パーク

 

金曜夜の映画。カイエ・デュ・シネマ週間でダミアン・マニヴェル監督『パーク』。

 

http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1804131900/

 

夏。とある公園で二人のティーンエイジャーが初デートをする。始めは戸惑い、恥じらっていた彼らも散歩が進むままに距離が縮まり、恋に落ちる。日が落ちて、別れの時間…。そして暗い夜が始まり、公園がそれまでと異なる表情、位相を見せ始める。

 

72分の短さの中に初々しい恋、残酷、ホラー、夢想…と予測不能に物語が展開し、たった1日が一生の長さのようにも、ひとつの公園が宇宙のように見えてくる。物語の転換点となる、先に去った男から届くショートメールを、誰もいない公園でひとり読む女の表情が徐々に色を変え、頭上で色を変える空からの光と闇が彼女の顔に陰影をつくっていく長いカットに魅せられた。ロメールの少女のような溌剌とした振る舞いをみせていた女が、般若の形相を垣間見せ、その変化をもたらしたのが彼女が当たり前に求めた「恋」だなんて。

 

上映後のダミアン・マニヴェル監督のトークもたっぷりとあり、どの質問も回答も興味深かったけれど、この映画が元は短篇の構想から始まり、公園でただ女性がバック転をし続ける筋書きだったというのに驚き、またその短篇に資金が集まるところにも驚いた。ナオミという主演女優はサーカスの訓練学校に在籍しており、その身体能力の高さは映画の中でも存分に発揮されていたけれど、そもそもはバック転映画を可能にするために選ばれたと知って納得。観客からの質問は仏語に翻訳され伝えられたけれど、ダミアンの回答は常に日本語が選択されていたことも素晴らしい。ダミアンの話す日本語、『パーク』の上映前挨拶にあったフレーズのように、また映画『パーク』そのもののように、シンプルだけれどシンプルじゃない日本語で、単なる日本語が上手な外国人、という域を超えた不思議な言葉の魅力がある。

 

*思い出したので追記。ダミアン監督、トークの中で吉田修一『パーク・ライフ』に言及していた。すべてが公園の中で展開する物語、と。『パーク』を観ながら『パーク・ライフ』を思い出すことはなかったけれど、言われてみれば、と読み返したくなりました。

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