手元からすりぬける
不注意というわけでもないのに、手元からすりぬけていく本ってありませんか。私にとっては伊丹十三の本がまさにそれで、エッセイもメイキング本もたくさん持っていたはずなのに、あずささんの原稿を読み、久しぶりに伊丹本を読んでみようかな…と探しても一冊もなくて愕然。様々な方法で手元からすりぬけて行ったように記憶しているけれど、印象深いのは「ヨーロッパ退屈日記」。ちょうど10年前の夏、そう、あの年の夏も涼しかった…(遠い目)…。ヘルシンキ中央駅から、
こんな電車に乗ってフィンランドの地方都市へ。物価が高く、電車代も高かったな。
こんな座席で移動がてら「ヨーロッパ退屈日記」を読んだり、ぼんやりしたりを繰り返し、駅に着き、気がつけば本を失くしていた。座席に置き忘れたのか、ペットボトルを捨てる時にゴミ箱に入れてしまったのか…。
ムーミンのパッケージに反応して、普段飲まない砂糖入りのものすごい色の甘ったるい飲み物を飲んだせいかもしれない。慣れないことはするものではない。けれど暇つぶし用に持参した「ヨーロッパ退屈日記」をヨーロッパで失くした、というエピソード、ちょっと気に入って、それから買い直していない。そろそろ再読しようかな。
それから古書店で状態の良いものを手に入れてホクホクしていた「フランス料理を私と」は、伊丹十三がフランス料理を作り客人をもてなす内容。蓮實重彦と岸恵子が客人で小津の話をする回があり、これは「会食のメンバーに加わりたくはないけれど、同じ店の会話の聞こえる席には存在して聞き耳をたてたい」シチュエーションランキング上位に入るキャスティング!再読したいけれど、人に貸したままになっている。手元にある方、これを読んだら、どうぞご返却されたし。