君の名前で僕を呼んで
5月に観た映画メモ。上半期、あの映画観た?って質問が飛び交った回数ランキング1位は『君の名前で僕を呼んで』だったと。
2ヶ月経って覚えている感想としては、
・ルカ・グァダニーノ監督はティルダ・スウィントン主演『ミラノ、愛に生きる』の監督と後で知って、ラブシーンの撮り方に特徴ある人だな、と思う。野趣溢れ、ちょっとフェティッシュ。
・ラストシーンのティモシー・シャラメは髪型とシャツの柄のせいか、幼い頃にテレビで観たアイドル時代の本木雅弘に似ていた。
・あのラストのおかげで、映画全体の印象がちゃんと残っておる。ラストよ。
というもので、切ない恋の物語に触れて何も手につかず放心…という事態には陥らず、大人って冷静でつまらないことよ…。
しかし前半、君の名前で僕を呼んでってどういう意味だろう?と疑問に思いながら観た。日本だと恋愛もので、(結婚して)あなたの名前になりたい、僕の名前にならないか、というセリフはありそう。逆に、例えば夫婦別姓の中国だと、あなたの名前になりたいという発想そのものがないのかぁ、あたなは王さんですね、私は張ですけど?的な感じなのかな…など、ぼんやり途中で考え始めてしまったので、目の前にある80年代イタリアの夏が一瞬遠のいてしまう。
その後、このタイトルの意味が明らかになると、ふたりの成り行き、桃がどうこうより、タイトルが興味深いな、と思った。あなたと私は体も心も混じり合い、あなたと私を象徴する最たるものである名前さえも交換するんです。
ここ数年、恋愛についての文章で最もロマンティックで面白かったのは、チームラボ代表の方のこのエッセイで、
理由がなくても言えるから「愛してる」しか言わない
https://gqjapan.jp/culture/column/20131030/trotting-arround-asia-127
エリオとオリヴァーが2人だけの短い旅に出て、あなたの場所でも私の場所でもない通りすがりの街で、身につけた語彙をすべて忘れて、君の名前で僕を呼び合うシーン、あれはまさに「世界がもっと言語から解放されたら」の瞬間が切り取られており、稀有なものを目撃した、と思った。