御法度

 

夜桜の下を歩くと、2月の終わり早稲田松竹で観た『御法度』、を思い出した。1999年の映画で、大島渚監督の遺作。

 

今となっては貴重な35mmフィルム上映だけれど、以前は日常的に35mmで観ていたから特に構えず映画が始まったら、あまりの美しさに驚く。喪服の質にうるさいご婦人みたいな表現だけれど、黒の質感が違う。『御法度』公開時は日本にいない時期だったので映画館で観たか記憶にないけれど、松田優作の息子がデビュー!と話題になったことは鮮明に覚えており、初めて見た松田龍平に、この世でこんなに自分好みの見た目の人類がいるのかという気持ちになった。あれから時間が経つが、今でも銀河系で一番好きな外見だと思っている。本能なので理由はない。

 

オープニングを観ながら映画の詳細を思い出し、衣裳が特徴的だった気がする…と思えばクレジットにワダ・エミと、音楽誰だったっけ…と思えば坂本龍一と映し出され、ずいぶん贅沢な映画なのだった。

 

10代の頃、市川雷蔵を好きだった時期にみなみ会館の特集に通い詰めていた。雷蔵さんも美しいけれど、当時の大映映画のリアリティを超越したセットにさらに惚れ惚れした。『御法度』開始数分で、あの頃の大映映画…例えば『雪之丞変化』(市川崑監督/1963年)みたいな質感だな、と思えば美術監督が同じ西岡善信。『御法度』、あの頃の大映のような世界観の中央に佇む、銀河系で一番好きな外見の松田龍平。私にとって、この世の春みたいな映画だった。

 

幕末の京都、新選組に若い謎めいた少年(松田龍平)が入隊することで隊の規律が乱れていく群像劇であり、衆道の物語でもある。これまで衆道の気配がなかった男も、少年のあまりの妖気に惑わされていく。しょうがないよね、松田龍平だもん。思わぬ収穫として、武田真治演じる沖田総司が溌剌とした中に一抹の凶器を漂わせており良い。漆黒の夜道に土方(ビートたけし)と夜桜が映るラストシーンも、これから幾度となく春の夜に思い出すことになりそう。

 

 

 

 

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