memorandom.tokyo連載 One book,One movie 第2回

memorandom.tokyoで連載中の「One book, One movie」第2回更新されました。
眺めのいい窓辺でぼんやり妄想、考えごとする時間を愛してます。第2回は夏に行った台北、老舗ロシア料理屋の窓辺でつらつら考えたこと。題して「亡命とマシュマロ」、お楽しみいただければ幸いです。
アーカイブはこちらから
http://www.memorandom.tokyo/archive
ん?「One book, One movie」が何故かarchivesに表示されていない…第1回はこちらです。
http://www.memorandom.tokyo/onebook-onemovie/1388.html
ミュージカル特集ふたたび

5月に行った喫茶you。混んで並んでいなければ、銀座界隈での映画前の腹ごしらえとして最高!
度数の合ったレンズで見る世界は昨日よりクリアで、心なしか身体への負担も軽減したように思う。検査は大事。
シネマヴェーラのサイトをチェックしていたら、ぼやぼやしているうちにミュージカル特集が始まっていた。
http://www.cinemavera.com/programs.php
1度しか上映がない「鋪道の囁き」、去年のこの特集で観て再見したいけれど、タイミングが合わない。戦前(1934年)にこんなにハリウッドへの憧れを全開にしたモダーンなミュージカルが作られていたのだね。そして洋装の女性への「この西洋乞食!」ってパンチの効いた罵り言葉、それから中川三郎!ルビッチ映画に登場しても違和感のなさそうな佇まいの俳優(というより本職はダンサー)。などなど見所満載でオススメです。去年書いた感想はこちら。
洋装の中川三郎が、部屋に帰って和装に着替え、ポマードてかてかの頭のまま眠る…!という場面、最大の再見したいポイント。身のこなしの綺麗な俳優の、撫でつけた髪に弱い。
1935/2046

北京の映画博物館で見つけた、1935年の中国映画のパネル。大きめのドットのチャイナドレス。日本で観られる中国映画なんて本当に少なく、クラシック映画なんて観る機会がないので、どのパネルも面白かった。
「メットガラ」を観ていると、王家衛の落ち着いた的確なアドバイス、さすが中国上下5000年の歴史の裏付けを感じさせる金言の宝庫…と思うと同時に、「花様年華」のファッション界への影響の強さを思い知る。柳が風にたなびくようなマギー・チャンの美しさに異論はないけれど、みんなもうとっくに忘れてそうな続編?「2046」、私は好きだった。物語が破綻気味なのは王家衛映画の常だから特段驚かず、SF要素もある映像の美しさにうっとりした。そしてチャン・ツィイー!
「2046」のチャン・ツィイー、好みはありましょうが「花様年華」のマギー・チャンとはまた違う系統の中華圏の女の美しさをこれでもかと見せつけ、体幹のしっかりした自己肯定感の高そうな体つきのせいか、王家衛映画常連の女優たちと比べても世代がいくつか若いせいか、ごうごうと新風を吹き込んでいて素晴らしかった。
メタリックなチャイナドレスに、たっぷり塗ったマスカラ、シャラシャラ揺れる煌めくイヤリング…。ま、チャン・ツィイーが好きなだけなのだけれど。他の映画はamazonビデオに揃っているのに、「2046」がないのは、ジャニーズの堅牢な壁という理由でしょうか。
後味

ルビッチ特集、未見だった映画を観ることができた歓びはもちろんのこと、何度観ても素晴らしい不朽の映画群をスクリーンで観ることができた恍惚。ハーバート・マーシャル好きなので(ダーリン!)「極楽特急」「天使」は不動の首位タイながら、今回どういうわけか「ニノチカ」がとりわけ染みた。物語だけならば「ニノチカ」がベストかもしれない。
最近読んだこの記事が良かったので
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO15940270R00C17A5BE0P00
同語反復的だが、「世界文学とは何かと考えることが世界文学である」というのが今の状況だ。文学の道を極めた偉い先生が「これを読めば大事なことは大体わかるから読んでおきなさい」というものをありがたがるのではなく、読み手一人ひとりが自分にとって切実な作品を手にしながら、自分だけの地図を作っていくことが大切だと思う。
世界文学について考える際に大きな問題となるのが翻訳だ。翻訳という営為の本質は、容易にはわかり合えない二つの文明圏をつなぐこと。「うまいか下手か」という技術の話ではない。
ついに「亡命ロシア料理」を開き、読み始めた。沼野充義さん翻訳。目次から漂うアウラ、既に只事ではない。「容易にはわかり合えない二つの文明圏をつなぐこと」、「ニノチカ」はまさにそれを描いた物語だものね。
通ヴェーラ

