シェイプ・オブ・ウォーター

 

観た映画は遅くなっても全部記録しようと決めた2018年、『シェイプ・オブ・ウォーター』は公開日(3/1)夜に観た。

 

この3月はなかなか壮絶で、記憶がもはや薄いけれど、月のはじめにこの映画を観たことは、よき思い出として私の心をあたため続けた(…この雑な英文和訳のような文章よ…)。3月1日の東京、強い雨が降って止んだ後の日比谷の街は冬の埃がさっと払われたようにみずみずしく、春の予兆に満ちていた。

 

シャンテの前方の席で、私は今、とても素敵なものを観ている!と思いながら眺めた。ずっと読みたかった絵本をようやく手にしてめくったような。めくる速度も早すぎず遅すぎずちょうど。そんなことは滅多にあるものではない。

 

主人公の女性が暮らすアパートは昨今観た映画の中の建物のうち、とりわけ住んでみたいと思った。ほとんどお客さんが入っていないガラガラの名画座の上の部屋!大家さんは映画館の館主でもあって、チケットブースに家賃を払いに行くと、無料券をあげるからどうか映画を観に来てくれ!って懇願される。

 

そんな部屋に暮らす女性は、女優のように見目麗しいわけではないけれど、仕草や身体のラインに艶やかさがあって、ただ単純に彼女の人生にその相手がまだ登場していないだけで、恋に落ちる準備はいつだってできている、という女性のように見受けられた。相手が人でも、幽霊でも、映画の中の俳優でも、怪物でも、モンスターでも。そして目の前に現れた”彼”は、造形的に美しく、もう相手として十分ではないか、この人だよ、と納得できる引力があった。恋をした女性が、みるみるうちに艶やかさが増していく、微細な変化も見逃せない。

 

おそらく最新技術がふんだんに投入され、気の遠くなるような時間をかけて作られたのだろうけれど、描かれるのが、アパートの階下で上映されるような、映画の創世記からとっくに存在していたクラシカルな愛の物語、という点がとりわけ好みだった。こんな、ずいぶん手の込んだ遠回りを辿りながら、あらすじだけ抜き書けばたった一行で終わりそうなシンプルな映画が生まれることが贅沢だと思った。私の好きな種類の遠回り感、存分に味わった。

 

http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/

 

名画座にまわった時に、また観ると思う。

 

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