<号外>ホン・サンス・ニュース

 

眠って起きたら、ホン・サンス新作「On the beach at night alone」、主演のキム・ミニがベルリンで女優賞!観たい!これで日本での公開に弾みがついてほしい!

 

ホン・サンス&キム・ミニといえば、「今は正しくあの時は間違い」での監督&女優コンビであり、去年の年明けから韓国でその不倫騒動がゴシップ欄を賑わしたそうで。その時期、私の日記に「ホン・サンス キム・ミニ」で検索をかけて辿り着いたらしき人がちらほらいて、あの映画、配給決まったのかな?また観たいナーなど、呑気に考えてたら、事情が違ったらしい。

 

監督、私生活が見えない人だったので、妻子がいることも騒動で初めて知った。他人の色恋に自分の倫理を振りかざしてあれこれ言うのは野暮だから、ファンとしては良い映画が続々とまた生まれるといいなぁ…程度の感想しかない(思い余ったホン・サンスが心中!などのほうが、新作を期待できなくなって困る)けれど、お?!と思ったのは、家に残された監督の日記に、赤裸々な心情が綴られていたという点。

 

「自由が丘で」公開時、東京藝大で開催された監督の講義を聴講した際、主演の加瀬亮さんが飛び入り参加して、脚本は撮影日の朝に配られ、直前まで監督は書いているけれど、簡単なメモ、プロットだけというものではなく、きちんとセリフも書かれており、こんなに美しい脚本は今まで見たことがない、というものだったとおっしゃっていたのが印象的で、日々更新される美しい脚本…読みたい!と思った心が、ゴシップにおいては「事実はどうでもいいけれど、日記…読みたい!」との願いを生んだ。日記でもありホン・サンス映画の脚本のような文章なんじゃないかしら。

 

昨年の東京国際映画祭では「あなた自身とあなたのこと」を無事鑑賞。キム・ミニ主演ではないものの、これまでの映画とのトーンの違いを感じた。ホン・サンス映画って、何故そうなるの?と、男性側にとって都合がいい展開のものが多かった印象だけれど(例えば「次の朝は他人」のラスト。いよいよ二人の関係が始まるのかと思えば、男が「これから一人で強く生きていくんだぞ!」と言い、女が唖然とするかと思えば「ええ…わかったわ…!」と全面同意していて、観てるこちらがむしろ唖然)、「あなた自身とあなたのこと」は、謎めいた女に男性がメロメロ翻弄される映画だった。そのメロメロ度合は、こんなの大画面で見せられてどんな顔して見ればいいの?と当惑するレベル、付き合い始めの男女のベッドの中の睦言レベルに犬も喰わない、メロメロとろとろしたもので、ゴシップがどこまでどうなのか知らないけれど、ホン・サンスはすっかり恋をしており、すべてを投げ打ってでもあなたと共にという熱さで、私生活が作品にそっくり出る人なのかな…と、妄想した。私生活で何があろうと作風は変化しない人もいるだろうけれど、私はこれぐらい素直に変化する人の方が信用できる。そして新作は家庭のある映画監督と不倫関係になる女優の物語らしい。

 

見た目もずいぶん変化。私が聴講した際のホン・サンス(こちら)は、可愛い熊のような風貌で、着るものに気をつかっているふうでもなかったけれど、最近のホン・サンスといえば、こんなことになっている(こちら)!痩せ、髪を切り、なんだか色っぽくなって…ちょっと奥田瑛二みたい。

 

可愛い熊だった頃の監督を懐かしく、全身GAPみたいな感じだったのにね、と思い出してみると、「ラブ・アゲイン」でライアン・ゴズリングが、中年男を見た目から変えていくレッスンの際、GAPでいいや…と尻ごみされ、「be better than GAP!」とハッパかけるシーンをまざまざと思い出した。恋に目覚めたおじさまが変化する時、GAPを捨てて奥田瑛二化するというルートがあることを、ホン・サンスは教えてくれる。

 

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