通勤・通学・通ヴェーラ。4日連続でシネマヴェーラに通い、通ヴェーラ連続記録を軽やかに更新。ルビッチ・タッチ第2週、3日分を手帳に書き込み、制覇!と悦に入っていたものの、何かおかしい。小骨が喉に引っかかったような…。あれ、「極楽特急」を逃すところだった。多くの愛を集めようと調子に乗った結果、本命を逃すような気分ってこんなかしら。愚かだわ。知らんけど。
ルビッチ映画に登場する男たちの類型はありながら、微妙なキャラクターの差異を、モーリス・シュヴァリエ、メルヴィン・ダグラス、ハーバート・マーシャル…とルビッチ好みの俳優に割り当てるのが上手く、みんな魅力的だけれど、入れ替えは不可能。メルヴィン・ダグラスの演じる役はメルヴィン・ダグラスが最も似合うし、ハーバート・マーシャルも然り。
オー!ダーリン!ハーバート!久しぶりにスクリーンで会えて嬉しかった。「極楽特急」で見逃せないのは、最後、リリー(ミリアム・ホプキンス)と車の後部座席に座るガストン(ハーバート)の、わー、リリー怒ってる…怒らせちゃった…どうしよう…(困り顔)…あ!(ひらめき顔)と表情が変わる瞬間。困り顔がとってもキュートなので注視されたい(細かすぎて伝わらない説明)。
黄金週間

今年は東京で過ごす黄金週間。Cinema Studio 28 Tokyoの一部メンバーで、問屋がたくさんあって職人さんもいる東京東側へ。初めて行く場所ばかりで楽しい。東京で引っ越しするたび東へ東へ移動しているけれど、もはや東以外で暮らせる気がしない。早朝からサクサクと巡り、お昼でも…と時計を見たらまだ10時半!喫茶店もモーニングメニューで、モーニングを食べた。朝ごはんを二度食べた。秋葉原近く、岩本町のアカシア。
渋谷に移動し、ルビッチが始まるまでの間、ブックファースト渋谷文化村通り店をぶらぶらしていたら、唐突に閉店の告知が貼ってあってびっくりした。地下からアクセスできて、10時から開いてて、映画館に行く前にしょっちゅう立ち寄っていたけれど、同じ場所にヴィレッジヴァンガードがオープンしても行かないだろう。このところ、「慣れ親しんだ東京」が消えていくスピードは加速している。
シネマヴェーラのルビッチ特集、黄金週間のラインナップの黄金っぷりが眩しい。一部の映画は時折、禁断症状が出た頃にDVDで観ることもあるけれど、久しぶりにスクリーンで「ニノチカ」を観たら、ニノチカの放つ最後のセリフに、この物語の素晴らしさが濃縮されており、それによって今日は相手役のメルヴィン・ダグラスも、いつもより3割増しに魅力的に見えた。
回を重ねるごとに見えてくる魅力。興味はあるけれどルビッチを観たことがない人には、入門篇として「ニノチカ」をお勧めすることが多い。
天国は待ってくれる / メリー・ウィドウ

