木村威夫展
週末、会期ギリギリ、国立映画アーカイブの木村威夫展へ。
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/takeokimura/
鈴木清順監督とのコンビで有名な映画美術監督。未見の映画であっても、この方の名前があるだけで観てみたいな、と長らく思ってきた。映画館が本籍地の男の子(恵比寿帝國館という映画館を家族?親戚?が経営…だったかな)が、まず舞台美術を志し、映画産業の盛り上がりと歩調を合わせ美術監督として成長していく、上質な青春映画のような展示だった。
豊田四郎監督『雁』を、原作を好きなあまり観る勇気が出ないまま時間が経過しており、しかし数々の写真で映画の一場面はいくつも見ており、物語の舞台が近所なので散歩のたびに、この石塀は映画の中のあの?と妄想したりしていたけれど、石塀も不忍池も、すべてセットと知って驚愕した。なんだか靄が晴れた気がしたので、そのうち『雁』を観てみようと思う。高峰秀子がお玉を演じるってイメージと違って敬遠していたけれど、美術:木村威夫とあらば観なければ。
膨大な作品群の中でも、やはり鈴木清順監督とは相性抜群だったのだろう。展示にはなかったけれど、おふたりのコンビで最も興奮したのは『河内カルメン』で妾として売られたヒロイン(野川由美子)がお色気映画に出演させられそうになる危機に陥り、ふすまを開けると映画の撮影現場のような強いライトがピカッと突如出現するシュールなセット。こんな仕掛けを思いつくなんて頭おかしい!って最高の褒め言葉を献上したいです。展示では『ツィゴイネルワイゼン』の脚本は木村威夫さんのコメント入りでそのまま出版してほしいし、ポスターも復刻発売してほしい素敵さ。
その人柄の魅力にについて触れたキャプションも多く、タイプの違う監督から熱望され続け、長くキャリアを積まれたのは、時代や相手に合わせて無限の引き出しからアイディアを出せる柔軟さがあった人なのだろうな。自分をフレッシュに保ちながら年を重ねてゆくには?と考えていたところ、たいへんタイムリーな刺激でした。