日日是好日
函館ではシネマアイリスで映画を観た。こちらも時間が合う、という理由だけで『日日是好日』を選択。樹木希林主演、お茶のお稽古のお話。
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たちまち過ぎていく大学生活、二十歳の典子(黒木華)は自分が「本当にやりたいこと」を見つけられずにいた。ある日、タダモノではないと噂の“武田のおばさん”(樹木希林)の正体が「お茶」の先生だったと聞かされる。そこで「お茶」を習ってはどうかと勧める母に気のない返事をしていた典子だが、その話を聞いてすっかり乗り気になったいとこの美智子(多部未華子)に誘われるまま、なんとなく茶道教室へ通い始めることに。そこで二人を待ち受けていたのは、今まで見たことも聞いたこともない、おかしな「決まりごと」だらけの世界だった――。
お正月、京都・出町座で映画を観た時も、上映スケジュールをチェックするとこの映画が1日に何回も上映されていたから、東京では10月に公開されたこの映画、息の長い上映が続いているらしい。予告編をあちこちで観たけれど、なかなか観る気にならなかったのは、予告編からどんな映画かだいたい推測できてしまったからかもしれない。実際観終わってみると、確かに推測していたとおりの筋書きではあるのだけれど、いい映画を観たなぁ〜と胸いっぱいで映画館を出る、不思議と退屈しない時間だった。
茶道のお稽古って外からはどんなことを習うのかわからない、お茶を点てていただくだけなのでは…?という素人の疑問に、映画は丁寧に答えてくれる。以前、京都でお能を習っていたことがあり、「謡」と「仕舞」に区分されたお稽古のうち、私が習っていたのは能楽の演目のクライマックス部分だけを地謡の謡いだけで演じる「仕舞」のほうだけだったけれど、舞扇の持ち方開き方、すり足で歩く方法や歩数、腕を上げる角度、目線の送り方、すべて型が決まっており、型を習得するために果てしない年月を要し、演者の個性はその後にプラスされるものという種類のお稽古で、茶道もこれに近いのだろうな、と映画を観て思った。当時先生(能楽師)からお能のお稽古をしている人は茶道の上達も早いから、あなたも興味があればお茶を習ってみると良いのでは、と言われたことも思い出した。確かに茶碗の持ち方ひとつとっても、指の揃え方や肘を張る角度など、なるほど少し似ている、と腑に落ちる。茶道に詳しい人からすると、まるで見当違いの意見かもしれませんが。
と、たいへんニッチな楽しみ方をしたけれど、映画そのものはもはや本人のキャラか役柄か境目が曖昧な樹木希林の円熟の演技と、ひとりの女性の若さから成熟までを段階的に演じわける黒木華が素晴らしい。