search/サーチ

 

冬の不忍池、枯れた蓮。足を踏み入れてはいけない場所に来てしまった感を味わえる、あちらとこちらの境目のようなところ。

 

映画初めに出町座で観た『search/サーチ』、全編PC画面上で物語が進行し、facebookやinstagram、youtubeなどSNSが主役のように登場する映画ということで、楽しみにしていた。パソコン通信を題材にした1996年の映画『(ハル)』が、現在観るとノスタルジーに溢れているように、こういう題材の映画は公開時にビシッと観ておくのが正解だと思う。映画館でそれなりに大勢の人と一緒に観たけれど、しばらくして配信される頃、PC画面で観るのも臨場感ありそう。

 

母親が亡くなり、父ひとり娘ひとりになったアメリカに暮らす韓国系の家族。娘と連絡がとれなくなり、父親は血眼で娘を探し始める。家族共用で使っていたPCを娘のアカウントでログインし、鍵のかかったSNSアカウントにも次々にログインすると、知らなかった娘の一面が明るみになり…という物語。

 

http://www.search-movie.jp/

 

題材は現代のものだけれど、謎めいた手がかりをもとに娘の行方を追う展開はクラシカルなミステリー、というバランスが見事で最後まで一気に引き込まれた。監督は元Google勤務、マイケル・ナイト・シャラマンに影響を受けたインド系の20代というプロフィールも面白い。次にどんな映画を撮るのかな。

 

十分に気を配って生きていても、他者から自分に寄せられる好意も悪意もコントロールできない、という事実の再確認を含め映画は存分に楽しんだけれど、この物語の場合は父親がITリテラシーの高い人物であることが事前に描かれていたので、娘のSNSパスワードを鮮やかに解読していく場面も違和感なく受け入れられたけれど、あの手法を使えば誰かに私のパスワードもあっけなく解読されるだろうことを目の当たりにして薄ら恐ろしい。

 

それから、あっけなく自分がいなくなってしまった後、金融機関への手続きなどは家族が担ってくれるのだろうけれど、私の不在を私を知る人々にどうやって誰が伝えるのだろう、私の周りにおいては私しか話さない言語でのみ繋がっている長い友人もいるのに、と不意に考えてしまった。先回りして身の周りを整えるべし、と気を引き締められた点においては案外、年初に観るのに相応しい1本だったのかもしれない。

 

 

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Mariko
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