前夜
その目的で映画を観たことはないけれど、これまでの人生で最も実用的な映画は『コンテイジョン』と、ふと思う。
コロナウィルスにまつわる騒めきの最初期、中華圏の現地情報をチェックし、これは只事ではないとこれから何が起こるかのシミュレーションとして鑑賞し、実際、ほぼ物語のとおりに事態が展開しているので、心の平静を保つのにおおいに役立った。
https://warnerbros.co.jp/home_entertainment/detail.php?title_id=3292/
最後のくだりはワクチンが投与され、人々は徐々に元の生活に戻っていくが、感染源が明らかになり知らされることはない…ものの、最初の犠牲者となった女性のある夜から時間が遡り、ウィルスの起源が淡々と映し出されてエンディング。静かに怖かった。
さて、ワクチン普及段階。誰にどの順番で?の決定において『コンテイジョン』では、1月~12月と書かれたピンポン玉と、1日~31日と書かれたピンポン玉をランダムに抽出し、出た誕生日の順番に打つという手法で、芸人のような明るさの司会者が陽気に抽選会を進行。え?そんな、ゲームみたいに?と驚いたし、松の内が明けた頃にニュースで流れる、ぐるぐる回転する的に弓矢を引いて数字を決めていく、お年玉つき年賀葉書の抽選会みたいなムードだな、と思った。
この殺伐とした世の中、『コンテイジョン』のようなゲームかよって方法で決まったら怒りを呼びそうで、現実世界でよもやあんなふうに接種順を決めた国はきっとないはず。可能な限り大多数の共感を得られそうな方法で現実の順番は決まるなぁ、と考えながら、ついに自治体からの接種券を私が受け取ったのが先週のこと。
ワクチンに関して、
・打つ or 打たない
→ もちろん打つ
・ファイザー or モデルナ
→ できればファイザー(副反応は両方を自分で経験しないとわからないが、接種間隔の短さ・抗体のできるスピード重視)
・早く打ちたい or そうでもない
→ 可能な限り早く(オフィスも自宅もかなり都心のため。オフィスに至ってはオリンピックスタジアムがデスクから見えているほど近い)
のスタンスは早々に決め、接種券が届いた瞬間、集団接種はまだ先だから個別接種(近隣クリニックでの接種)の予約をすべく区のサイトやtwitterなどリサーチ、近所の友人とも情報交換して、1回目接種予約を確保。ということで、これを書いている翌日に接種することになり、2回目接種も7月中に完了することに。自治体ごとにスピード感が違うことに加え、ワクチン供給不足の影響が出始める直前だったからラッキーだったけれど、ずいぶんな情報戦を制する必要があるな、という感想。東京都文京区は、東京ドームが接種会場として場所を提供する名乗りを上げ話題になったり(まだ会場化していない。滅多にない機会なのでドームに入ってみたい気持ちはあった)、万が一に備えて手術でお世話になった大学病院の集団接種会場で打つのが良いかな?など考えもしたけれど結局、スピード重視で友人から教えてもらった、初めて名前を知った新しいクリニックで接種することになった。
想像より接種時期が早まったので、2回目接種後しばらく経過するまで禁酒を決め(アルコールの抗体への影響は噂レベルだけれど、願掛けとして)、強く副反応が出た時のために解熱剤、冷えピタ、ポカリスエットなど準備。腕が上がらなくなるから利き手ではない腕に打つべしとよく聞くけれど、私は両効きで、
右:筆記具を使う、お箸を使う
左:それ以外のすべて
という生来の左利きを一部右利きに矯正したタイプで、どちらが使いづらくなったら生活に影響が大きいか?をシミュレーションし、結論として右腕に打つことに決めました。筆記具を使う機会は少なく(タイピングは左でもできる)、お箸は使えなくとも、スプーン・フォークは左右両方で使えるから大丈夫。便利なのか何なのか特殊な悩みだとは思うけれど、とにかく副反応が強く出ないことを祈るのみ。
いろいろ想像して準備し、接種がもたらす安心感には泣きそうな気持ちになるけれど、未体験のワクチンが身体に入ってくるって、冷静に考えれば怖い気持ちが芽生えてしまうので、漫才など笑える動画でも観て明るい気分のままさっさと寝てしまおうと思っています。『コンテイジョン』は接種済みの証としてバーコードつきのリストバンドを装着し、会えなかった人物同士が、お互いリストバンドを見せ合って触れ合っていた描写がエンディング近くにあったけれど、接種率が低い街でまさかまさかオリンピックが開催される展開は当然描かれておらず、これまでガイドのように役に立ってくれた映画の先の、未知の続編を生きることになる、この夏の都民であることよ。
写真:期日前投票の帰り、文京シビックセンター(区役所)にて。公式キャラクターの名前とか、知らないし話題に上がったこともない…