Weekly28/サイドカーに犬/吾妻鏡

 

ご無沙汰しています。お元気ですか?私は元気です(山に向かって)。Weeklyなどと言った舌の根も乾かぬうちに停止してしまい、鈴虫鳴く中、これを書いています。

 

第7波、東京の感染者数が報じられると東京以外の人は、東京の人々よ、どういう生活なの…と心配されるかもしれませんが、住人としても自分が感染していない(たぶん)のが不思議なぐらい身近に迫っている。体感として第6波終了時点で周囲で感染歴のある人はだいたい20%ぐらいだったのが、第7波現時点で40〜50%ぐらいまで上昇したかな、という感じ。7・8月は陽性者続出で仕事がまわらなくなるのをフォローしたり、回復したものの後遺症で倦怠感が強い人とのミーティングがキャンセルされたり、という日々だった。外出意欲もさすがに減り、10月の映画祭の時期には気兼ねなく映画館に行けるほど減っていればいいですね、という自分内ムードです。

 

こんな時にありがたいのが、今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』がとってもとってもとってもとっても面白いことなのだけれど、ある時ふと、脚本・三谷幸喜なのだから、竹内結子がキャスティングされる世界線もあっただろうと、いきなりその不在を寂しく思った。どの役も見事なキャスティングだけれど、政子(小池栄子)や、りく(宮沢りえ)が竹内結子だったら、それもまた素敵だっただろうし、最近登場したのえ(菊地凛子)にもハマりそう。他のどの役だとしても、画面に登場するだけで華やいで悪い女も、賢い女も、企む女も、裏表ある女も、きっと毎週日曜が楽しみになるような演技を見せてくれたに違いない、ずいぶんな俳優を失ったのだなぁと、妄想しただけなのに哀しみが重くのしかかってきた。

 

何か竹内結子の映画を観ようと検索してみて、未見の『サイドカーに犬』を再生すべくクリックしたら竹内結子が動き出したので、映画って生存の記録だし、指先ひとつでもう会えない人に会える配信って便利だとしみじみした。

 

『サイドカーに犬』、竹内結子は古田新太の愛人で、妻が怒ってひとり出ていった後、残された子供たちにご飯をつくるために登場するヨーコさんという役で、厳しめに躾けられた少女が、のびのびと奔放なヨーコさんと出会って変わってゆくひと夏の物語だった。

 

ヨーコさんはドロップハンドルの軽そうな自転車を乗りこなし、料理はざっくり適当だが美味しそうで、飾り気のない装いが素の美しさを目立たせるような、魅力的な女だった。大半の人はヨーコさんを好きだろうが、どうしてヨーコさんは古田新太が好きなんだろう、と素朴な疑問が生じるが、そのあたりの経緯は説明されない。彼女の本質にリーチするには、あまりにも説明が不足している種類の女として物語の中を生きていた。

 

余白時間の隙間を縫って黙々としょっちゅう読書をするヨーコさんも度々映し出されて、ヨーコさんの魅力の大半は、たったひとりで物語と一緒に小さな部屋に籠る時間で生まれているのだろうけれど、ヨーコさんの現実世界の誰ひとりとして、その静かな部屋の扉を叩きに行こうとしないのだろうなとも想像して、今はもういない竹内結子が演じていることもあって、胸がギュッとした。

 

はからずして、夏の終わりにぴったりの映画を観た。

 


 

 

<最近のこと>

 

『鎌倉殿の13人』に話を戻して、年明け早々に読んだマンガ日本の古典『吾妻鏡』竹宮恵子版、1年間の大河ドラマの予習として、ぴったりの読書だった。人物名を覚え、相関図を脳内で描き、誰が早死し、誰が長生きし、誰と誰が殺し合い、どう歴史が流れていくのか、大まかな理解に役立った。

 

『いだてん』のようなわりと最近を描いた大河ドラマでは、突拍子もなく思えるあんなこともこんなことも史実で、記録が残っている!という楽しみ方があったけれど、鎌倉時代ぐらい遡ると、鎌倉から京が今よりずっと遠かったことによる心理的・物理的距離感から生まれる情報伝達の遅さや誤解も興味深いし、夢枕に立つ、呪い殺されるといったスピリチュアルが混じった言い伝えも面白い。登場人物たちの死因や、諍いの理由も諸説あり、真実は歴史の霧に包まれている…という感じだけれど、三谷幸喜版は玉虫色の解釈のどれも綺麗に織り込みつつも全体の流れは史実に従っている点で、なんて巧みな脚本なのだろう…と思うが、竹宮恵子版『吾妻鏡』は最初の方は『吾妻鏡』に苦戦している様子があるものの、徐々に筆が乗ってくる様子が見てとれて、下巻では好きなキャラも見つけたウキウキ感が漂っていて面白い。実朝のこと好きで描いていて楽しかったのだろうな。最近ドラマ版で実朝が登場したので、漫画のほうを思い出しながら観ている。

 

『吾妻鏡』竹宮恵子版、図書館で返却して、区民地域センターの会議室利用状況をみると吾妻鏡会と書いてあった。

 

 

吾妻鏡会、どういう経緯で設立されて、どんな活動をしているのか興味津々。図書館に行くたびにチェックするけれど、けっこう頻度高く開催されている会のようで、やっぱり今年は大河ドラマの題材だから、活動も活発なのかしら、と妄想している。

 

 

この会議室利用状況、ある日はサイコドラマ研修会って書いてあった。私が日常で目にするホワイトボードのうち、もっとも目が離せないホワイトボードなのです。

 

 

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Mariko
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