書き忘れていた映画の感想。北野武『首』は、昨秋の公開時に観て、早稲田松竹で2回めを観た。大島渚『御法度』との併映はキャストが被っているし(ビートたけし、浅野忠信)、衆道を描く点でも共通点があり面白かった。

 

私にとって北野武作品の魅力は編集で、これまでの映画のほとんどを監督本人が手がけていること。僅かな間延びも許さない、絶妙な間の詰め方は、さすが芸人、話芸が一流な人だけある。『首』の1回目を観たときは、ずいぶんもったりした映画だな…この間延びした感じは「老い」がもたらす変化なのか…と寂しい気持ちになった。

 

けれど数日経つと、じわじわもう一度観たい気持ちが芽生えてきた。加瀬亮演じる信長、最高だった。もちろん信長の実物に会った人は現世で誰もいないけれど伝え聞く常軌を逸したエピソード…蘭奢待を無邪気に欲しがるとか、比叡山を山ごと焼き討ちにするとか…から妄想した私の中の信長イメージに最も解像度高く近づいたのは『首』の信長だと思う。『麒麟がくる』の染谷将太も良かったけれど、光秀目線だからか若干エモい存在として描かれていた。信長ってそんなエモい人じゃなく、もっとドライで話が通じない感じの変な人なのでは?と思っていた。

 

線の細い加瀬亮の、すこし甲高いうわずった声の信長、そうそうそうそう!この感じ!ぴったり!と大興奮しながら2度めも堪能した。北野武は海外でも人気だけれど、海外の日本映画ファンは、信長とか秀吉とか家康とかいう男たちの物語、やたら映画化されるなぁ…日本人は彼らが好きだねぇ…って思ってるのかな。

 

 

 

 

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