シネマヴェーラ渋谷での、ルビッチ・タッチⅡの記録。初日は「天国は待ってくれる」「メリー・ウィドウ」の2本から特集スタート。
・天国は待ってくれる(Heaven can wait/1943)
「地獄行きを覚悟したヘンリーは、閻魔大王の前で女性遍歴を繰り返した生涯を懺悔するが…。男女の心理の機微を洗練されたユーモアと心温まるストーリーで描き、観る者すべてを幸福にせずにはおかないルビッチ最晩年の傑作。テクニカラーの美しさを今こそ堪能されたい!」
フィルモグラフィーの中で、私が唯一観たカラー作品がこれで、初見では情報量の多さを頭が受け止めきれず消化不良に。ルビッチ、どの映画も省略が効いており、扉の開閉、階段の昇降、視線の移動…で物語の展開を察知する必要があり、台詞で何でも説明してくれる親切な映画の対極にあって、1秒たりとも気が抜けない。体調を整え、濃い珈琲で身体を目覚めさせ、お気に入りの観やすい座席を確保し臨まなければならない。
「天国は待ってくれる」を初見で受け止めきれなかったのは、いつもながらのルビッチの情報量の多さに加え、初めてのルビッチ・カラー映画だったから。モノクロであれば衣装の色の情報量を処理する必要は少ないけれど、カラーならば、瞳はブルー、椅子は、絨毯は、壁紙は、衣装は…と処理すべき情報量が格段に増える。そしてモノクロなら、自分好みの色に塗り絵しながら楽しむところ、カラーなら、え?そのブラウス、そんな色?など、自分好みでない色だった時の感情処理にもたつき、肝心の物語が見えなくなった。
ということで二度目の今回、ようやく心に余裕を持ちながら鑑賞することに成功。好色でありながら、妻を愛して生きた男の一代記。夫婦のいざこざや、恋愛のもつれ(主に三角関係)を描くことの多いルビッチには珍しく、一人の男の人生を出生から最期まで大河ドラマのように描いている。そのため珍しく主人公の祖父、両親、やがて妻と出会い、息子が生まれ…と家族が描かれ、男が育った家庭環境から何を受け継ぎ、それがまた息子に脈々と受け継がれていく…好色なところなど…と、血縁が描かれているのが興味深いところ。
適度に余所見もしながらも、一人の女を生涯愛し、存分に人生を謳歌した男が、罪の意識を抱えながら閻魔大王の前に立つ。男が回顧する欲深き、けれどそれがゆえに芳醇な人生を味わいながら眺めていたから、閻魔大王の審判の言葉に不思議と納得するというもの。見終わった後、じわじわと「天国は待ってくれる」というタイトルの優しさが染みてくる。
オープニングタイトルが刺繍ふうでとても素敵なので、最初から気を抜かずに前のめりで堪能すること。
・メリー・ウィドウ(Merry Widow/1934)
「パリに暮らす小公国の大富豪未亡人・ソニア。遺産目当ての外国人と再婚されたら一大事と、公国の大使は一計を講じ…。有名なオペレッタの映画化作品で、大使館の盛大なダンスシーンや工夫を凝らした映像の面白さなど見どころ満載。」
初見。有名な物語だけれど、メリー・ウィドウに触れたのも初めて。メリー・ウィドウ・デビューがルビッチで幸せ。ジャネット・マクドナルドってこれまで何かで観たことあるかしら。ちょっと誰かに似ている…でも誰か思い出せない…という顔立ち、そして歌が上手!相手役のモーリス・シュヴァリエは味のある歌唱(決して万人が上手!とは思わなさそうな)なので、バランスの良いコンビと言えるかもしれない。人生で初めて目撃したモーリス・シュヴァリエが「昼下がりの情事」のオードリー・ヘップバーンのパパ役だったので、ルビッチの映画で若きモーリス・シュヴァリエを観た時、誰にもで若い時代はあるのだね…という変な感慨に陥った。誰にでも若い時代はあるのだね感慨シリーズ、東の佐分利信、西のモーリス・シュヴァリエで決まり!
そして彼の人生について何も知らなかったけれど、改めてwikiなど読んでみると、無知ですみませんでした!と平謝りしたくなるほどのフランスの国民的スターだった。「メリー・ウィドウ」の中でも、パリのマキシムでマキシム・ガールズと遊ぶぞ!と、うきうき踊り子の名前を連呼する歌があるけれど、あの歌を地でいく実人生だった。
喪の装いに身を包んだジャネット・マクドナルドが、黒い服、黒い帽子、黒い靴、黒い犬(!)に囲まれ静かな生活を送る中、恋の芽生えを感じた途端、部屋中の黒が色を帯び…と言ってもモノクロなので黒が白に変わるだけだけれど、きっと実際はパステルカラーのはず!…犬まで白くなるのには爆笑しながらも、恋が色を連れてくる、そのシンプルな美しさに胸がいっぱいになった。ベッドサイドに置かれた分厚く大きな日記帳に、書く文字が日増しに恋する女のそれに変化していくこと(この場面のグラフィカルな美しさ!)。そしてジャネット・マクドナルドの衣装、30年代・西洋女性の十二単と呼びたくなるような、薄紙に紙と紙と紙を重ねてリボンをキュッとかけたお菓子のパッケージのような甘やかさがあって、着替えるたびに目が釘付け。天井高10メートルはあろうかという瀟洒な建物、2人で踊っていたはずが、満場の男女を総動員しての大演舞に繋がる場面の華やかさ!
パリのマキシム、フレンチ・カンカンを見せるような店だったのだなぁ。常連客はお気に入りの踊り子を指名し、2階の個室で親密になる…というシステム。そんな歴史があったとは…と驚いたけれど、どこまで史実に忠実なのか、調べてみたくなった。
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