首

書き忘れていた映画の感想。北野武『首』は、昨秋の公開時に観て、早稲田松竹で2回めを観た。大島渚『御法度』との併映はキャストが被っているし(ビートたけし、浅野忠信)、衆道を描く点でも共通点があり面白かった。
私にとって北野武作品の魅力は編集で、これまでの映画のほとんどを監督本人が手がけていること。僅かな間延びも許さない、絶妙な間の詰め方は、さすが芸人、話芸が一流な人だけある。『首』の1回目を観たときは、ずいぶんもったりした映画だな…この間延びした感じは「老い」がもたらす変化なのか…と寂しい気持ちになった。
けれど数日経つと、じわじわもう一度観たい気持ちが芽生えてきた。加瀬亮演じる信長、最高だった。もちろん信長の実物に会った人は現世で誰もいないけれど伝え聞く常軌を逸したエピソード…蘭奢待を無邪気に欲しがるとか、比叡山を山ごと焼き討ちにするとか…から妄想した私の中の信長イメージに最も解像度高く近づいたのは『首』の信長だと思う。『麒麟がくる』の染谷将太も良かったけれど、光秀目線だからか若干エモい存在として描かれていた。信長ってそんなエモい人じゃなく、もっとドライで話が通じない感じの変な人なのでは?と思っていた。
線の細い加瀬亮の、すこし甲高いうわずった声の信長、そうそうそうそう!この感じ!ぴったり!と大興奮しながら2度めも堪能した。北野武は海外でも人気だけれど、海外の日本映画ファンは、信長とか秀吉とか家康とかいう男たちの物語、やたら映画化されるなぁ…日本人は彼らが好きだねぇ…って思ってるのかな。
銀座の葉桜

在宅仕事を早めに切り上げ、自宅から銀座まで1時間ほど歩く。歩きやすい靴がもっと欲しい。酷使したバッグのストラップとの連結部分の革が切れたので、TOD’Sの路面店に修理相談に。伝票の故障理由に「ご愛用により」と書かれていた。確かにご愛用しすぎていた。日比谷に向かって歩くと、桜は葉っぱと半々の状態。今年の桜、七分咲きぐらいの開花状態でもすでに葉っぱが出ていた。温暖化の影響か、開花が遅かったせいか。見たことのない桜だった。
そのままTOHOシネマズ日比谷で『パスト ライブス/再会』を観て、これが初監督品というセリーヌ・ソン監督のプロフィールを調べた。英語版のwikipediaに情報があって、主人公と似た生い立ちなんだなぁ、と知ると同時に、
https://en.wikipedia.org/wiki/Celine_Song
She has hinted at her Western name being a reference to the character in Celine and Julie Go Boating (1974) directed by Jacques Rivette.
という箇所に、おっ!となる。「セリーヌ・ソン監督のセリーヌというウェスタン・ネームはジャック・リヴェット監督『セリーヌとジュリーは舟でゆく』の登場人物ににヒントを得て名付けられた」とあって、映画の中でもカナダに移住する前の幼い姉妹が自分で自分のウェスタン・ネームを考える場面があった。私はその場面を観ながら、自分なら自分にどんな名前をつけるかな、と考えていた。
https://happinet-phantom.com/pastlives/
混乱

今日の桜。暑くて半袖で過ごした。この間までウールのコートで震えてたというのに…。
鑑賞から一夜明けて『オッペンハイマー』、初見での私の理解度50%の理由、俳優陣に「あれ?久しぶりに観たら今こんな感じ?!ノーラン新作だなんてご活躍で何より!」と感じる対象が数名いて、一瞬その混乱の感情を処理している間に物語が次に進んでいたせいもある。
まずゲイリー・オールドマン(トルーマン大統領役)今そんな見た目なんかい!って、ぽかーんとした。あれゲイリー・オールドマンってすぐ気づく人いる?ジョシュ・ハートネット(アーネスト・ローレンス役)久しぶり!かっこいいまま貫禄増したね、と懐かしい気持ちになり、ベニー・サフディ(エドワード・テラ―)はサフディ兄弟としてインディーズ映画監督としても活躍して好きな監督なので、ノーラン映画にサフディが!と興奮。さらにさらにデイン・デハ―ン(ケネス・ニコルズ)!デイン・デハ―ンやないか!『クロニクル』(めちゃ面白い青春超能力映画です)の!って大興奮。
オッペンハイマー役をキリアン・マーフィーが演じること以外、キャストを直前予習まで知らずにいたので俳優陣の豪華さに驚いたものの、クリストファー・ノーラン新作なんて誰でも出たい映画、配役も豪華に決まってる。
という感じなので、俳優に対してニュートラルな感情を持っていたほうが理解度が深まるはず。みんな個性派と呼ばれそうな癖強めの俳優陣だけれど、ピタッと役にハマっていて素晴らしい。
https://note.com/dj_gandhi/n/ncf406716af1f
予習は有効

