Kumagle!
晴天の日曜日。暖かいので朝からエアコンフィルターなど漬けおき洗浄を試み、ひと段落したので散歩がてら上野へ。ものすごく久しぶりに科学博物館へ。10時前だから空いてるかな、と思えば威勢のいいキッズで混んでいた。
お目当ては熊楠の展示。最終日に駆け込む悪癖が治らない。
https://www.kahaku.go.jp/event/2017/12kumagusu/
もちろん名前は知っているけれど、詳しくは知らない人だったので、時系列に沿った展示かつ情報収集・提供の達人としての紹介視点が盛り込まれていて、とても見応えがあった。当時、通信手段が限られていたとはいえ、とにかく筆まめ。同じ人に1日に何通も手紙を送ったらしく、現代に生きていたら「1日に何件も長文LINE送ってくる男」って感じかしら。感情を排した淡々とした手書きの日記、小津安二郎もこういうのつけてたよね。熊楠、日記帳がイギリスに渡るとイギリスっぽい重厚なデザインのものになったり、微細な変化も楽しい。
収集物の視覚的な美しさ。投獄されていた時も獄中でちゃっかり収集していたり、抜け目ない。
こちらは、収集した標本を天皇陛下に渡した際、使ったキャラメル箱と同じもの。通常、そんな場面では桐箱だけれど、熊楠はキャラメル箱。このエピソード、天皇陛下も後々まで楽しそうに回想して語ったとのこと。私は森永ミルクキャラメルのパッケージの、鈴木清順映画のようなカラフルさに度肝を抜かれた。
面白かったのは、収集した膨大な智を、いかに整理していたかという点。こちらは田辺在住時代の「田辺抜書」。書籍を借りてきて、必要なところを書き写して保管するための熊楠の智のアーカイブ。側面にナンバーが書いてあって、こうやって平積みしていたのかな。探しやすそう。
興味深かったのは十二支、十二の動物についての論考「十二支考」の「虎」を書くための熊楠の段取りが展示されていたこと。新聞紙を裏返した白紙に「腹稿」と熊楠が呼んだメモが書かれているもの。収集した古今東西の虎にまつわる知識を整理するためか、腹稿は複数ある。彼の中で徐々にバージョンアップしたのだろうな。
黒で書いた後、赤で項目名を書き加えてあり、それを解析したのが以下。マインドマップっぽい。書くためのロジックの整理。
そしていよいよ文章が書かれるわけだけれど、「熊楠なりの論理によって相互に関連づけられていることがうかがえますが、それがいったいどういう論理であるのかについては、じつはいままさに研究の対象なのです。」という素直なキャプション。これだけ智を集めた人の脳内は広大な宇宙で、他者にそれを解析するのは難しいでしょうね。随所に論理の飛躍もありそう。研究はとても面白そうだけれど。
熊楠の体内には知識とその検索、アウトプット機能が完備されていて、まさに歩くgoogle。Kumagle!なんである。ナイスネーミング。
若い頃は少し日本人離れしたルックスで、老年にさしかかると徐々に勝新に似てくる。熊楠と勝新、貫禄があって狂気を感じさせて、でも瞳がピュアなところが似ておる。勝新が熊楠を演じた映画があったら面白かっただろうなぁ。
熊楠を堪能した後は、ミュージアムショップをぶらぶら。古代生物ソックス(シースルーソックス!)、各種実験道具、鉱物、化石チョコレート、宇宙食、恐竜グッズ…謎のグッズが謎の充実っぷりで興奮。。手紙好きの私は光学機器メーカーVixenのレターセット(惑星や星座柄)や博物館所蔵の剥製の写真のポストカードなど、欲しいものがいくつかあったので、年間パスポートを次は購入して、頻繁に通おうと決意。