5 Best movies 2016 / Part1

 

春節も立春も過ぎ去り、2017年もすっかりスタートして久しいですが、Best moviesを書き、きちんと2016年にサヨナラの手を振りたいものです。

 

2016年、後半はサイトのオープン準備に勤しんでおり、特にweb構築を自分ですると決めてからの11月以降の記憶がない。メモを見ると11月、12月に20本ほど観てるっぽいけど、あのスケジュールの中どうやって時間を捻出したのか記憶が朧げすぎて狐につままれた気分。そんな理由もあって、ここ数年で最も鑑賞本数は少なかったけれど、覚えている範囲では1本1本の濃度は濃かった。

 

Best moviesを選ぶ基準は人それぞれあるだろうけれど、新作・旧作の区分はせず、2016年に初めて観た映画という定義で選びました。そう決めないと年1度は観るルビッチが永遠にBestを占拠し続ける事案が発生することと、新作・旧作を分ける理由づけが希薄で、日本公開がたまたま2016年で本国ではずっと前に製作されていることもあったり、永らく観たかった映画とリバイバルでようやく出会ったり、ということも、よくあることだからです。

 

Best moviesは5本選びました。順位はなく、つけられるはずもありません。

 

まず1本目、「ディストラクション・ベイビーズ」真利子哲也監督。

 

公式サイトより。

 

愛媛県松山市西部の小さな港町・三津浜。海沿いの造船所のプレハブ小屋に、ふたりきりで暮らす芦原泰良と弟の将太。日々、喧嘩に明け暮れていた泰良は、ある日を境に三津浜から姿を消す──。それからしばらく経ち、松山の中心街。強そうな相手を見つけては喧嘩を仕掛け、逆に打ちのめされても食い下がる泰良の姿があった。
街の中で野獣のように生きる泰良に興味を持った高校生・北原裕也。彼は「あんた、すげえな!オレとおもしろいことしようや」と泰良に声をかける。こうしてふたりの危険な遊びが始まった。やがて車を強奪したふたりは、そこに乗りあわせていたキャバクラで働く少女・那奈をむりやり後部座席に押し込み、松山市外へ向かう。その頃、将太は、自分をおいて消えた兄を捜すため、松山市内へとやってきていた。泰良と裕也が起こした事件はインターネットで瞬く間に拡散し、警察も動き出している。果たして兄弟は再会できるのか、そして車を走らせた若者たちの凶行のゆくえは──

 

ロードショーで見逃がし、早稲田松竹で捕まえてみると、「ヒメアノ〜ル」との2本立て。間違いなく2016年最もハイカロリーな2本立て、2本の映画の中で一体何人が暴力を受けたのだろう、という暴力映画たち。

 

「ヒメアノ〜ル」が最後、彼が人を殺す動機が明かされるのに対し、「ディストラクション・ベイビーズ」は最後まで泰良が暴力を振るう理由は明かされない。動機なき純粋なる暴力。何の説明もなく冒頭から日常の一コマのようにナチュラルに暴力が映され、周囲を巻き込み加速する。

 

もちろん暴力行為を支持も称揚もしないけれど、モラルは観ている間は完全に傍に追いやり(追いやることができなければ、最後まで観るのは辛いのでは)、ひたすら描かれるただただ純粋な暴力は、サバンナを駆ける野生動物たちの無駄のない動きや、オリンピック選手の筋肉をうっとり眺める時のような、不思議な陶酔をもたらすものがあった。

 

泰良(柳楽優弥)、動物として大平原に産み落とされていたなら違和感もなかっただろうに、人の形で松山に産み落とされてしまって、あなたも大変ね、と思わせる不穏な説得力。その野蛮かつ優雅な佇まいに、小悪党ども(菅田将暉、小松菜奈)が惹きつけられ内なる暴力を開発されていくさまも、弟(村上虹郎)に同じ血が流れていることを示唆する終わりも、消えたはずの泰良がまた地面から生えてくるような土着の匂わせかたも、すべて祭りの光と残り香に混じってこちらに届き、向井秀徳の音楽が流れる中、エンドロールを眺めながら嚙みしめる興奮は2016年随一のものだった。

 

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