエル・カワードについて詳しく知らない、と思ったので、簡単に調べてみると、wikipediaだけでもはや面白い。
「人生はうわべだけのパーティー」と考える彼は、真剣に人を愛したり、真剣に国を愛したり、真剣に人生に悩んだりすることを極端に嫌った。シリアスな人生劇より、洗練された喜劇を好んだ。
第二次世界大戦が始まると、「戦争は憎しみの舞台。芝居という魅力の舞台に立つ者には最も不向きなものだ」とカワードは発言し、戦争支持の風潮に背を向けた。そのため、非国民のレッテルを張られ批判された。その時、チャーチルは「あんなやつ、戦場に行っても役に立たない。一人ぐらい恋だ愛だと歌っているヤツがいてもいい」と旧友を弁護した。
ルビッチ・タッチとも相性の良さそうな人だこと。私好みの思想の人である(深刻なのキライ)。チャーチルの弁護もいい。20年代のファションにも影響を与えたそうで、いくつか画像を見てみても洗練されており、若い頃も年を重ねてからもフォトジェニック。俄然、カワードと同時代にタイムスリップし、30年代の観客として「生活の設計」を観てみたい妄想に駆られる。30年代の舞台を観ることはできなくても、30年代の映画は観るチャンスがあるのは、複製芸術の素晴らしいところだけれど。