誠品書店 / 張愛玲
台北最終日。晴れた!朝、空港に移動するまで数時間あり、2日目に行って気に入った西門の「蜂大珈琲」でモーニング。今回、何度訪れたかわからない中山堂広場を抜け、台北郵局(北門郵便局)で明信片(ポストカード)と封書を送る。
郵便料金の相場がわからなくて、どれも国際郵便だから…と多めに見積もって現金を使い切らないように気をつけていたけれど、台湾の郵便料金は驚きの安さで、カウンターで、??!!という表情を浮かべてしまった。書留にするか?って何度か聞かれ、そうするとお高くなるんでしょう?と、普通のでいいですヨーと断ったのだけれど、書留にすればよかったかな。安すぎて訝しさが残る。無事に宛先に到着しますように…。
現金が予想より多めに残ったので、台北駅の地下にある誠品書店へ。駅の店なので規模は大きくないけれど(旗艦店に行ってみたかったけれど天候不順で無理だった。次回は買いたいものも定めて是非…)、中国文学の棚に張愛玲の写真を発見し(左側のチャイナドレスの女性)、するする引き寄せられると、短篇集、長篇がずらりとシリーズで刊行されていた。
李安(アン・リー)が映画化した「ラスト・コーション」の原作「色、戒」で有名な女流作家。本人のファッションセンスも素晴らしく、私の中ではモダン上海といえば、張愛玲のチャイナドレス姿の写真をパッとイメージする。酷評してしまったけれど映画「メットガラ」でも、展覧会のイメージ・ソースとして張愛玲の名前は登場していた。映画の出来がさっぱりだったので、名前が挙がるだけで、張愛玲が展示のどんなインスピレーションになったのかの説明は皆無だったけれど。
日本では「ラスト・コーション」公開時に、表題作を含む短篇が収められた文庫が発売された(集英社文庫)。どの短篇も素晴らしく、夢中になって読み、いつか原書で読んでみたいと思っていたので、台北最後の買い物はこの一冊に。
特に好きな「多少恨」という短篇を移動しながら読み始めたけれど、張愛玲の文章は、風景や衣服など目に写るものの描写が細かく、膨大な中国語の単語の中から、よくぞ胸を打つ美しさを持つ言葉をひとつ選びましたね…と感嘆するような華やかな言葉が選ばれている。比喩表現が多いわけではなく、衣服であれば色やスタイル、建築であれば床や壁の素材など、とにかく視覚面での詳細な描写が連続する。そして人物の動作や心理描写はそっけないほど簡潔で、映画の脚本のト書きみたい。これらが総合されて、頭の中で映画が上映されるような読書となる。
「多少恨」は冒頭、男女が出会う場が上海の映画館で、映画館そのものの描写から本文が始まることもお気に入りの理由。登場する国泰電影院は、内部は近代化したとはいえ、外装はそのままで現在も営業中とのことで、いつか行ってみたい映画館のひとつ。