気ままなオブジェたち
あれもこれもと当初予定していたことの半分もできなかったけれど、天気もよく素敵なGWだった。5月5日こどもの日は、再びエルメスへ。5月のプログラムは『気ままなオブジェたち』と題された短編特集。エルメスの年間テーマに沿った映画上映、短編特集にこそプログラミングの粋が発揮されるように思う。
http://www.maisonhermes.jp/ginza/le-studio/archives/716057/
・『午前の幽霊』ハンス・リヒター監督/1928年
ナチスによって音声版が破壊された短い映画。4月のプログラム『生きるべきか死ぬべきか』との連続性も感じられる1本目。当時の撮影技術をもって、映像で表現できることをありったけ試してみた!とのびのびした実験感覚が楽しい。これぐらいの時代の映画、帽子が小道具として出てくることが多くて、紳士にとって皮膚の一部のような日常の必需品だったのだなぁ。
・『事の次第』ペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイス監督/1987年
映画館より、美術館で流れるのが似合いそうなガラクタをドミノ倒しのように組み合わせたインスタレーション映像。けれど30分という時間も退屈しない。物ひとつひとつの特性を把握し、それぞれに何を加えれば(力、火、水など)物が動き、次の物へ力を加えるか、緻密な研究があったのだろうと思う。一回限りの実験としてほぼノーカットで撮られており、広大な工場跡のような場所で撮ったのかしら、と思うけれど、ひとつの物が次の物へと力を渡した後は、用済みとばかりふたたび映ることはないので、撮影現場を俯瞰で見たら、あちこちで何かが燃えたり水が漏れたり、なかなかの状況になっているのではないかしらん、と妄想しました。
・『ザ・ファースト・ラスト・ソング』ル・ジャンティ・ギャルソン/2002年
鍵盤を叩くたびにピアノの上のグラスが破壊されてゆく。山下洋輔が海辺で燃えるピアノを弾く映像を思い出した。
・『グッド・ラック・ミスターチャンス』ル・ジャンティ・ギャルソン/2004年
遊びの目的を達成できないトランプを製造する様子。良い子は真似しちゃいけません。悪質なyoutuberのはしり的映像。
・『燃えよプチ・ドラゴン』ブリュノ・コレ監督/2009年
男性の部屋にあるブルース・リーのゴム人形が、部屋にある様々なおもちゃや物と戦いを挑むが、天下のブルース・リーといえども物の進化には勝てない、ささやかでほろ苦い短編。小学生男子の妄想・おままごと・脳内をそのまま映像化したような無邪気なアホっぷり。こどもの日に観るのにふさわしい1本。ブリュノ・コレ監督の他の映像も観てみたい!
全部通して観ても1時間以内の手軽さ。5月、まだ予約可能な回もあり、エルメスで一度、映画を観てみたいという方にもおすすめです。