日比谷のIMAXで『オッペンハイマー』観てきた。感想はのちほど書くとして、これから観ようと思っている方にメモを共有!
https://www.oppenheimermovie.jp/
【上映環境について】
・IMAXで観るか?問題について、『オッペンハイマー』は『DUNE』ほどIMAXを必要としない映画だと思う。ほとんど会話劇。スクリーンサイズより、音響の良さを優先したほうが良いかも。音の演出が素晴らしい。
・今のところ字幕上映ののみで日本語吹替はない?はず。会話劇でセリフ量が膨大かつ専門用語、人名、地名と固有名詞がたくさん出てくるので、集中力のある時に。上映時間は180分。
【予習について】
・クリストファー・ノーランの映画は必ず事前に何かしら予習します。今回はまず、NHKで放映されたドキュメンタリー『マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪』。地上波で2月に放映され、私はU-NEXT経由で入っているNHKオンデマンドで観ました。
https://www.nhk.jp/p/butterfly/ts/9N81M92LXV/episode/te/68Y8NMXGPK/
・ドキュメンタリーは物理学者としてのオッペンハイマーの情熱と苦悩に迫るもので、このドキュメンタリーを観た上で映画『オッペンハイマー』を観るには、公式サイトの説明(以下)にある、
オッペンハイマーが大学で教鞭をとり始めたのは株価暴落をきっかけとしたアメリカ史上最大の経済恐慌、大恐慌の始まった1929年だった。恐慌は世界に広がり、第一次大戦の賠償金支払いで行き詰まるドイツにヒトラー率いるナチスが現れる。ナチスは第二次世界大戦を起こし、当初、戦況を優位に進める。このドイツに負けまいとアメリカが完成を急いだ原爆は、1945年、日本を降伏させるだけでなく、一瞬にしてアメリカをかつてない超大国にさせた。ただ、その4年後にソ連も核実験を成功させる。米ソが核兵器で脅し合う冷戦の中で反共思想がアメリカでは一気に広がっていく。ヒステリックな「赤狩り」の渦中で、オッペンハイマーも共産主義者との過去が問われていく
。
↑こちらの「ただ、その4年後に」以降がドキュメンタリーではインプットできず。米ソ冷戦、赤狩りが映画の前半から要素が散りばめられ、後半の展開のメインになる。それを含めてとても良い予習になったのが、登場人物紹介が丁寧なこちらのnoteです。助かりました!ありがとうございます。
・クリストファー・ノーランらしく複数の時勢が入り混じり、登場人物も非常に多く、彼らがしっかり名乗って立場を明らかにするわけでもなく映画が進んでいく。時勢については
カラー:オッペンハイマーのソ連スパイ疑惑の聴聞会(1954)と、その回想
モノクロ:ストロースの商務長官就任公聴会(1959)と、その回想
で区分されている。ありがとうノーラン、親切!(やけくそ)
…と、ここまで頭に叩き込み映画に臨んだけれど、私の理解度は50%ぐらい?でも予習しなければ理解度30%ぐらいだったかと思うと予習は有効。少し時間が経過した後に、2度目を観たい。でも完全に理解できなかったからといって不満が残るわけでもなく、個性派俳優がピタッと適材適所に配置された気持ちよさ、映像、音楽、衣装、映画の各要素がいずれも魅力を放っていて、ああ!観て良かった!と今は思っている。咀嚼して感想書きます。
Cinema memo: 成功したオタク

週末の上野公園。桜はこれからです。曇り空の日曜、朝9時台にスワンボートを漕いでいる人々がそれなりの数いることに驚き。早起きして上野でスワンボート!って楽しみにしてたのかな。
3月30日から公開されるドキュメンタリー映画『成功したオタク』、観に行けるか微妙なので後で配信してほしい…必ず観ます。
https://alfazbetmovie.com/otaku/
韓国のドキュメンタリー。ある日突然、推しが性加害事件で逮捕された、そのファンが撮った映画。これこそ今観なければいけない映画なのではないかと公開の第一報を聞いてから思っている。同時に思い出したのは作家の柚木麻子さんが書いたこちらの文章。
「彼」自身の言葉で、語るべきではないか
https://nhkbook-hiraku.com/n/n2e8e11f7d8fd
柚木麻子さんが「彼」を好きなことは以前から知っていたけれど、あまりに語り口がユニークで、エンタメ性に溢れていたので勝手に、どこかネタのように捉えていた。「彼」を好きな気持ちの背後に、そんな切実さがあることを、この文章を読んで初めて知った自分を恥じたと同時に、誰かが誰かを好きな気持ちだなんて、理由があってもなくても、他人からは何ひとつわからないことをあらためて思い知った。
BLUE GIANT

