世界で唯一の活字屋「日星鑄字行」

 

台北でお買い物しに行った場所。活字屋さん「日星鑄字行」。活版印刷の活字を現在も作り続ける台湾で唯一の活字屋。そして繁体字の活字を製造するのは、世界広しといえども唯一、ここだけらしい。

 

中国語を話す・学んだ人にはお馴染みだけれど、中国語の表記には大きく2種類あり、簡体字は大陸で使われているもの。筆記の簡略化を目的に開発された文字という理解なのだけれど合ってるのかな。日本の漢字より省略されていて、私はこちらに慣れており、何かしら自分用にメモする時、画数が少ないので簡体字でメモすることも多し。そして繁体字は中国語的にもクラシックな文字で、画数が多く、香港や台湾で使われている。

 

「日星鑄字行」は繁体字を製造する唯一の活字屋ということに加え、台湾ならではの特徴と言いましょうか、日本統治時代の名残か、日本語のひらがな、カタカナの活字も製造しており、それらを組み合わせて印鑑を作ることもできる。私も欲しいし、活字好きな人の多い私の周りの人々へのお土産としてもいいかも?と、google mapに連れて行ってもらう。MRT中山駅ほど近くの路地にある。

 

入り口の注意事項(引っ掛けて活字の配置を乱す恐れがあるので、荷物は棚に置く…等)を読み、荷物を預け、中に入ると、この光景。

 

 

活字だらけ!活字が詰まったこの棚が1階にぎっしり、奥に活字を製造する機械も。地下にも活字棚があるらしい。気が遠くなるような活字の量…。

 

 

印鑑を作るための組み合わせ見本。活字のサイズがいろいろあり、組み合わせて作ることができる。書体も楷書、明朝、ゴシックの3種類だったかな。メモがあったので作りたい印鑑のレイアウトを書き、棚を見つめながらイメトレ。漢字、ひらがな、カタカナだけではなく干支の動物や、星、ハートマーク、アルファベットもあり、組み合わせは無限大。

 

 

メモを持って真剣に見ていたので、こいつは本気っぽいと思われたのか、店員さんが声をかけてくれた。こういうのを作りたいんですけど…と相談し、書体は楷書で、と伝えると、滑らかな動きで活字探しを手伝ってくれる。こんなに活字があるのに、どこに何があるか覚えてるなんて…!と驚いて、何がどこにあるのか覚えてるのですか?と質問すると、覚えられないわよ!でも、日本にも辞書があって辞書を引くルールがあるでしょ?ここの活字は台湾の辞書のルールで並んでいるから、辞書を引くことができれば探し出せるのよ!と教えていただく。

 

プレゼントする用の活字は、ひらがなが含まれており、店員さんに、ひらがなは私より日本人のあなたが選ぶ方がいいわ!と言われ、ドキドキしながらピックアップ。何が難しいって、左右反転してるから合ってるのかどうか想像しながら選ぶしかない。相談しようにも店員さんは台湾の方だからこの分野は私の方が正解を知ってるんだわ…。「ず」を選ぶ必要があって、濁音の活字が がぎぐげご しか目に入らなかったので、「この傍に2つ点があるの、これ以外にありますか?これがあるかないかじゃ大違いなので、ないと困ります!」と一緒に探してもらう。「ず」は無事に見つかり、もはや店員さんとのコンビネーションもばっちりで、和気藹々と活字チョイス完了。

 

自分用には「Cinema Studio 28 Tokyo」を、せっかくなので繁体字表記にしてみたくて「電影(Cinema )工作室(Studio)二十八(28)東京(Tokyo)」の印鑑を作ることにし、繁体字の活字がここでしか買えないのであれば、数字の二十八も二じゃなくて弐にするなど、クラシカルな表記を選びたくて、でもどう説明すれば伝わるのか不明だったので、二の横にメモで「難写的」(書くの難しいやつ)って書いておいたら、店員さんに、この「難写的」って何?って聞かれ、台湾で今でも使われているのかわからないけれど、旧漢字というか、画数の多い漢字で書く数字を探したいと説明したら、「二十八」でセットだと思うので、二だけじゃなく二十八全体を難しい文字にした方が良い、と的確なアドバイスをいただく。素晴らしい!それでいきましょう!二十八の難しいバージョン、どういう漢字か思い浮かばないけれど、わかりますか?と聞いたら、店員さんも書けないけれど、文字を見ればそれが数字ということはわかる、と言われたのでお任せして選んでもらった。

 

そして出来上がったのが、こちら!

 

 

わー!これで二十八だなんて誰もわからないけれど、台湾っぽくて嬉しい!繁体字!ある程度の読み・書き・喋りはできるけれど、馴染み深い中国語は簡体字なので、繁体字は私にとってもエキゾチックで、漢字という文字そのものの魅力に溢れたかっこいい文字、という印象です。

 

活字を選び終わり、お会計のマダムに渡し、印鑑にするものは活字を組み合わせてガチッと印鑑ケースに入れてもらう。いろんな色の朱肉から欲しいものを選び、お買い物終了。欲しいものちゃんと買えてうれしかったです、ありがとうございました!と店員さんに伝えると、あなた…やるわね!との言葉をいただきました。やるわね、いただきました(ガッツポーズ)!

 

このピンクのトップスの方がこの度大変お世話になった店員さんです。

 

 

お店は営業時間であれば個人客でも入れ、お買い物可能。日本語を話す人はおそらくいないと思うけれど、こういうものを作りたい、とメモで書けば一緒に探してもらえるはず。

 

お店の紹介はこちら(日本語)

http://www.taipeinavi.com/shop/479/

 

台北でのお買い物は、この印鑑と最終日に買った本1冊。28関係の手紙を書く時など、ばしばし押していく所存。

 

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Mariko
Owner of Cinema Studio 28 Tokyo
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