新感染 ファイナル・エクスプレス
映画初めは早稲田松竹。はじめてのヨン・サンホ特集。アニメ「ソウル・ステーション/パンデミック」をまず観て、次に実写映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」。話題になっていることは知りながら、映画祭シーズンと重なって見逃し続けていたので待望の鑑賞。
http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/2018/shinkansen.html
ソウル発の高速鉄道KTXで突如起こった謎の感染爆発。疾走する密室と化した列車内で凶悪化する感染者たち。愛するものを守るため、決死の戦いが今始まる!
なんてよくできた映画なの。エンタメ映画の見本のよう。設定が設定だけに「新幹線大爆破」とか「天国と地獄」とか「ゾンビ」などあれこれ同時に思い出したけれど、「新感染 ファイナル・エクスプレス」はやっぱりどれにも似ていないオリジナルな映画なのだった。登場人物たちの背景説明が大胆に省略されており、でも物語の流れで徐々に一人ひとりの輪郭が浮き彫りになるのが見事だし、恐怖の車内に団体で乗り込んだ運動部の部員たちが野球部という設定も、後々ゾンビと戦うにあたって武器(=野球道具)が車内に揃ってる状況を自然に生み出していて小憎い。様々な乗客が社会の階層や属性の象徴であることも物語の進行につれて明らかになり、対ゾンビ戦のハラハラとエモーショナルな場面が交互に訪れ、ベタベタした湿り気を丁寧に排除しながら高速で物語が展開する。
ゾンビ群、視覚的にうへぇ…となるので、2度目の鑑賞は心が怯むけれど、時間を置いたらまた観たくなりそう。主演俳優が大沢たかおと東出くんを足して割ったようなルックスで、画面がゾンビと血で染まる中、彼が映ると一服の清涼剤のよう。エリートらしい白いパリッとしたシャツが、時間の経過とともに血と汚れで滲み、格闘のたびに彼を覆っていた高慢さが剥がれ、人間性が露わになってゆく。
ソウル発釜山行きの高速鉄道、現在のKTXが開業する前のセマウル号に乗ったことがあって、ずいぶん遠い記憶だけれど、あのルートかぁ…と懐かしく思い出した。車両だけではなく、連結部分やトイレまで余すところなく物語に効果的に使われていた。
原題はシンプルに「釜山行」とのことで、「新感染 ファイナル・エクスプレス」…しんかんせん…新幹線…ダジャレか!こんな物語なのに!と賛否両論だったようだけれど、「釜山行」そのままだとしたら、普段、韓国映画を観ない観客にまで広がらなかったのでは。タイトル問題、悩ましくも興味深いものですね。