アタラント号

2019年観た映画…の前に、2018年、映画納めの1本について。
イメージフォーラムでジャン・ヴィゴ『アタラント号』。言うまでもなく大好きな1本。2018年、吉凶のうち凶の比重がぐっと重く、なんなら2018年ごと丸洗いしたい気分だけれど、年の最後にピカピカの『アタラント号』を観られるなんて、終わりよければすべて良し、だったのではないか。
http://www.ivc-tokyo.co.jp/vigo/
・ミシェル・シモン&猫猫猫猫猫!人間の猫に対する扱いがワイルドでハラハラするけれど、猫の人間に対する扱いもまたワイルドで、伸びやかな対等の関係。動くミシェル・シモンの背中に涼しい顔で乗り続ける猫の足腰と執着。
・ウェディングドレスで登場したジュリエットが、船での新婚生活が始まるやいなや、船乗りといえばボーダーでしょ?とばかりに早速ボーダーを着るの、可愛らしくて素直。
・別々に眠るふたりが交互に映されるシーンのエロティックさ。目のやり場がない!と思いながら毎度まじまじと観てしまう。『アタラント号』で最も好きなシーン。
ジャン・ヴィゴ、同時公開の短編3本立ても、忘れずに観なければ。
journal

いよいよ今年も残り1週間を切った。
映画納め、映画初めの映画も決まりつつある中、何か物足りない感が漂うのは何故…と考えてみれば、今年はルビッチを映画館で1本も観ていないのでは…? これは由々しき事態。観たいよー!と調べてみたものの、かけてくれる名画座もなさそう。術もなく、youtubeで『極楽特急』の欠片を拾う、の図。あと、Herbert Marshallって画像検索して目の保養をした。が、ルビッチ不足である。
映画納めは、『アタラント号』にする予定。
http://www.ivc-tokyo.co.jp/vigo/
Pickpocket 2018

9月を療養にあて、10月から心身ともに復活するつもりだった。
10月1日、銀座で靴を2足修理に出すと、修理から戻るまでの間、秋に履く靴がないことに気づき、いくつかショートブーツを履き比べ会計してもらう段で、クレジットカードが使えない、簡単に限度額を超えるようなカードではないから問い合わせたほうが良いかもしれません、とお店の方に言われた。別のカードで支払いを済ませ、帰宅してあれこれ調べ、窓口に繋がる翌朝に問い合わせてみた。
誰かが私のカードでホテル予約サイトを通じ、タイのホテルを20万円分ほど予約したらしい。カードの利用履歴は常にチェックされ、普段の購買傾向から外れるような利用があった場合、不正を疑い、使用停止扱いにするらしい。後から振り返って不満だったのは、停止する前に一報してくれても良かったのに、という点だったけれど、確かに身に覚えのない支払いだから停めてくれて助かったことに変わりはない。
不正利用分の支払い義務は私にはなく安堵したものの、使い慣れたカード番号が使用停止になり、新たな番号でカードが発行されること、そのためあらゆる自動引き落としの手続きでカード番号を自ら切り替える必要があること、航空会社のカードだったため、マイレージの顧客番号も無効になり新たな番号が与えられること、面倒なのは古い番号で搭乗予約していたので、新たな番号に移してもらうため電話連絡が必要なこと…など…などなど…(息切れ)。
起きてしまったことは黙々と受け入れ、黙々と実行項目をこなすタイプだけれど、手術を経て、繁忙期を乗り越え、ようやく普段の生活に戻れると期待した矢先の出来事だったから、さすがの私も心が削られ、復調に時間を要した。
日々の消費のうち95%をクレジットカードおよびカードに紐付けた電子マネーで決済する生活だから、メインで使っているカードが被害に遭った今回は、却ってすぐに気づくことができて良かった、と考えるべきかもしれない。友人に話してみると、休眠状態のカードで被害に遭ったことがあるらしく、不要なカードは即刻解約すべし、との教訓を得たそうだ。ランダムに狙ってるんだなぁ。
私が好きな映画の中には、ジョニー・トー『スリ』や、ブレッソン『スリ』など、踊るような流れるような手つきでスリを働くものが多いけれど、映画で観る分には興味深くても、自分が巻き込まれると迷惑極まりない!ほんと!犯罪は!映画で観るだけでじゅうぶん!
面倒な切り替え手続きがほぼ完了した今、ふと、私のカードが不当に使われたタイのホテルの予約は有効なのか、予約してみたけれど何らかの形で返金を得るための手段だったのか、何を考えているかはさっぱりわからないけれど、犯人はどんな人なのか、ぼんやり妄想する。おそらく犯人は追跡できず、宙に浮いた支払いはカード会社が保険から賄うケースが多いらしい。
こんな目に遭ったのだから、妄想の自由ぐらい保障されるべき。願わくば、私のカードを狙った人物は、『極楽特急』のガストン・モネスクみたいな粋な男だったと。オー!ダーリン!ガストンだったらしょうがない。あの男は何もかも軽やかに盗んでゆくのよ。ハートまでもね!
……どうか、どうかこの先は平穏かつ健康に暮らしてゆけますように……ヨレヨレ……。
moonbow cinema 『オリンピア』二部作

