ふたりのベロニカ

 

1月、早稲田松竹で観た『ふたりのベロニカ』、久しぶりにキェシロフスキを観ようと思ったのは、昨日スタートした翠子さんの連載をつくる私のための心理的材料が、この映画にあるのでは、と期待したから。

 

同じ年、同じ日、同じ時刻に生まれた二人のベロニカ。一人はポーランドで、音楽の舞台に合格が決まり、初めての舞台で胸の痛み感じ、突然の死を迎えてしまう。もう一人はパリで子供たちに音楽を教える先生で、ある日、人形劇の人形使いのアレクサンドルに出会い恋をする。もう一人のベロニカをそばに感じる不思議な出来事が起こる中、一本のテープがベロニカの元に送られ、その録音された音を頼りにカフェに行くとそこにはアレクサンドルがいて…。

 

http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/2018/kieslowski2018.html

 

『ふたりのベロニカ』、幻想的な物語だけれど、こんなふうにこの世には自分と同じ人間がどこかにいて、見知らぬ街で生活しているのかもしれないと感づいたり、妄想したりする人は、案外多いのではないかしらと思った。

 

Cinema Studio 28 Tokyoに執筆をお願いしたい方には通常、お会いしてお話しさせていただくけれど、なにしろ翠子さんは雲の上にお住まいで、それは難しい。これまで手紙などでのやりとりはあっても、直接お会いしたことはない。メールが往復しながら生活や嗜好を教えていただく中、翠子さんと私の人生にはシンクロするところがたくさんあることに気づいた。これまでの決断がひとつ違っただけで、雲の上で暮らしていたのは私だったのかもしれない。

 

あるいは、誰かとこんなに掘り下げてやりとりすることは稀なことだから、どんな人でも深くやりとりをしてみると、あなたは選ばなかったもうひとつの私の人生ですね、と思うのかもしれない。

 

雲の上の翠子さんから届く季節ごとの手紙は、「選ばなかったもうひとつの人生がどこかに存在するかもしれない」と感じながら生きている、『ふたりのベロニカ』を観ても他人事とは思えない人々のための手紙かもしれません。

 

ベロニカを演じるイレーヌ・ジャコブ、空想の中にしかいない「ヨーロッパに棲息しているであろう、可憐で儚く芸術好きで少しエロティックな若い女性」に生身の身体を与えたようなルックスで目が離せなかった。

 

 

 

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