東京フィルメックス/あなたの顔

 

あっという間に始まって終わったフィルメックス。今年はオフィス北野騒動があって、フィルメックス開催されるのかな?と思っていたけれど無事開催された。

 

経緯はここに

https://mainichi.jp/articles/20181109/mog/00m/040/025000c

 

タイムスケジュールによると開会式は5分とあったので、5分?と訝しんでいたところ、さすがに5分ではなかったけれど、開会宣言があった前回までに比べると、ずいぶんさっぱりした内容だった。あの開会宣言が好きだった人もいるでしょうが、私はそれほどでも…だったので、むしろ今年の「いやぁ…いろいろあったけれど…とりあえず良かったです…」という主催者側のカジュアルな雰囲気に観客も「ほんまどうなることかと思ったわ…頑張ってくれてありがとう…」って、ほっこりした感じのほうが断然好きだった。

 

 

そしてあっという間に閉会式。フィルメックス、いつもコンペをほとんど観ず、閉会式で受賞作品を知ると、もし公開されたなら、その頃タイトルも変わってるかもしれないし、注意して情報を得なければ…と一瞬思うけれど、あっという間に忘れてしまうのは、映画賞の結果にたいして興味がないからだろうな。ファッションのトレンドにたいして興味がないのと同じ理由で、所詮、よく知らない他人が決めたことだし…という感じ。

 

 

フィルメックス、5本観たうち最後の1本はツァイ・ミンリャン『あなたの顔』。フィルメックス=よく喋るテカテカしたツァイ・ミンリャンを定期的に目撃すること、でもあったので、Q&Aでの登壇がなくて、今年はトークが聞けず少し寂しい。

 

12人の人々、それぞれの顔がその人の生きてきた時間を映像の中に象徴的にあぶり出していく。本年度のヴェネチア映画祭でワールドプレミアを飾った、ツァイ・ミンリャン監督待望の最新作。音楽を坂本龍一が担当。

 

https://filmex.jp/2018/program/specialscreenings/ss05

 

スクリーンの中央にどどんと大きく映し出される人々の顔。喋る人もいれば、喋らない人もいる。聞き手の存在感が消されているので、どんな質問が投げかけられているのかわからないけれど、その人の人生で起きたことが滔々と語られる。身近でもない、見ず知らずの他人の顔をこんなふうにまじまじと観察できる機会って、映画を観る時以外に、そういえばほとんどない。言葉を発しない人も、言葉を発する人と同じか、それ以上の印象を強くこちらに刻むもので、目は口ほどの物を言うということか、人の顔というのは、当たり前ながら個人史の集積だから、ただ顔が顔であるだけでずいぶん雄弁なものだな、と思った。

 

ツァイ・ミンリャン映画といえば!の俳優リー・カンションが登場しないので、もしかしたらこれは初めて観るリー・カンション抜きのツァイ・ミンリャン映画なのかもしれない、とドキドキしていたら、最後にしっかり登場した。やっぱりふたりはふたりでひとり、離れられるはずもない存在。

 

最後にようやくカメラは顔を捉えることをやめ、荘厳な内装の室内が説明なく長回しで映される。観ているうちに、私はこの場所を写真で観たことがあるはず、とじわじわ思い出していた。きっと台北にある中山堂の、私が入ったことのないホールのはず。エンドロールで確認すると、中山堂が協力しているとあって答え合わせができた。

 

中山堂に関しては、こちらに書きました。

https://cinemastudio28.tokyo/cinemaontheplanet_007_part1

 

台湾の歴史そのものを象徴するような場所だと認識しており、『あなたの顔』の最後に中山堂を映したことは、中山堂の前に映されていた人々の顔も、中山堂のように台湾の歴史そのものである、ってことかしらね、とふと考えた。ツァイ・ミンリャンに質問してみたかったな。

 

 

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