時間が経ってしまいましたが、9月末、moonbow cinemaで『オリンピア』を鑑賞したことを記録しておきます。moonbow cinema 3周年、10回目の記念すべき上映。おめでとうございます!
『民族の祭典』『美の祭典』の2部作から成る1936年ベルリンで開催されたオリンピックを女性監督レニ・リーフェンシュタールが記録した『オリンピア』、神楽坂の古い一軒家で上映されました。
詳細はこちら
https://moonbowcinema010.peatix.com/view
住宅地らしい細い道を歩き、本当にここで合ってるのかしら…moonbow cinemaのロゴも入り口にあるし…と、おそるおそる入り、案内していただいたのは床の間もある畳敷きの和室!座布団ではなく椅子があったけれど、なんとも実家っぽいというか、ノスタルジアが否応なしに呼び起こされる空間。
この夏、あまり出かけられなかったかわりに、部屋のスクリーンでW杯や甲子園中継を観る時間が長かったせいか、スポーツ(観戦)の夏から、スポーツ(観戦)の秋にスムーズに移行したような錯覚。見知らぬ観客の方に混じり、日本のメダル争いをハラハラ見つめ、勝利した瞬間には、やったね!!と叫びたくなるような(叫ばなかったけれどもね)微かな連帯感を感じるユニークな映画体験でした。

観ながら考えたことメモ。
・オリンピックを記録した映画では、市川崑『東京オリンピック』や、クリス・マルケルが撮ったヘルシンキ・オリンピックについての映画を追ったドキュメンタリー『オリンピア52についての新しい視点』(メゾンエルメスで鑑賞/詳細はこちら※)と独特の作風の映画ばかり観ていたせいか、レニ・リーフェンシュタールの撮るこのベルリン・オリンピックは政治と切り離し映画そのものをじっと見つめてみると、スポーツと躍動する人間の身体にフォーカスしたシンプルなドキュメンタリーだな、と思った。
・興奮する客席を捉えたショットも多く、日本人選手を応援する日本人も多く映る。この時代にベルリンでオリンピックを観戦する日本人とは、ずいぶんな特権階級なのではなかろうか。選手の家族?ヨーロッパ駐在の外交官?
・観客のファッションも着崩さないきっちりした正調の洋服で、どのタイミングから観客たちはカジュアル化したのだろう。オリンピック観客席の服飾史というテーマでオリンピックドキュメンタリーを観てみるのも面白そう。
・現在では当たり前となった、競技をリアルタイムでカメラで捉え、スタジアム内のビジョンに映し出す技術は当然1936年には存在せず、広いスタジアムで観客は双眼鏡を握りしめながら観戦する。そして競技の決着がつかず日が暮れると、ナイター設備も万全ではないスタジアムは文字どおり薄闇に包まれ、選手はかろうじて競技はできている様子だったけれど、観客にはどれぐらい見えていたのだろう。
・1936年のオリンピック、女性の種目数は現在より少なかったのだろうか。映画の時間配分としてはずいぶん男性偏重で、女性は添え物、競技場の華のような扱い。それは実況にもあらわれていて、実況担当の男性の声がどれだけ興奮しても、男性選手は最後まで名前と国名がきちんと呼ばれるのに対し、女性は徐々に「次はハンガリー娘」「優勝はドイツ娘!」と娘っこ扱いされ、2020年にあれをやったら大炎上しちゃうな、と思いながら観た。
・刻々と完成形に近づきつつある2020年東京オリンピックのスタジアムの建設現場をよく眺めるけれど、マラソンや短距離走だけがオリンピックではなく、馬術もセーリングもオリンピックなのだ。ああいった競技、東京のどこで開催されるのだろう。
・オリンピックを観戦するヒトラーの姿が頻繁に捉えられている。女子リレー、ずっとトップだったのに最後にバトンを落としてしまったドイツの選手の姿と、憤って多動になるヒトラーの姿が交互に映っていたけれど、あの選手、あの後、無事だっただろうか。
・30年代の映画、ベルリン出身となるとルビッチを想起するけれど、レニ・リーフェンシュタールはルビッチの10歳年下。アメリカに渡ってナチスを強烈に皮肉ったルビッチと、ベルリンで映画を撮り続けたレニ・リーフェンシュタール。どちらの運命も数奇で、それぞれの人生はまったく別物だ。当たり前だけれど。
休憩中、みづきさんが回覧してくださった『オリンピア ナチスの森で』(沢木耕太郎著/集英社文庫)は、このベルリンオリンピックに参加した日本のアスリートたちを追ったノンフィクションで、レニ・リーフェンシュタールへのインタビューも収録されているとのこと。映画を鑑賞した後に読むと最適だそうです。読んでみよう。
秋のmoonbow cinemaはオリンピック

