Black narcissus
「Black narcissus(邦題:黒水仙)」について所感メモ。1947年のイギリス映画。「赤い靴」で有名なマイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガーの共同監督。ジャック・カーディフの撮影が素晴らしくて、映画って本当、ささっと私を異世界に連れて行ってくれるわぁ…と、うっとりしながら観た。
インド・ヒマラヤ山脈の女子修道院に、布教・教育のために駐在することになった修道女たちの物語。むせ返る異文化の香り、頼れる男性の存在、静寂を破る動物の吠える声や自然音が、ストイックな修道院生活を掻き乱し…。
混乱した修道女たちが右往左往しサスペンスのような後半に惹かれた。主演のデボラ・カーは安定の美しさだけれど、私はもっぱらキャスリーン・バイロン演じるシスター・ルースに釘付け。錯乱して暴走すればするほど爛々と美しくなっていく。
サスペンス、ホラーって筋書きより時々、女優の整った顔が一番怖いって思う時があって、シスター・ルース、まさにそれに該当。他に、いや、あなたの整った顔が一番怖いですから!って背筋が凍った映画の事例としてはポランスキー「反撥」の恐怖に引きつる若きドヌーヴの顔などがあげられる。
この映画を好きと言った友人のひとりは、パリ在住イタリア人、インドを舞台にした映画の脚本を書いている青年(ややこしい…)で、彼はどうしてこれが好きなんだろうなぁ…と、つらつら妄想し、私とは絶妙に映画の趣味は合わなかったけれど、彼はサタジット・レイや、ルノワールだと「河」がベストと言っていたので、単にインドに興味があるんじゃないかしら?というシンプルなmy結論に至った。ヨーロッパ人の好むエキゾチシズムの舞台としてのインド…「Black narcissus」もそんな感じね…など、メール1本、観たよ!って送れば答え合わせできそうだけれど、それをしないで頬杖つきながら妄想するのが好き…。
写真はイタリア青年に東京観光の一環として神保町 矢口書店を薦めたら行ったようで、お土産にもらったパンフレット。