夜の浜辺でひとり
有楽町で。ホン・サンス『夜の浜辺でひとり』は、去年台北で観て以来2度目の鑑賞。
台北で観た時のことはこちらに書きました。日本で配給されるか不明だったので、台北の東の外れのシネコンまで観に行った。つるんとした巨大なショッピングモールがある南港というエリアは、東京で例えるなら二子玉川のような場所ではないかしら。
http://cinemastudio28.tokyo/cinemaontheplanet_007_part2
今回、日本で特集上映されたホン・サンス&キム・ミニ映画4本はどれも、私生活での2人を否応無しに想像してしまう物語ばかりだったけれど、日本人の誰もいない台北郊外のシネコンで淡々と中国語字幕で物語を追いかけていると、ずいぶん遠い場所で映画を観ている私に、彷徨うキム・ミニの姿が身体の奥まで染みてきた。
物語の中で役柄がどう生きるかということ以上に、女優として仕事をする中でホン・サンスと出会い、それまでの自分とは違う場所に来てしまったキム・ミニの現在を勝手に想像し、肝の据わり方に妙な感慨を覚えた、というべきか。その覚悟に圧倒されたからか、4本の中で『夜の浜辺でひとり』が最も好きだった。まるで自分のような役柄を演じるなんて、どんな気分になるのだろうか。
ドイツで声をかけ時間を聞いたり、韓国のマンションホテルで窓を拭いていたり、不意に現れる謎めいた男。前半の終わり、死体のように力の抜けた彼女の身体を肩に乗せて連れ去ってゆく男の不気味さ。あの男は、彷徨う女優に取り憑いた振り切れない愛の幻影だったのだろうか。
http://crest-inter.co.jp/yorunohamabe/