夜の博物館
早春の夜、上野の科学博物館へ。おすまし顔の皇帝ペンギン。
カメラ目線のイワトビペンギン。イケペンですね。
キヌガサタケ、レースのフレアスカートのよう。こんなに自分が美しいってこと、キヌガサタケは知ってるのかな。
東京・春・音楽祭という催しのプレイベント。ナイトミュージアムコンサート。あちこちで音楽の演奏、研究員の方のトークも。
http://www.tokyo-harusai.com/program/page_4941.html
研究員の方のトーク、どちらも参加した。花の色について語るつもりだった植物研究の方が、うっかり花粉の話だけで時間を使い切ってしまったり、宇宙研究の方が、独特のトーンでゆらゆら動きながら静かに、私の専門は変光星についての研究で…とおっしゃったり、その人が好きなものについてお話しする時の、独特のロマンティックさに溢れたトークで、うっとりした。
音楽は地下2階、絶滅した動物の骨が並ぶフロアで聴いた、バンドネオンで演奏されるピアソラや、モリコーネの映画音楽が素晴らしかった。混んでいたので奏者は見えず、ずっと象の先祖のような巨大な動物の猛々しい骨を眺めながら聴いた。
ブレッソン「やさしい女」でとりわけ好きだったのは、男女がパリの自然史博物館を歩き、女が「動物はみんな同じ。配列が違うだけ」と骨を眺めながら言うシーン。男は、女の表面にしか興味がなくて、女が好きな骨については興味がなさそうな表情だったのを覚えている。
3月に入ってから謎の眩暈や、気が滅入ることの連続で、限りなく消耗しきっていたけれど、剥製や音楽や菌類や骨や植物標本により、しばらく乗り切れるほどには復活した。宇宙全体の7割を構成するエネルギーは、まだ解明されない謎で、ダークエネルギーと呼ばれるらしい。わかりあいたいのは根源的な欲望だとしても、7割もわからない宇宙の片隅で生きていて、何かをわかった気になるのもずいぶん野暮であるな。ありがとう、夜の博物館。