連載『moonbow journey』で活動を綴っていただいているmoonbow cinema、秋の上映のお知らせがありました。
詳細はこちら
https://moonbowcinema010.peatix.com/view
9/29(土)、上映作品は『民族の祭典』『美の祭典』。1936年のベルリンオリンピックを記録した映画。不思議と長さを感じさせない面白さがあった記憶。日本公開時とてもヒットしたと聞いていたけれど、冷静に考えてみて、テレビもなかった時代、オリンピックの結果は新聞やラジオ音声で知るしかなく、映像で観ること自体、珍しかったんじゃないかなぁ…と想像したら、wikiにそう書いてあった。
写真は北京のオリンピックスタジアム界隈。これ、手前の箱型の、壁面に水の波紋のような模様があるブルーの建物はオリンピック水泳競技に使われたプール。その奥に平行するようにほぼ同じ高さでマンション、オフィス用の民間の建物があり、その先頭が龍の頭のデザイン。こんなふうにスタジアム広場から眺めると、水辺から龍がニュッと頭だけ出しているように見えるの…と友達が説明してくれた。龍の頭部分のマンションだかオフィスだかの部屋、べらぼうに高いんだろうな…。
オリンピックが街の景色をがらりと洗い替えてゆくことを私は北京で知り、まさか東京でも味わうとは思っていなかった。2020年、東京はどんな顔をしているんだろうと、どこを見渡しても工事中だらけの街を見て、ふと考えてしまいます。
1936年のベルリンオリンピックを、開催当時の東京の生活を連想させるような神楽坂の古民家で観るmoonbow cinema、映画&スポーツの秋のはじまりにぴったりでは!予約は明日9/22(土)正午スタートとのことです。
レッドカーペット

メールを書いて送って、タイムラインを見たら、ちょうど濱口竜介監督がカンヌのレッドカーペットを歩いていた。tofubeatsの歌が流れていた。タキシード姿で髪を撫で付けた東出くん、ルビッチ映画に出てきそう。『生活の設計』、似合いそう。
ヘイズ・コード研究

と、いうほどの真面目なことではないけれども。
午後、古い日本映画をDVDで観ていて、物語も俳優も素晴らしいのに、ひたすらテンポが悪く、それがゆえに映画に乗り切れなかった感が気持ち悪く、発作的にルビッチ=テンポの神様を求めた。久しく観ていないなぁ、観たいなぁ。
「シェイプ・オブ・ウォーター」を観た後、監督インタビューをいくつか読んだ。デルトロのインタビュー、どれも内容が違っていくつか読んでも全部違うから面白いの。特にこのインタビューが読みごたえあり。
https://www.cinematoday.jp/interview/A0005905
とりわけ興味深かったのは、
Q:では次回作のためにどんな準備をしているのですか?
今は1930年代に作られた映画をたくさん観て、次回作への刺激を受けている。ハリウッドでは1934年にヘイズ・コード(道徳的な側面から映画を検閲する制度)が実施され、それ以後は映画にさまざまな制約が作られた。ヘイズ・コード以前の映画には、悪い者が勝利して善人が敗北したり、女性が2人の男を愛したり、不倫をしたりと、自由な発想で作られた大人の映画がたくさん存在した。そうした映画の可能性や、映画本来の純粋な美しさを、今僕は吸収しているところだよ。
という箇所。反射的にルビッチ映画のいくつかを連想した。デルトロ、ルビッチ観てるかなぁ。デルトロのルビッチ論を読みたい。「女性が2人の男を愛したり」=「生活の設計(1933年)」のことでは?
ルビッチとヘイズ・コードの関連には興味津々で、文献を読むほどではないけれど、時折ざっと検索して知識欲を満たしておる。「生活の設計」で、ミリアム・ホプキンスが「NO SEX!」って言い放った時、30年代にそのセリフはOKだったのか!という事実にちょっと感動。可能だったのはヘイズ・コード施行前の映画だったから、なのかな。「天使」は1937年のため、ヘイズ・コード施行後の映画で、ディートリッヒ演じるエンジェルは、夫のいる身でありながら、別の男に心を動かす筋書きだけれど、コード的にOKだったのか?OKだったから21世紀に私が無事、観ているのだろうけれど…と思ったけれど、「天使」はもともと舞台だったのを映画化した物語で、舞台では娼館で出会う設定だったところを、映画ではロシア大使館と置き換え、舞台では明らかに情事があるのを、映画では食事にとどめる等、ヘイズ・コードを意識した書き換えがなされている事実を知った。…知識欲が満たされた興奮!
ルビッチが傑作を連発していた頃と、ヘイズ・コード施行前・後が重なるので、今後もこの極私的かつざっくりした研究は続く…。
ルビッチ映画はとりわけ女性が魅力的で、魅力の理由は彼女たちがもれなく精神的に自立した存在であるから、だと思うけれど、ほとんどが上流階級の物語で、女性たちは働かず、執事や召使がいるため家事も一切しない。豪華な生活は社会的地位の高い夫の稼ぎによるもので、女性の自立=経済的自立とセット、という論調からは外れる。確かにルビッチ映画の女たちは、経済的自立はしていないけれど、精神的自立はしている、という点も興味深く、こちらも極私的かつざっくりした研究の対象なんである。
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