クレアのカメラ

 

有楽町、ホン・サンス&キム・ミニ特集で『クレアのカメラ』。

 

http://crest-inter.co.jp/sorekara/crea/

 

相変わらずのキム・ミニ受難物語だけれど、今回の4作のうち最も気楽に観られる1本だった。カンヌの気候、陽光があまりに気持ち良さそうだったからかもしれない。過去にホン・サンスは『アバンチュールはパリで』というなんだか文化村マダムのいかにも好きそうなタイトルの映画を撮っているけれど、

http://www.bitters.co.jp/paris/

 

これがびっくりするぐらいマイペースなホン・サンス映画で、パリを舞台にした映画らしさが微塵も感じられない。かろうじてパリ要素があるとしたらオルセー美術館で撮っているシーンがある程度だけれど、ホン・サンスがオルセーで撮るとしたら、あの絵が登場するのでは?という絵が案の定登場して(しかもホン・サンス・ズームで寄ってた記憶!)爆笑しちゃった。ええ、クールベ「世界の起源」ですとも。しかし『アバンチュールはパリで』というのは安直な邦題に過ぎず、原題は『昼と夜』っぽいシンプルなタイトルだったような。

 

カンヌで撮られた『クレアのカメラ』はその点、カンヌの街や空気もしっかり映っており、カンヌ映画祭の裏側も覗き見られて一粒で何回も美味しく、妖精のような立ち回りのイザベル・ユペール(アニエスベーの黄色いカーディガン、おそらく私物だろうな)にキム・ミニ(カンヌの仮設オフィスで仕事する際の黒いシンプルなワンピースが素敵)、ホン・サンス・ミューズふたりが並んでカンヌを歩くだけで十分に映画が成立している、新鮮で極上の素材だから生のまま齧って大丈夫、というこの上なく贅沢な映画だった。

 

キム・ミニが働く仮設オフィス、ドアに貼られたポスターが一瞬映り、それがホン・サンスの『あなた自身とあなたのこと(Yourself and yours)』のポスターだったから、相変わらずの虚と実、公と私の入りまじりっぷりに冒頭から微笑、キム・ミニの歌う可愛すぎる歌を経由し、微笑は最後まで続いた。