早稲田松竹ジャズ映画特集で、アニメ『BLUE GIANT』。
仙台の高校生・宮本大は、世界一のジャズプレーヤーになると決意する。卒業を機に上京した彼は、ライブハウスで出会ったピアニストの沢辺雪祈をバンドに誘う。やがて、彼は高校の同級生・玉田と雪祈の3人でバンドを組むことになる。
漫画を読む習慣がなく原作は読んでおらず。物語はシンプルなので、予備知識が何もなくても全く問題なし。声優をつとめる俳優陣、宮本大(山田裕貴)、沢辺雪祈(間宮祥太朗)、玉田(岡山天音)がみんな、特に岡山天音くんがハマってて良かった。音楽は上原ひろみが担当。主役・宮本大のサックスはオーディションで決定した馬場智章とのこと。
公開時、良い音で鑑賞できるスクリーンを求めてタイムラインが賑やかだった記憶があり、配信が始まったけれど、映画館で観られて本当に良かった。少年漫画の主人公要素を詰め込んだ宮本大のまっすぐでシンプルな人生。目標がはっきりしているので、人生の帰路に立たされた時に自分の夢を最優先して情に流されないドライな感じ、「誰もが平伏す才能」が前提にあるとして、わかりやすいキャラクター。私は都会的でクールな態度をとりながら、実は苦労人で質素な生活を送る沢辺雪祈が魅力的だと思った。映画は大の物語として続きがあることが示唆されて終わり、今作は沢辺雪祈の物語だと思った。
『BLUE GIANT』、とても楽しんだけれど、おそらく私がジャズという音楽に興味はあっても、ジャズミュージシャンの卵たちの人生の物語には強い興味がない、という距離感がもたらす楽しさだと思う。私はお笑いがとても好きだけれど、芸人たちの苦労が昇華される物語や、苦悩そのものを描くフィクションには全く興味を持てなくて、『火花』とか『浅草キッド』とか観るぐらいなら、自分が好きな芸人のYouTubeを観るほうがよほどリアルで面白いと思っており、逆の感情がジャズ、『BLUE GIANT』に対して生じたのかも。愛や興味の対象との距離感と、どこまで含めて消費したいか。
白鍵と黒鍵の間に

先日、早稲田松竹のジャズ映画特集で。冨永昌敬監督『白鍵と黒鍵の間に』。ジャズピアニスト南博さんの自伝的エッセイを映画化。「南」と「博」の一人二役を池松壮亮が演じる。1980年代の銀座を舞台に、若きピアニストの運命が動く一夜を描く。
なんとも感想をまとめるのが難しい映画で、1980年代の禍々しさを表現するためかキャスト全員が少しずつ過剰な演技をしている気がするし、南と博を同じ俳優が演じることで、えーとこれってどっちでどういう状況だっけ、と理解が追いつかない部分もあったけれど、総じて「珍品」として愛でたくなる不思議なチャーミングさがあった。この感触を解きほぐすべく「考察」を始めそうな陣営を、そんな子供っぽい野暮なことやめなよ、って鼻で笑いそうなムードがある。
南博さんの原作エッセイは2008年、刊行当時買って読み、その後出会った南博ファンの友人に譲った記憶がある。その前から南博さんのライブには時々行っており、演奏から入ってエッセイで人物を知る順番。2005年頃、当時の私は会社員と学生を同時にやっており、自分もどうせ眠らない(眠れない)から24時間営業の街に住んだほうが便利!との合理的理由で新宿に住んでおり、たまに何もかもにうんざりしてすべてを投げ出し映画館か、末広亭で落語か、新宿ピットインでジャズかの選択肢から、財布と携帯だけ持って歩いて遊びに行く、そんな夜に南博さんのピアノを何度か聴いた。
東京生まれ、映画の中にも「新橋のおばあちゃん家に…」というセリフがあったけれど、南博さんは演奏も人物の印象も、ごてごて飾るでもなく、軽やかで気持ちのいいパリッと糊のきいた浴衣みたいな、言語化が難しい「江戸っ子」というものを体現する存在として私の印象の中にいる。別の言葉にすると「ノンシャラン」なのかもしれない。
何この変な映画!と楽しんだ最後にエンドロールで流れる「Nonchalant」、ピアノはもちろん、口笛も素敵だった。また演奏を生で聴きたい。
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