牯嶺街、傾向と対策
角川シネマ有楽町でかかる最後の週末だったので、日曜朝、「牯嶺街少年殺人事件」を観てきた。
前売を持っていたので前日「ジャッキー」を観にシャンテに行った帰りに座席指定して引き換え。4時間あるので通路側の席から埋まっており、前から3列目の通路側を確保。前すぎるかな?と思えば、視界いっぱいにスクリーンが広がるベストポジションだった。いつも前方の席は空いていることが多いけれど、前方までみっちり満席。日曜10時50分から(昼食時間も無視して)4時間休憩なしの映画を観るなんて…みなさんお好きですねェ…私も…。
前回、張震の舞台挨拶つきで観た後、次に観るまでに復習をしようと考えていたので、前日夜に付け焼刃っぽく復習。まずパンフレットの「あらすじ」「登場人物相関図」を改めてじっくり読む。登場人物が多く、みんな制服を着ているので、初見ではなかなか顔と名前が一致しないと思う。もうここは受験勉強?ぐらいの真剣さで復習。「あらすじ」と「登場人物相関図」を往復しながら、脳内で再上映してみて、誰と誰が対立関係、誰と誰が同じグループ…と矢印やグルーピングを頭に叩きこむ。
その後、パンフレットにある「牯嶺街少年殺人事件の歴史的背景」を精読。この映画の背景にある台湾の歴史のとってもわかりやすい解説、4ページみっちり。
それから本棚にあった北京で買ったエドワード・ヤン映画を網羅的に解説した本をざっと読む。1本1本みっちり解説してくれている。ふむふむと読み始めると「牯嶺街少年殺人事件」だけで10ページ以上あるみっちりさで、中国語、一文の情報量の多さにいつも圧倒されるので3ページぐらい読み進み、後は観た後のお楽しみにする。「牯嶺街少年殺人事件」撮影ノートのような本が91年に台湾で出版されたらしく、そこからの抜粋が多い。日本語のパンフレットにあるエドワード・ヤンの言葉と同じものも多かったので、多くの言葉がその撮影ノートを出典としているのだろう。これが本当にノートのような本で、ページの片方に撮影ノート、片方は空白になっていて、同時代を生きた人に、その頃、あなたはどうしてた?と問いかけて記入させるような仕様になっていることを知る。
北京で買ったので簡体字で書かれている。「牯嶺街少年殺人事件」も簡体字だとこのように書く。繁体字より省略が多い。
ここまで復習し、特にパンフレットの人物相関図が大事だと思ったので、朝、家を出る前にそのページをiPhoneカメラで撮影し、上映が始まるギリギリまで眺めた。本当に受験勉強みたい…試験が始まる直前まで参考書を手放せないような…。この時点で写真を見て「この登場人物は誰でしょう?」って問いにも即答できたし、相関の矢印も間違いなく引けるようになっていた。素晴らしき哉、学習!
傾向と対策が功を奏したのか、スクリーンで2度目・通算3度目の「牯嶺街少年殺人事件」、誰がどんな歴史背景を背負った存在なのか、ということも含め、ついに物語がしっかり見えた!わーい!
登場人物のほとんどが外省人(1945年日本が敗戦した後、台湾は中華民国=国民党政府に接収され、中国大陸から国民党政府と共に移り住んだ人)で、しかし外省人も大陸の様々な場所から移り住んだから、特に学校のシーン、先生は訛りがきつい人がいる。主要な登場人物たちは殆ど普通話(共通語、とでも言いましょうか)を話すけれど、それは映画製作上の要請であって、彼らもナチュラルにしていると先生のようにそれぞれの出身の訛りで話すのではないかな?と思った。ハニーは台南に逃げていた人なので、普通話と台湾で元々話されていた言葉の両方を使い分け「俺も台湾語が上手くなったぜ」って台詞もあった。
「牯嶺街少年殺人事件」を観たいけれど、物語も複雑そうだし…と躊躇している方には、2度観ることをお薦めしたく、1度目で物語の筋を掴み(台湾の歴史を知らなくとも、鬱屈した青春の物語でもあり、ボーイ・ミーツ・ガールの煌めきでもある)→パンフレットを買い、復習→2度目、の流れが望ましいけれど、2度観る時間がないよ、という方には、パンフレットをまず買って上述の「あらすじ」「登場人物相関図」「歴史的背景」のページのみ熟読しておくのが良いかもしれません。
少し知識を得て観てみると、目の前の砂埃がさっと払われたように細部がよく見え、「事件」直前の数分から「事件」を経てラストに雪崩こむ最後のくだり、ぼろぼろに泣いた。あの子もあの子もみんなまとめて抱きしめたい。
http://www.bitters.co.jp/abrightersummerday/
東京では新宿や渋谷に移動して上映は続く。まだ前売が1枚残っているので、あと1回観に行くつもり。