Weekly28/ベイビー・ブローカー/水無月
是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』、初日初回に鑑賞。TOHOシネマズ日比谷にて。
ベイビーボックスに置いた赤ちゃんを巡るロードムービー。それぞれが産まれる・育てる・生きることについて異なる意見や感情を持つ登場人物がひとり増えるごとに、次第に分厚い「社会」が自然と形成され、「捨てるぐらいなら産むな」から始まった道行きが、最後にはまったく違う着地を見せていく、見応えのある物語だった。
物語の中心にずっといる、ベイビーボックスに赤ちゃんを置いた母親・ソヨン役であるイ・ジウンがとりわけ素晴らしい。ソン・ガンホはじめ豪華な俳優陣の演技との反応の結果であることは確かだけれど、気がつけば他の俳優が背景に後退し、イ・ジウンばかり目で追ってしまう。
産んだものの母親になることには躊躇していたソヨンが、出会う人々の人生に触れ、やがて万物の母かのような色を帯びていく。その過程が大袈裟な喜怒哀楽を見せるわけでもない、微細な視線や仕草の集積によって表現される。赤ちゃんを捨てるほどの事情のある荒んだ半生のソヨンを演じながら、そこはかとなく漂う可憐さはおそらくイ・ジウンが図らずとも持っているもので、こういうのを俳優の「ニン」と呼ぶのかな。物語も装置もなくとも、ただ彼/彼女が映っているだけでじゅうぶんに映画と呼べるのではないか?という俳優にまれに遭遇するけれど、イ・ジウンはきっとそんな人なのだろうと圧倒された。
https://gaga.ne.jp/babybroker/
<最近のこと>
夏越の大祓。根津神社では今年も、神事は神職のみで執り行われ、茅の輪は設置しておくから各自好きにくぐってねスタイルの6月30日。八の字にくぐった時間帯、体感温度42℃だって。無病息災を願いに行ったら熱中症寸前になってしまう危険な暑さ。
上半期、オミクロン蔓延期はコロナ禍始まって以来最高にウィルスが身近に来た感があり、私も濃厚接触疑いで抗原検査したものの無事だった。東京に暮らしてこれまで罹患していないことが、日々行動に気をつけた結果なのか、ただのラッキーなのか判断がつかない。下半期も自分と周囲の無病息災を祈るのみ。シンプル神頼み。
水無月は東京で買える場所が少ない和菓子だけれど、近所のつる瀬で販売されており、ありがたい。
唐突に毛色の違う話題で恐縮ですが、上半期ベストっぽいものが溢れる時期でもあり、最近聴いた『ロングコートダディのオールナイトニッポン0』が上半期聴いたラジオ随一の神回だった。
https://radiko.jp/#!/ts/LFR/20220626030000
芸人コンビでネタ作ってるほうVS作ってないほうの対立がしばらく前、随所にあったけれど、ふたりは既に次の次元に移行していて、ネタ作り含め相方が全部やってくれるから、自分は相方の好きなお菓子を焼く、という役割を見つけてラジオでも披露。カヌレを焼きながらラジオの時間が進むものの一部始終は映らず、声だけで説明される。ラジオだからね!という前代未聞の展開。
最近面白かったもの情報交換として紹介した友達もハマったので、ここにも記録。笑いの感覚って人それぞれまるで違うから、薦める時は緊張します。これから疲れやさぐれ気分の時は何度も聴こうと思う。ありがとうロコディ、優しくて可愛い世界。