運動神経

 

鈴木清順監督の訃報、寝て起きてもピンとこないまま、Los Angeles支部・りえこさんからいただいた「TIME AND PLACE ARE NONSENSE」(by Tom Vick)というアメリカの鈴木清順研究書をぱらぱら眺めると、図版が多くて楽しい。

 

最後の方に差し掛かると、チャン・ツイイーの写真が出てきて、「オペレッタ狸御殿」のヒロインだったね、と久しぶりに思い出した。監督の遺作になったから、最後のヒロインでもある。この映画、前売りを買ってウキウキしていたのに東京生活が忙しすぎて上映劇場を調べる余裕すらなく見逃し、流れ流れ辿り着いたパリで開催されたレトロスペクティブでようやく観た。あの1度しか観ていないからほとんど忘れてしまっているけれど、チャン・ツイイーの素敵さだけは覚えている。チャン・ツイイーのファンなので、清順映画で、まさかの着物姿のツイイーが観られるとは、創作和食なのか創作中華なのかもはやわからないけれど、とにかく美味しくいただきました!という食後感。

 

チャン・ツイイーはもともと舞踏の人だから、体幹がビシッとしており、私にとってツイイー映画を観る楽しみは、体幹がビシッとした女の動きの美しさを堪能することにある。どういう経緯でキャスティングされたのか知らないけれど、クラシカルな狸御殿を現代に復活させるというのに(大映映画でいくつも狸御殿映画があって、もはや日本映画の1ジャンルだと思う)、日本の女優ではなく、わざわざチャン・ツイイーを選ぶなんて…監督!私と好みが同じですね!と駆け寄って手を取りたい気分(迷惑)。

 

ないものねだり、ということなのだろうけれど、運動神経の良さそうな女優が好き。最近だと断然、広瀬すずちゃん。考えてみれば、清順監督のヒロイン、「河内カルメン」の野川由美子も、「ピストルオペラ」の江角マキコも、その他その他ほとんど運動神経良さそうな、動きにもたつきがない女ばかり。江戸っ子らしく、小股の切れ上がった女が好きだったのかな。

 

…と、妄想は止まらないし、やっぱり監督が亡くなったのはピンとこない。生きてるうちから、主食:霞って感じだったもの。

 

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Mariko
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