プラネタリウム
ソファに座るとそのまま動けず時間が経っていることが増え、出かけている場合ではない、休まねばならぬ…と、借りておいたDVDを横になりながら観た。
ナタリー・ポートマン、リリー・ローズ・デップが姉妹役を演じる「プラネタリウム」という映画。気になりつつ公開時に逃した。私の期待は、アサイヤス「パーソナル・ショッパー」のような映画なのでは…?という点だったけれど、姉妹が霊媒師(リリー・ローズ演じる妹にその能力があるのかないのかという設定)という点だけ似ていて、「プラネタリウム」は1930年代の物語であるし、蓋を開けてみると映画製作の裏側ものでもある、なかなか多様な色彩の物語だった。ただ、誰かへの薦めづらさは「パーソナル・ショッパー」に共通するものがあった。
監督はレア・セドゥが日本に紹介された始めた頃?の「美しき棘」という映画を撮ったレベッカ・ズロトヴスキ。
死者にアクセスする能力を持つ妹(リリー・ローズ・デップ)と、野心家の姉(ナタリー・ポートマン)は降霊ショーを成功させ、映画プロデューサーの男の目にとまる。彼は姉妹を映画に登場させ、霊媒能力を駆使し「見えないものが映る」映画を撮ろうとするのだが…という物語。姉妹にも、映画プロデューサーの男にもモデルがいるらしいけれど、彼らの運命は現実では交差しない。フィクションとして交差させているのが、この映画。
「パーソナル・ショッパー」でも触れられていたけれど、果たして超常能力は存在するのか?妹は本当に見えているのか?はたまた野心的な姉による詐欺なのではないか?という点が焦点になるかと思いきや、その点を追う物語でもなく、映画プロデューサーの執拗な「見えないものが映る」ことへのこだわりが気持ち悪くエスカレートし、ナチス占領下のパリにおいて、彼が隠れユダヤ人であること…に徐々に物語の重心が移り、何もかもが曖昧なまま進行し、もやっとしたまま終わる。姉妹は綺麗だったし、30年代の衣装も美術も美しい、眼福映画だったね、と思ったけれど、観終わってしばらく経つと、不思議な後味が残った。
もう会えなくなった人への名残りや後悔がこの世に霊媒師という職業を存在させ、見えているらしいことを信じることで満足感を得る。映画の中にもあったけれど、映画そのものも自らが選ばなかった人生、起こらなかった物語を架空の世界に作り上げること、観客はそれを観ることで異世界にアクセスし、擬似体験を得る。霊媒師姉妹と映画プロデューサーが出会い惹かれあったのも、目的を同じくする似た者同士、と振り返れば、不思議に感じた物語のパーツの辻褄が合う。
ナタリー・ポートマンがひたすらに美しく、当時流行していたというマスキュリンな装いから、恋愛感情が芽生えるにつれ女らしい装いに変化していくさまを見守るのも楽しかった。消化不良…と思ったけれど、振り返ってみると案外この映画を楽しんだ。
Photo : 科学博物館にはレストランがあり、展示室寄りの席に座ると、骨や剥製を眺めながら食事やお酒を楽しめる。骨を眺めながらお酒を飲める店があればいいのに、と願っていたけれど、案外近く、意外な場所にあった。食事はしていないけれど、上野精養軒が運営しているらしく、なかなか美味しいとのことです。